英雄の証明(2011)

劇場公開日:

英雄の証明(2011)

解説

ローマの将軍コリオレイナスの悲劇を描いたウィリアム・シェイクスピアによる戯曲を、舞台を現代に置き換えて映画化したサスペンスアクション。レイフ・ファインズが初監督と主演を務めた。数々の武勲をたて力をつけていったローマの独裁者コリオレイナスは、その独裁性を危惧した護民官の策略で国を追放されてしまう。絶望したコリオレイナスは、自身の命を狙っている宿敵オーフィディアスのもとを訪れるが……。共演にジェラルド・バトラー、ブライアン・コックス、ジェシカ・チャステインら実力派が顔をそろえる。

2011年製作/123分/G/イギリス
原題:Coriolanus
配給:プレシディオ
劇場公開日:2012年2月25日

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

インタビュー

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画評論

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9
  • 画像10
  • 画像11
  • 画像12
  • 画像13
  • 画像14
  • 画像15

(C)Coriolanus Films Limited 2010

映画レビュー

3.0哲学の撃鉄

2020年2月21日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

現代戦のリアリティ皆無、セリフの冗長。
「なんちゅう詰まらん映画だ」と思ったが、観終わって間もなく考え直した。
これは斬新な映像表現のレトリックかもしれない。

怒り、慈しみ、憤り、悲しみといった人間たちの感情が際立っている気がしなくもない。
古代を乱暴に現代へ当てはめるという制作過程が、結果的にあらゆる表現を記号化しているからだ。
目指したのは、戦争ひいては人社会のデフォルメというべきか。

ゆえに「役者の演技や舞台セットなどは最低ラインを超えていれば良い」という意図まで透けて見える。
場合によっては、製作者はシェイクスピアである必要性は無いとまで考えてるかもしれない。
演技もカメラの構図も音楽も、最低ラインさえ超えていればそれで良いや、と。

奇妙さが、物事への思考を巡らすきっかけとなる。
気づけば「戦闘とは、いやいや戦争とは、そもそも人とは……」と考えていた。

劇的すぎる。
その違和感が思考の雷管を叩き、不知の知に至る。

この、映画を娯楽と思ってないかもしれない監督の頭脳は、
曇りがかった頭脳の持ち主である私には計り知れない。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
DWK9

4.0シンドラーのリストのアーモン・ゲート再び

2019年5月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

個人評価:3.8
シェイクスピアの作品を、現代の舞台で描く為、まるで戯曲を3D化した様な感覚になる作品。それによって違和感のあるシーンは多々あり、もう少し現代風にアレンジした演出や脚本でもよかったのではと感じる。
また撮影場所が、あまりにも低予算を感じずにはいられない背景なので、やや世界観の品位が落ちてしまうのは残念。
しかしながら、主人公であるコリオレイナスは、氷の刃のような青い瞳のレイフ・ファインズにうってつけな役柄であり、「シンドラーのリスト」のアーモン・ゲートさながらなキレッキレな演技。自身で監督主演したのも首肯ける。
母と妻にバネッサ・レッドグレーブとジェシカ・チャステインを迎え、脇も完璧な布陣である。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
カメ

3.0シェークスピア

2018年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 あらすじだけ読むと、まるで古代ローマ時代の映画かと思ってしまうが、現代に置き換えて作られた作品だ。

 冒頭では食糧不足などで暴動が起きるほど内部事情の悪い大国ローマがニュース報道によって描かれている。斬新だ・・・とも思ってみたが、ヴォルサイとの現代的戦闘シーンの後、オーフィディアス(バトラー)と直接対決となるマーシアス(ファインズ)はいきなり銃を捨て、ナイフだけでの対決。なんなんだ、この展開?銃撃戦のクライマックスをカンフーで戦う展開と一緒じゃないか(笑)。

 まぁ、その不自然な点は置いといて、最初の見せ場である、執政官へと推挙された直後の民衆の変わり身の速さには驚いてしまう。民衆を見下したような目と台詞、積もり積もっていた人々だったが、マーシアスを憎んでいた議員たちが一言煽ると次々と同調していく様子。政治家の傲慢さもさることながら、民衆も流されやすいことがわかる。最初は死刑を宣告されたが、友人でもあるメニーニアス議員(ブライアン・コックス)や母親(レッドグルーヴ)の忠告によって穏やかに対処し、追放という罪に収まった。そこからは放浪の旅。スキンヘッドだったマーシアスが長髪になるまでの期間歩き続け、敵国であるヴォルサイにたどり着き、ライバルのオーフィディアスに会う。そして、ローマ国に復讐のためヴォルサイの仲間になったのだ。誰もが恐れおののく軍人が敵国に下った。やがて彼らはローマに侵攻する・・・

 人間の心までも失った生粋の軍人マーシアスは元戦友の説得もメニーニアスの説得も受けない。おかげでメニーニアスは自殺。そして母親、妻(ジェシカ・チャスティン)、息子がローマを炎で焼き尽くさないでと説得に来て、心を動かされた。ついに和平交渉により講和条約を結ぶが、ヴォルサイでの権力者となってしまった彼はオーフィディアスによって処刑される・・・

 やはり現代劇では不自然さが目についてしまい、戦争の迫力は足りない。また、腐敗した政治家や、民衆の苦しみというサブテーマもどこかへ行ってしまい、普通の悲劇となってしまっている(シェークスピア劇なんだからしょうがないけど)。だからこんな変な邦題がつけられてしまったのか・・・

コメントする (0件)
共感した! 0件)
kossy

4.5フワフワとした空気の悲劇

2013年7月26日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

シェイクスピアが約400年前に書いた戯曲を現代に置き換えて映画化。

なんというか、お話が全然古びてない。正に今の時代の話じゃないかと思う。
いや、いつの時代に置き換えても通用する話なんだと思う。

邦題が「英雄の証明」となっているが、この映画のテーマは「英雄」ではないと、私は思う。

この話の中で強いのは、英雄よりもむしろ民衆だ。

民衆の情緒を基盤とした場の空気が政治を左右していく。
それに翻弄される将軍の哀れなことよ。
国を動かすのは民衆の人気や情緒や空気…一言で云ってしまえば衆愚政治の悲劇を描いている。
我こそ正義と信じて疑わず声高々に叫ぶ群衆の哀しきことよ。

自分の真の思いが民衆に全く理解されない将軍の怒りをレイフ・ファインズが渾身の演技で魅せる。
この戯曲を21世紀にチョイスした監督としてのレイフ・ファインズの胆力も、もっと評価されて良いと思う。
撮影が「ハート・ロッカー」のバリー・アクロイドという点も作品にとても合っていた。

そして、時代を超えて、社会とは何ぞやと観客に問いかけるシェイクスピアが、なにより凄い。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
小二郎