劇場公開日 2012年8月11日

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「過去も現在も夢も現も並行な世界。」Virginia ヴァージニア ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0過去も現在も夢も現も並行な世界。

2012年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

主人公の、売れないオカルト作家が旅先のモーテルでスカイプする度に二分割画面に移行するんですよ。主人公側と会話してる相手側に。
あれれ?と思って。この意味がとんと分からなくて。

意図もなくこんなトリッキーなことコッポラしないよな?て心のどっかで引っ掛かってたんですけどもね。
ラストでなんとなく合点が行きました。

主人公側が『幽世』で、相手側が『現世』て構図だったんですね。

ハッキリと「区別」付けてる訳です。
主人公のオカルト作家(ヴァル・キルマー)は、この奇妙な町に辿り着いた時点、この舞台(凄惨な事件が起きた過去を持つ)に立った時点で、現世から隔離されたという。リアルとの断絶のサインだったと。スカイプはその境界の役割で。

この町で起きている事象は全て現実と夢の地続き。
過去と現在が同じ土俵であり、リアルとファンタジーに境界を持たない。
まだ幼くあどけない少女、水先案内人V(エル・ファニング)は、浮世離れした、ある種怖いくらいの美しさでこの世界に花を添える。
奇妙な時計台、対岸のヴァンパイア、主人公の過去……。

一見、デヴィッド・リンチ的世界と見紛うほどに混乱を来す幻想世界。
そこを乗り越えると明かされる、異様なぐらいにカラっとする明快な結末。
古典的であり新しくもある。
ホラーと呼ぶには怖くなく、ファンタジーというには恐ろしい。

この深淵にハマったら抜け出せないかもしれません。が…必見です。

ロロ・トマシ