ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日のレビュー・感想・評価
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ラストの余韻がとても良いです。
以前、映画館で予告編とメイキング映像を何度も見た。
それは、スタジオに舟を浮かべて、撮影している様子だった。
≪え~~~~。こんな映像を見せないでよ。信憑性(もちろん映画なんだけど)が薄れるじゃん。。。≫
それで、見ようか止めようか、随分迷ったのだけれど、結局見に行った。
ある作家が、小説の題材になりそうな人物がカナダにいると教えられ、トロントにいるインド人に会いに行く。
その人物が語り始める、自身の体験。
そんなゆっくりとした始まりの部分に、少々毒気を抜かれてしまった私だけど。
円周率のπが名前となる由来や、自身にまつわる幼い頃の出来事など、どうでもイイじゃんと思いながら見ていたのだけど。
動物達に癒されたりしたのだけど。
それも、いつの間にかだんだんと興味深くなってきたり。
気がつけば、ベンガルトラとパイと一緒に、海に放り出されていた。
過酷な漂流生活。
食事。
トラ。
どこへ向いて行くやら、さっぱりわからない救命ボート。
どうするのよ~~~。
でも、そんなパイには、知恵があった。
賢いな~。
生死をかけた信じがたい体験をした人は、神の存在を身近に感じるのだろうか。
パイもトラも、生死をかけ、生き残った同士だ。
そんな一人と一匹の繋がりがとても良い。
ラストの展開に、アッと思った。
監督の力量に感服。
映像には、引き込まれた。
映像美でいえば期待以上
すごく気になってみに行きましたが、正直期待はずれの部分が否めないです。
映像はとても綺麗です。
みていて圧巻されたし感動しました。
でもあまりにも現実味がなく、うまく出来すぎている気がしました。
目が覚めたら島にたどり着いていたり、飢えているちょうどそのタイミングで魚が飛んできたり。
それから映像美にこだわっていたところもあってかCG感が拭えず感情移入が出来なかったのが残念です。
最後のどんでん返しはあーなるほどねとは思いましたが、自分はあまり面白く感じられなかったかも。
幻想的“過ぎる”と感じてしまうサバイバル劇
トラのリチャードを始めとした、実物と見間違うほどの精緻極まるCG。
橙色・青色・緑色・黒色・碧色と、七色に変貌する水面や空の美しさ。
それら2つが合わさった幻想的且つダイナミックな映像(跳躍するクジラやトビウオの群れ……)。
人生の過酷さと理不尽さ、そして信仰によってその理不尽さに意味を見出だそうとする姿。
3D効果も含めて映像演出は素晴らしいし、物語の深みも感じる。
いかにもアカデミー賞好みのスケールとテーマを持った、良く出来た映画だと思う。
が。
ダメだった。
僕は乗れなかった。
泣ける映画ばかりが良い映画とは言わないが、涙は一滴も流せず淡々とした鑑賞に終始した。
(トラと抱き合うシーンだけは少し心が動いたけど)
映像が美しく幻想的過ぎて『作り物』という印象が拭えず、
サバイバルの過酷さが薄まって感じたのかも知れない。
トラやハイエナとの命懸けのやりとりの恐怖も、
初めて魚を殺した時の泣きながらの謝罪も、
どこかでフィクションだと割り切って観ていた気がする。
主人公と作家の対話で進む物語のスタイルも、
漂流生活の孤独感や絶望感を薄めてしまったように思う。
その為に、リチャードとの共存関係の強固ささえも。
それに、全体的に、どうも淡白。
家族とのシーンは時間をかけて描かれていたハズなのに、何故だかその絆が
非常に淡いものに感じられ、家族を失った悲しみが今ひとつ伝わらなかった。
(リチャードとの絆も然り)
「生きる事は手放す事。別れを言えずに失う事」という象徴的な台詞もその為に心に響かず。
ただ、最後の語りが真相だったとするなら物語のテーマも変わってくる気がするが——
つまり、パイはトラと共にサバイバルなどしておらず、
愛する母を奪った残忍なコックを殺し、独りきりでサバイバルしていたとするなら、
パイは残酷な現実を幻想のオブラートに包んで乗り越えたという事か。
あるいは残酷な現実を乗り越える為にトラのように残酷にならざるを得なかったという事か。
それはそれで感じ入る部分も無くは無いが、
トラとの触れ合いも別れも全部作り話だったんかぃと考えると
長々した話の最後に夢オチを聴かされたようなヤな気分になる。
うーむ、以上です。
あの作家と同様、僕の頭では『途方も無さ過ぎて意味が掴めない』だけかしら。
スピリチュアルな要素に興味のある方ならもっと感じ入る点もあるかもですが……。
<2012/1/26鑑賞>
身も心も引き込まれる冒険物語
原題:「LIFE OF PI」
邦題:「ライフ オブ パイ、トラと漂流した227日」
原作:「パイの物語」ヤン マーテル
監督:アング リー
