劇場公開日 2012年12月22日

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サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ : 映画評論・批評

2012年12月19日更新

2012年12月22日よりアップリンク、新宿武蔵野館ほかにてロードショー

フィルムVS.デジタル論争から見えてくる映画の本質、そして映画の未来

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映画界は大変な過渡期にある。デジタルシネマの急速な普及により、100年以上の歴史を誇るフィルムが過去の遺物になろうとしているのだ。新たな設備投資を迫られる独立系映画館の苦境も聞こえてくるこの問題は、とかく失われゆくフィルムへの郷愁とともに語られることが多いが、キアヌ・リーブスがナビゲーターを務めた本作は、映画作りの最前線で活躍するクリエイターたちの声を収集し、“映画の今”を多面的に伝える記録映画だ。

まず「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」などのエポックな作品を振り返りながら約20年のデジタルシネマ史をおさらいするのだが、“ドグマ95”から登場した「セレブレーション」まで引用した視野の広さに驚く。また低コストで機動性の高い撮影を可能にしたデジタルシネマは、CGIによる加工をたやすくし、編集やカラー補正の過程、俳優のカメラとの向き合い方を変えた。撮影監督や編集者といった各分野の専門家、しかもフィルム派、デジタル派、中間派の意見をくまなく網羅。彼ら映画人たちの真摯な言葉は職人的な情熱や芸術的な美学に裏打ちされ、感動的ですらある。映画はどのように作られるのか、そもそも映画とは何なのか。いつしかそんな根源的なテーマへと迫る本作は、観る者に“映画の未来”に関する思考や議論を大いに促してくれる。

最後にひとつ。誰もが映画を手軽に撮れるデジタル時代についてのデビッド・リンチのコメントがふるっている。「全員に紙と鉛筆を持たせたからといって、秀逸な物語がたくさん生まれるわけじゃない。今の映画の状況も同じだよ」。なるほど、恐れ入りました!

高橋諭治

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