劇場公開日 2011年6月24日

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SUPER 8 スーパーエイト : 映画評論・批評

2011年6月21日更新

2011年6月24日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー

スピルバーグ映画の意匠を打破する美少女ヒロインへのときめき

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続編ものが横行する世知辛いハリウッドで、稀代の仕掛け人J・J・エイブラムスが、少年時代の記憶をベースに1970~80年代仕様のエンターテインメントを甦生する大作戦。1979年の田舎町、引き裂かれた家族、未知なるものの襲来――スピルバーグ映画の意匠が散りばめられ、往事を思わせる精妙な画調によって、あの頃に引き戻される。

ケミカルな匂いが漂ってきそうなほどに、愛が横溢する8ミリ映画づくりの描写。単なる郷愁のモチーフではない。内向的な少年にとって“8ミリ”は、悲しみを打ち消し友情を育み、恋愛をもたらす。フィルムに映り込んでしまった脅威には、成長さえうながされる。しかし、喪失感を前面に押し出したドラマの牽引力は、いささか物足りない。少年の内面が発露する決定的瞬間には、強い伏線が欲しかった。スピルバーグへの敬意の強度ゆえ全てを受容する気になるが、心の師を打破し更新し得たものがある。それはレンズに愛されるミューズの存在だ。美少女ヒロイン、エル・ファニングの放つ色香は只事ではない。少年がときめきながら彼女にメイクを施す行為が、ほのかな愛の交感に転化する場面は、淡く切ない思春期のラブシーンとして永遠に刻まれることだろう。

無性に空を見上げたくなる夢幻のスピリットを内包し、世代間の断絶を埋めるイベントとして面目躍如。微妙に変質して伝わりゆく空しさは免れないが、そんな寂寥感もエンドロールが上がる頃には微笑みに変わる。時間消費としてではなく、淋しげな少年少女の心の隙間を埋める娯楽大作の復権である。

清水節

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