誘惑(1957)

劇場公開日:

解説

朝日新聞連載伊藤整の同名小説を大橋参吉が脚色、「殺したのは誰だ」の中平康が監督した。撮影はこれが昇進第一回作品の山崎善弘。主演は「白夜の妖女」の葉山良二、「狂った関係」の安井昌二、宍戸錠、「幕末太陽伝」の芦川いづみ。ほかに渡辺美佐子、轟夕起子、中原早苗、高友子など。

1957年製作/91分/日本
原題:Temptation
配給:日活
劇場公開日:1957年9月22日

ストーリー

大正気質の杉本省吉は銀座の洋品店主で、ドライ娘の一人っ子秀子とやもめ暮し。省吉は店の二階を画廊に改造しようと考え前衛生花にこっている秀子は、これを自分たちのグループの発表会に利用しようとたくらんだ。洋品店には無愛想で化粧嫌いな、省吉に想いをよせる竹山順子がいた。秀子のグループの発表会資金の調達のため、ハンサムで画才より商才のある杉山小平、貧乏画伯田所草平らのグループと提携した。喧嘩をしながらも秀子と小平はしだいに接近し、一方順子も他人の迷感も平気な一名“暴力画伯”の草平にその美貌を指摘されるや、一転してお化粧に専念し、愛想がよくなりやがて草平を恋するようになった。省吉は画廊完成のパーティを開き、秀子のために戸越、安井の両青年を紹介したが、全然気にもしない。パーティの日に草平の絵が、西郷赤児らの一流画伯の目にとまり、一躍有名となり発表会は連日盛況をきわめた。こんな出来事も知らずに、草平は画廊から姿を消し、順子のところへ金を借りに来る始末。秀子は小平の妹章子の許に草平の絵が四、五点埋れているというので、それを持って章子と画廊に来た。省吉はその章子が初恋の人に瓜二つであり、そしてその絵の中に章子の母親の肖像画があり、それがなんと初恋の人その人であった。やがて小平はその商才を認められ、画廊を経営するようになった。順子と草平の結婚式の夜、祝酒に深酔した章子は省吉をたずねた。省吉には何時しかその寝顔が初恋の人三谷栄子となって、三十年前に果せなかった接吻をするのだった。章子の目には涙が浮んできたが、それは母と省吉の秘密を知っている章子の歓びの涙であった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.5コメディアンタッチのホームドラマで面白い!

2021年9月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

「誘惑」のタイトルから何かサスペンス的なものを創造したが、昭和32年の明るく楽しいホームドラマ。それにしてもこの時代に立派な豪邸、センスのいい洋服屋、女性たちのとってもおしゃれな服装、前衛芸術家集団の若者たち、ダンスパーティとペアのダンス、ケータリング、やもめの父や娘の相手探しなどなど、テンポよくそして明るく物事が展開していく。そこには恋するシーンもタイミングよく盛り込まれている。
左幸子、渡辺美佐子、芦川いづみの若い頃のとても愛らしい表情が心を和ませる。
画家の東郷青児、岡本太郎の本人が登場しセリフを言うシーンもある。
何か幸せを感じる映画であった。
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M.Joe

3.5洋品店主人の父、娘、店員達、それぞれの恋、そして母親の初恋を成就させる娘

2021年8月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

伊藤整原作の中平康監督作品。銀座の洋品店主人の千田是也が主演で、前衛生花に凝っている娘役が左幸子、店主との結婚を夢見てる店員役が渡辺美佐子。男の店員役が小沢昭一。

左幸子は今村監督作品の印象が強烈で、こんなモダンなお嬢さん役をやっているのは知らなかった。今の時点で見ても現代風で、しっかりとしていて生き生きとしている。

無化粧だった渡辺美佐子が貧乏画家の安井昌二に言われ化粧をしてから、安井に恋もして見違える様に美しく変身する様はお見事。

妻に死なれて独り身の千田は昔の恋人のことが忘れらないでいるが、相手の方もそうだった様。嫌とは言ったものの強引に口づけをして欲しかったらしい。彼女は亡くなってしまったが、娘芦川いづみは母親の手紙からその気持ちを知っていて、千田の家に左幸子と泊まりに来て千田から口づけを受ける。母親の思いを成就させた訳で、文学的でロマンチックな様な、お子様的で嘘くさい様な。

また、父親は娘に、娘は父親にきちんとした相手を見つけてあげようとし、複数の候補呼んでパーティを行うのが、面白い設定。パーティの際に二人が自分のことより、娘や父のダンスの相手とどうなのかに夢中に観察しているのがとてもコミカル。

全体的に、左幸子や渡辺美佐子、小沢昭一も含めて並行してた幾つかの恋が成立し、後味は良し。ただ、男女の恋は、イヌのつがいと同様、最初の出会いの好悪が全てと千田の友人が言っていた。その様なシニカルな視点、特に女性側に計算高さはあるが、現実には成り行きとか勢いで相手が決まる現実を見せている様にも思えた。

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Kazu Ann

3.560年前

2017年5月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

笑える

楽しい

原作は伊藤整の新聞小説で、コメディタッチで楽しませてくれる。
主人公は銀座で洋服店をやっているが、前衛生け花にはまっている娘(左幸子)にそそのかされ、二階を画廊に改装する。
ここで開く展示会でドタバタしてしまう。
実名で登場するのは岡本太郎、東郷青児、勅使河原蒼風など。

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