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◆悪の教典

猛々しい殺意を抱え持つサイコパス教師と三池ワールドの見事な組み合わせ
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  冒頭で「匕首マッキー(マック・ザ・ナイフ)」のメランコリックなメロディが聴こえてくる。もちろんブレヒトの芝居「三文オペラ」の挿入歌で、彼の詞に、クルト・ワイルが曲をつけた有名なスタンダード・ナンバーだが、何度か変奏され、劇中でも、主人公の蓮実(伊藤英明)が、内的モノローグの形で、この歌詞の内容を講釈してみせるくだりがある。「鮫の獰猛な歯は真珠のように真っ白で、でも、殺し屋マッキーのナイフの鋭い刃の閃光と同じなのさ」といった意だ。

  それは、あたかも、表面的には生徒に絶大な人気を誇る模範的な熱血教師でありながら、14歳で両親を惨殺したおぞましい過去を背負い、つねに猛々しい殺意を抱え持つサイコパスの主人公の奇怪な分裂した心象を代弁しているかのようでもある。

  三池崇史監督は「愛と誠」を見る限りでは、ミュージカル・センスが欠如していると思っていたが、この「マック・ザ・ナイフ」の選曲は大当たりである。

  三池監督がもっとも精彩を放つのは、「極道戦国志 不動」や「殺し屋1」のような善悪のモラルの枷(かせ)がはずれて、不埒な妄想が放し飼いにされたような世界を描く時だが、本作も、そのアモラルな作品群の系譜に位置するといえよう。とにかく、虐殺宣言を告げるような、軽快なエラ・フィッツジェラルドの「マック・ザ・ナイフ」のボーカルにのって、散弾銃を持った蓮実先生の大殺戮が開始されるや、文化祭の前夜、40数名の生徒たちが学校に寝泊まりするという甘美で特権的な体験が、一瞬のうちに、血塗られた惨劇という悪夢へと変わってしまうのだ。

(高崎俊夫)


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