RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語のレビュー・感想・評価

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3.0映画ファンよりも鉄道マニア向けの作品ではないでしょうか。

2010年4月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 次々とヒット作を生み出してきたROBOTにしては、冴えない作品でした。ドラマのとしてのメリハリが乏しいのです。立ち上がりから起伏の乏しい展開。大手電機メーカーから突然故郷の地方私鉄の運転手になるという決断の経緯が、あまりネタバレされずに進むので、唐突な感じが否めませんでした。
 その後の家族の説得や面接、採用、運転手研修とトントン拍子で進めすぎて、ドラマの中盤には、主人公の肇は電車運転手になってしまうのです。
 そのあとのストーリーをどう埋めるのかというような作りになっていて、運転士になった男のエピソードが小ネタとしてちまちま埋め込まれているだけで、物語全体の山場が見当たらなかったのが、残念でした。
 エピソードとしては悪くない話が多々出てきます。例えば、妻の由紀子は主婦なのにアロマショップを東京で起業したため、田舎の電車運転手として赴任することになった肇と別居生活を選択。離婚の可能性も暗示する中で、夫婦としてこの別居にどう向き合うか、それとも関係を清算すべきかという複線が敷かれていたのです。
 肇がラストに、由紀子を自分の運転するレトロな電車に乗車させたとき、終着駅まで乗って行けよという台詞が、なかなか意味深で良かったです。

 また、こんな話もあります。肇と同期で電車運転手となった宮田大悟は、甲子園球児でした。プロ球団の入団が決まっていたものの、肘の故障で断念したばかりだったのです。そんな大悟の野球の夢を何とか肇は叶えてやろうとするのです。

 その大悟は優しい性格で、電車好きな少年を運転台に招いてしまったのです。調子に乗った少年は、ある日一瞬大悟が席を立った運転台に乗り込み、電車を動かしてしまいます。運が悪いことに、その模様を乗客に携帯で録画されてネットに流されて、電鉄全体が詰め寄るマスコミへの釈明のために窮地に立たされてしまいます。
 大悟とともに乗車して、たまたま運転を代わって貰っていた肇は、この事態を自分の責任にして辞表を提出してしまいます。
 駅を去ろうとする肇に翻意を促しに集まってきたのは、日々親切に接してきた乗客でした。ちょっっとわざとらしい集まり方でしたが、肇の人間的な魅力を伝えるのにいいエピソードでした。ここをラストに持ってきたら、もっと盛り上がったのではないなぁと思いましたね。
 他には、肇が運転中に母親が危篤になるという事態が勃発。電車運転手は親の死に目会えないのかというネタ振りもあったのですが、どれも総じて小ネタで終わらしてしまったのです。

 だからこの作品は、映画ファンよりも鉄道マニア向けの作品ではないでしょうか。電車運転手になるための研修や訓練、試験風景から、地方私鉄の日常業務が克明に紹介される本編は、マニア垂涎の作品と言えそうです。

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