劇場公開日 2008年10月4日

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宮廷画家ゴヤは見たのレビュー・感想・評価

全17件を表示

4.0ゴヤが込めた思い

2023年6月14日
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鑑賞方法:DVD/BD

彼が絵に込めた
世の不条理を
上手く表現した作品だと思いました
人生の流転、厳しいですね
ハビエルさんって良い味だしますよね

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けはえ

4.0よくぞゴヤ自身が火刑にならなかったものだ

2022年10月10日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

風刺画家として、民衆のみならずスペイン王室の正体を描き続けたゴヤ。

まず3つの絵を検索して確かめて欲しい。
(URLを記載出来ないのでご容赦を)、
・「カルロス4世の家族」、
・「マドリード、1808年5月3日」、そして
・「我が子を喰らうサトゥルヌス」。

ゴヤが描いた「カルロス4世の家族」の集団肖像画はとみに有名。
しかしあの巨大な横長の肖像画を見ると
あんなふうに自分たちを描かれてしまうことに、王族たちからはどこか反発がなかったのだろうかといつも思う。
カルロス国王、マリア王妃、そして皇太子たち王女たち・・人間の弱さ、狡猾さ、汚さと愚かさが、隠しても隠しても、その歪んだ面構えににじみ出ている。ここまで内面が暴かれてしまっている。
内なる”汚物“をあからさまに晒されて、この作品を見て王も王妃も平気だったのだろうか?
( 無垢なはずの幼い皇太子女でさえも、ゴヤの絵筆はその先の彼らの失墜を予感させて容赦ないではないか)。

「馬上の后のエピソードシーン」はゴヤの毒気を表しての挿入だろう。
皮肉たっぷりをギリギリ隠して描かれたこの王族の肖像画。一歩間違えば、ゴヤ自身が火炙りになりかねない危険な立場にあったはずなのだ。

(この集団肖像画が王への追従なのかあるいは痛烈な風刺なのかWikipediaの「カルロス4世の家族」が詳しい)。

・・・・・・・・・・・・・

異端審問の応酬。
愛娘を奪還しようとする父親と教会の戦いは壮絶。

キャスティングされたナタリー・ポートマンは、実際の彼女はエルサレム生まれのユダヤ人だ。そのナタリー・ポートマンをキャスティングしてユダヤ教徒であるがゆえの苦難の歴史・拷問の様を撮ったミロス・フォアマン監督。
サスペンスと人の世の哀れを娯楽仕立てで上手く撮る人だ。

そしてハビエル・バルデム。
いつもながらだらしなさが売りの俳優。
逃げて誤魔化してこの世を立ち回り、ついには自ら再興させた罠(=異端審問の拷問)によって今度は自分が被告となり死罪となるわけだが、このロレンス司祭の犬畜生ぶりや、風のように体制になびく愚鈍な民衆の狂気がもの凄い。

それにしても
宮廷画家として”皇室御用画家“であると同時に、教会批判のインモラルな風刺版画をばら撒き、そして英国軍とフランス軍の侵攻にあたっては反体制の“戦場カメラマン”でもあったフランシスコ・デ・ゴヤ。
同時代のベラスケスと並ぶスペイン宮廷画家の最高峰ではあるけれど、その仕事の振れ幅は実に奇異であったことが、その作品群から伺い知れて大変面白かった。
・・たくさんのゴヤの作品のモデルたちがスクリーンに蘇って蠢いていて、これはなかなかの映画だった。

・・・・・・・・・・・・・

原題Goya's Ghosts.
「宮廷画家ゴヤは見た」は邦題ではあるけれど、「キリスト教会の堕落」と「ユダヤ人へのホロコーストの罪過」をヨーロッパの観客に否が応でも象徴的に突きつけて「あんたらの姿を鏡にうつして『見せて』やろうか?」と迫るゴヤばりのこの強引さは、きっとアレルギー反応も起こすだろうから、
そうであれば製作側の悪意は成功だったと言えるはずである。

·
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きりん

2.0疲れるぅー

2021年10月30日
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バルデムが好きだから観たけど、これは本当大作で怪演であるが故に疲れるぅー映画としてはテーマもストーリーもハッキリしてて音楽も映像もお金かかっててすごいと思う。

けど、マジで2度と観たくないし、スクリーンで見たのを悔やんでる作品の一つ。倫理観ゼロじゃない。

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大粒 まろん

4.0おひょおひょおひょ

2018年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

萌える

ナタリーポートマンが可愛く、美しく、飽きずに見てられる。
虐められるシーンは特に唆る。

よくナタリーポートマンは映画内で酷い目に合う。

Mオーラが出ているからそのように扱われやすいのだろうか?

見た目はSっぽいのに。

彼女に対する受難なのだろうか。ともあれこの映画の考証を信じるならば

スペインで駿河問いのような行為の末告白されたことは絶対の真実だという。

この時代は啓蒙思想、人権の概念が起こり、教会の威信が地に落ちた
かのように思っていたが、どうやらスペインは一足遅れたらしい。
ナポレオンのマドリード進行でその波が波及し、世相は大きく変わるが
再びイギリスに占領されて教会の威信が復活するあたり歴史のダイナミズムを感じる。

まぁゴヤに関しては我が子を喰らうサトゥルヌスくらいしか知識がなかったから、何と無く人となりが掴めた、、かも?