題名の通り16歳の少年がインドからカナダに渡航する途中で 海難事故に遭いトラと救命ボートで漂流した末に救助される冒険物語。
ストーリーは
パイは動物園を経営する父親と教養ある母親とに間に生まれ育った。数学に出てくる、割っても割っても割り切れない円周率のパイにちなんで名前をつけられた。幼い内から よく勉強が出来て、パイがスペルが「PI」で発音するとピー(おしっこ)とも読めるために、小学校で虐めにもあうが 逆に秀でた知識で生徒ばかりか先生方からも尊重させるようになる子供だった。ヒンズー教だけでなく、イスラムにも仏教のもキリスト教にもユダヤ教にまで 改心し、すべての宗教と自分は協調して生きていけると信じていた。そんな一風変わり者のパイも16歳になり、美しい少女に恋をする。 しかし家族はカナダに動物園ごと移住することに決めていた。
大型貨物船に沢山の動物達や彼らの食料を乗せ、家族の旅が始まる。しかし、出航してしばらくすると嵐に遭い船は沈没、パイは傷ついたシマウマとともに救命ボートで脱出する。嵐が過ぎ去り、パイは両親も兄弟も失ったことを知る。
運良く生き残ったオランウータンを海上から拾い上げ、ボートに積まれた非常食を探索していると、救命ボートの船底から獰猛なハイエナが飛び出してくる。ハイエナは傷ついて動けないシマウマとオランウータンを襲う。パイの素手では、小さなボート上の殺戮を止めることができない。しかし、船底には、ハイエナをも簡単に食い殺すトラが潜んでいたのだった。トラは次々と動物を餌食にする。パイは寸でのところで、いかだを作ってボートから乗り移り、トラの攻撃から逃げ延びる。
救命ボートのトラと、それにくくりつけられた、いかだに乗るパイとの生存をかけた闘いと漂流が始まる。 パイは、いかだで雨をためて、魚を釣って生き延びる。そしてボートに移って、トラと水と食料を分け与える。トラが空腹に耐えかねて飛び魚を追って、海中に飛び込むと、その隙にボートに乗り移って、救命ボートの船底から水や非常食を取り出す。パイとトラは、何十日も漂流し、いくつもの嵐を乗り越えるうち、互いに生き残り同志の共存関係が出来てくる。パイは、トラが生きているからこそ自分も生きる意味を持つことができるのだということを知る。
227日たった。とうとう、島にたどり着き、ボートが砂浜に打ち上げられるが、パイにはもう砂地を立って歩く力がない。トラはボートから飛び下り、林に入って行って姿を消した。林に姿を消す前に 一度だけ振り返ってトラはパイを見つめた。
というお話。
冒険小説でお伽噺だが、とても映像が美しい。3Dの必要はない。3Dでなくても充分過ぎるくらい自然が美しく描かれている。大海の日の出と日没。輝く果てしない海の大きさ。くらげが漂い、鮫が回遊し、巨大な鯨がボートをかすって行く。荒れる海、なぎの梅。海の表情を映しだすカメラワークが秀逸だ。
映画のはじめのころに、出てきて、回想の形で繰り返されるインドのまばゆいばかりの色彩の多様さ。色とりどりの花々、インド舞踊の衣装の美しさ、香りたつようなインドの少女たちの美しさにも心奪われる。
おまけに、コンピューターグラフィックで、ここまで出来るのか、と驚くほど動物達の表情が豊かで動きがリアルだ。トラがパイと漂流するうちに段々とやせ細り、最後に林に姿を消す頃には 骨と皮になっている。とてもリアリテイがある。
トラはリチャード パーカーという名前を持っている。エドガーアラン ポーの「ナンタゲット島出身のアーサーゴードンビムの物語」という1838年に書かれた恐怖小説があって、小説の中で4人の男が海で難破した末、リチャード バーカーという男が3人に殺されて食べられる という話がある。で、実際1884年に実際に、同じ状況で、カニバリズムがおこり、偶然殺されて食べられた男がリチャード バーカーという名前だった、という記録が残っている。本当だったら、ポーの小説よりも怖い。
しかしこの映画のリチャード バーカーというトラは、むしろ、ヒンズーの輪廻思想で、トラは人の生き代わりなので、大切にしなければならないという思想からきているのだと思う。パイの動物園では このトラは始めからリチャード バーカーを呼ばれて尊重されていた。
貨物船の食堂で働く、人種差別でタチの悪いコックが出てくるが、彼はジェラール ドバルデュー。フランス人の役者だが、最近、フランスにこのまま居ると収入の65%を税金で取られるばかりなので、と、国籍を捨ててロシア人になってしまったことで話題になった。
この映画で、残念なのは、モノローグがインド人独特の強いアクセントの英語で ものすごく聞き取りにくいことだ。英語で語ってくれるが、英語の字幕をつけてもらいたかった。
でも身も心も引き込まれる冒険物語。 文句なしに映像を楽しめる。
本当に美しい映画だ。
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