ももいろそらを

劇場公開日:

ももいろそらを

解説

本作が長編デビューの新鋭・小林啓一監督が、大金を拾った女子高生と友人が巻き起こすアクシデントを通して、現代に生きる若者の瑞々しい表情を全編モノクロームの映像で描いた青春ドラマ。新聞の採点を日課にしている高校生の川島いずみは、ある日、大金の入った財布を拾う。財布の持ち主を無事に探し当てたいずみだったが、そこから事態は思わぬ方向へ動き始め……。2011年・第24回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門で作品賞を受賞した。

2011年製作/113分/G/日本
配給:太秦
劇場公開日:2013年1月12日

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映画レビュー

4.0小林啓一監督の原点

2022年8月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

知的

萌える

小林監督の作品として鑑賞したのは本作品で4作目だが、これほどまでに裏切られることの少ない監督としては小津、キム・ギドク以来3人目だ。どうしてこの監督はこれ程までにデビュー当時から作品の完成度が高いのだろうか?
この作品もしかり❗モノクロバージョンだったせいもあるが、いつの間にかこの映画で見たままが自分の記憶のなかに深く刻まれ、いつか実態館と融合させるリアリティがある。この作品は多少マニアックかもしれないが、小林作品に於ける掛け替えのないのないポジションにいる。

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mark108hello

4.5いづみ人間宣言

2022年2月5日
iPhoneアプリから投稿

いづみは車寅次郎を彷彿とさせるべらんめえ口調の女子高生で、何事につけても茶々を入れずには気が済まないというタチだが、それはそうとホンモノのシニシズムをやるにはちょっと優しすぎる。彼女の皮肉や冷笑にはどことなく余地があって、そこに誰かが噛みついてくれるのを待っているかのよう。というかそもそも人情一本の江戸カルチャーと冷酷無慈悲のシニシズムが折り合えるわけもない。

たとえば、光輝が同性愛者だったことが発覚した際に、いづみが彼に罵詈雑言を浴びせかけようとするシーンがあるのだが、ここで彼女は「ゲッ…」と言いかけて押し黙る。乱暴な言葉遣いの裏面にある優しさがうっかり転げ出てしまっている素敵なシーンだ。

一方で蓮実や薫はかなり実直というか、ホンネとタテマエの使い分けというものがない。蓮実は光輝への好意から、どんなに理不尽なことを言われても二つ返事でニコニコする。薫は金にがめつく、何事にもナアナアの事なかれ主義者だ。そして2人ともそういう自分の浅ましい本性を隠そうともしない。嘘でその場をやり過ごしがちないづみと2人の間になんとなく距離感があるのもよくわかる。

浅ましい生き方しかできない2人のことも、臆面なく恋人を本気で愛している光輝のことも、いづみはなんとなく下に見ている。本作が巧いのは、ここで我々がちゃんといづみに肩入れできるような演出がなされていること。蓮実と薫はバカでがめつくて性格が悪く、光輝もつっけんどんでブルジョア趣味のいけ好かないボンボンとして描かれている。我々もいづみと一緒になって3人を「ウゼー笑」と笑えるようになっている。

私が知らぬ間にいづみになってしまっていたことを自覚したのは光輝の同性愛がいづみにバレるシーン。それまでの不義理を同性愛というある種の弱者性によって打ち消そうというのはちょっとあざすぎるんじゃないの、と私はややシラけてしまった。

しかし光輝は同性愛がバレてしまったことをちっとも恥じないばかりか、いづみに誇示するように交際相手の手を握り締める。あざといとかあざとくないとか浅ましいとか浅ましくないとかいった俯瞰的な審美は、ここで大いなる愛によって跡形もなく打ち砕かれるのだ。

ラストの超ロングショットでは、葬儀場の前でいづみが光輝に向かって懺悔する。「私が一番バカだった」と。皮肉や冷笑の行き着く先は、すべての拒絶、すなわち人間であることの放棄だ。この懺悔はつまり彼女の人間宣言なのだ。

こういうある意味反省会みたいなオチはドラマチックすぎるとかえって興が冷めるものなので、フワフワと画角の揺れるロングショットの中でそれをやるというのはかなりセンスがいいな〜と思った。

和製ジャームッシュとでも形容できそうな不思議な空気感がある映画だった。小林監督の他の作品もぜひ見てみようと思う。

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因果

3.5「テメエ、この野郎〜!」ってw

2022年1月6日
iPhoneアプリから投稿

落語噺「持参金」のような因果のめぐり。
いづみはべらんめえ口調で、白酒師匠まで出てくる始末。

ウソをついて何かを埋め合わせしようとすると全体のバランスが崩れて辻褄が合わなくなり、さらにウソで埋め合わせしようとする。

世の中を分かったつもりが、これっぽっちもわかっていない。だったら自分はバカだとはっきり自覚したほうがよっぽどマシな存在でいられるはず。

演者一人ひとりが自然でいきいきと演じ、一人ひとりが若き自分自身を投影していた。

最後は江戸落語の人情噺を聴かされたような爽快感。

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atsushi

4.0【カラフル 1】

2021年6月25日
iPhoneアプリから投稿

(モノクロバージョンに寄せて)

モノクロは、カラーよりノスタルジック感が強いかなと思っていたけど、自分は最近、ガラケーはもとより、紙の新聞に触れることもなくなったので、そんなところもちょっと隔世の感があった。

モノクロは、自分のイメージのなかで彩る分、実はカラフルで印象が強いかもしれない。

(以下、レビューは同じ)

中学生よりは少し大人になって、でも、大人に片足を突っ込んでみると、世の中の嫌なところが目について、場合によっては、打算に縛られて生きていくことになるのかと閉塞感も募る。

進学云々で違いがあっても、もしかしたら、それが高校時代かもしれない。

溢れる様々な嫌なニュースを高所から批判的な目で見ているつもりが、世の中を斜めに見る目は、大人の書いたそんなニュースに大きく影響されていることも多い。

こいつんちは、天下り官僚だとか、その息子だとか。

反対に、自分で良いニュースを集めてみても、決して居心地は良くならない。

きっと、良いニュースと悪いニュースは、バランスしているように僕は思う。

廃業寸前の印刷屋が、病院で請け負った新聞の印刷で復活する。

その中に自分も含めた潤滑油があって、世の中は巡り巡っているのだ。

それを知ることは大人になることだ。

イケ好かない天下り官僚の息子の甘酸っぱい同性愛も、ニュースで取り上げれるようなもんじゃないし、大ぴっらにすることでもないだろう。

良いニュースと悪いニュースの陰に隠れた事実も沢山あるのだ。

「ゲっ、あっ!、ホっ」

いづみは、光輝にゲイとかホモという言葉を浴びせるのを思いとどまっていたじゃないか。

僕はこの場面が結構好きだ。

バカバカバーカばっかり言っていたのに、少し考えらえるようになったのだ。

良いことだ。

でも、考え抜いたアナル・ファッカーはアウトだけどね。

空が想うようにピンクにならなくても、たとえ僅かだけだったとしても、ちょっと世の中にかましてやったと思えたら、それは素晴らしいことのように思う。

そう考えられるようになることも、大人になるということだ。

カラフルな青春。

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