劇場公開日 2013年2月1日

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マリーゴールド・ホテルで会いましょう : 映画評論・批評

2013年1月22日更新

2013年2月1日よりTOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマほかにてロードショー

イギリス屈指の名優たちが灼熱と喧騒の国で織り成す極上のアンサンブル

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本作を観たのはイギリスの公開初日だった。チケット売場には久しく映画から離れていた熟年夫婦や奥様方の長蛇の列が伸び、そこにいる誰もが今から映画の主人公と共に旅に出るかのような嬉々たる表情を宿していたのが印象的だった。

キャストに集うのはイギリス屈指の名優ばかりだ。序盤、各々の日常の中で老後に備える彼らの姿が映し出される。そこでふと響くエキゾチックな音色。「麗しきマリーゴールド・ホテルで、快適な滞在を!」。この文句に誘われて彼らは一様にインドを想う。決断する。足を踏み出す。そうして彼ら全員がついに空港ロビーでワンフレーム内にて会するや、化学変化に満ちた素っ頓狂な冒険の日々が幕を開けることに。

ようやく辿り着いたのは倒壊寸前の古ホテル……でも彼らは決して挫けない! ジョン・マッデン監督は卓越した采配で7人の男女を終始ユーモラスに引き立て、愛を乞う人、悩める人、怒れる人それぞれに絶妙なる見せ場を与えていく。異国での自分探しをテーマにした映画は数多い。けれど我々が本作に強く惹かれるのは、これほどの名優たちがある種の無邪気さと、また人間としての尊厳とを同じ身体に湛えながら、インド時間に合わせゆっくりと前に進んで行こうとする姿に胸打たれるからに違いない。

イギリスで大旋風を巻き起こした本作は、アメリカでもゴールデン・グローブ賞候補入りを果たすなど共感の渦は確実に広がっている。とはいえ、この映画を熟年ファンばかりが享受するのはあまりにも惜しい。むしろ本作は、ラストで掲げられた手と手が象徴するように、文化と文化、世代と世代が鏡面的に繋がり合うもの。そうやって幅広く浸透していくべきフィールグッド・ムービーなのだ。

牛津厚信

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