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shosho5656

3.5何故英語?

2017年6月22日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

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クリストフ

3.5原題:Goya's Ghosts

2015年10月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

邦題が上手いと思う。
ナタリー・ポートマン、お見事。

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えな

4.0十分楽しめました。

2013年11月13日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

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rocko

3.5どんなふうに、歴史に残りたいんですか?

2012年7月8日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

難しい

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shimo

3.5『それで、どうなのよ?』と突っ込みたくなった・・・

2008年11月5日

悲しい

知的

たまたま時間がとれて、映画を観ようと思ったが、観たい映画がなかった。ミロス・フォアマン監督なら、ハズレはないだろうと思って観た。「魔女狩り」という言葉は聞いたことがあったが、「異端審問」については全く知らなかった。こんな恐ろしいことが行われていたとは・・・ 画家のゴヤの視点からその時代を描いたというのはわかった。画面も抑えた色調で威厳があったし、セットや衣装は豪華だった。でも、それで監督は何が言いたかったのかが伝わってこなかった。プログラムを読むと、それが共産主義と酷似しているので描きたかったそうだが、「こわいね、やだね」くらいにしか思えなかった。それというのも、登場人物が上っ面しか描けていなくて、魂の叫びが聞こえてこなかったのだ。長い時間を描いているためかもしれないが、登場人物の身の上に起こる出来事が中心に描かれていて、次々に場面転換されていって、描き足りていないのだ。考えてみたら、フォアマンの代表作の「カッコー」や「アマデウス」には原作があるが、こちらはオリジナル脚本。やはりそこが弱かったのかなと思った。物足りなさが残った。

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瑞

4.0悲劇であり喜劇です

2008年10月22日

悲しい

怖い

名作「カッコーの巣の上で」や「アマデウス」の監督、ミロス・フォアマンの最新作でございます。

宗教や歴史のうねりにそそのかされ、翻弄される人々が描かれるわけで、それを宮廷画家ゴヤがストーリーテラーのような存在で物語は進んでいきます。ゴヤは本作のドラマを盛り上げる起点になっていますが、決して主役ではありません。

実際にあったであろうフィクション映画であり、このような国家の「犯罪」を歴史として浮き彫りにさせたこと事体にとても価値あります。フォアマン監督の演出はシンプルかつ、どこかにこの悲劇を喜劇のように取り扱っている趣があるのがとても印象的。どこか作家セリーヌのスタンスを感じます。老獪ってやつです。

フォアマン監督は、もはやかつてのパワーもエネルギーもありません。むしろ、映画を作ること自体に純粋な喜びを感じているかのように、とてもシンプルに、変に肩のこった意匠もなく、観てて疲れません。

でも、やっぱり「アマデウス」の頃のような作風をもういっかい観たいな。

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あんゆ~る

4.5演技派は今回もかぶった。

2008年10月20日

悲しい

怖い

知的

今やカツラ俳優と化した?H・バルデムのユーモラスな怪演、
このあいだはマッシュルームヘアの殺人鬼でしたが^^;
今回はとんだ性欲神父(汗)すでに信念などどこにもありません。
あの大きな顔に今回はミディアムカールのカツラを使用、
合ってないものを合わせてくる彼のセンスには舌を巻きますね。

この映画…ちょっと題名で損している感じがあります。
(観終わった時点で、すごく上手な邦題だと気付きますが)
大げさな芸術映画ではないし(ゴヤの絵画は中心になるけど)
特にそういうものに興味がない人でも、楽しめる作品です。
なんといっても。。
俳優陣の演技が見事、主演三人の演技には狂喜すら感じます。
さらに話の奥行きが歴史の変遷と相まって描かれ、
当時の異端審問など、かなりの絶望感を味わうことになります。
拷問、死刑、目をつぶりたくなるシーンも確かに多い。。

これはどこまでがフィクションなんでしょうか。
ゴヤが完成させる二枚の絵。そこに描かれた神父と美女が、
どのような人生を歩んでいったかをゴヤが見つめ続ける物語。
特にN・ポートマンが、天使のような美女から審問にかけられ、
拷問され、のちに解放された時の変貌ぶりは見事なものです。
うわ~!と思いましたね。女優魂見せたろか!!って感じで。
可愛い役ばかりだった彼女が(脱がないのでも有名だったし)
最近ではかなりチャレンジな役どころを演じていますねぇ。

まぁ^^;周りが。。
バルデムとスカルスガルドおじさんですから(爆)
彼女もそのくらいインパクトを与えないとならなかったのかも。
…にしても、見事な演技だったと思います。
そして、さすがにフォアマン監督は脚本も手を抜いておらず、
単なる宮廷モノに偏らない歴史ドラマを構築しています。

悲劇…に他ならないので、泣けてしまうシーンもありますが、
かなり観応えがある面白い作品ですので、これはおススメです。

(豚肉は美味しいんだぞ~。好き嫌いは昔から悲劇を招くのね)

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ハチコ

4.5真実とは?・・・考えさせられる秀作だ。

2008年10月14日

泣ける

悲しい

知的

異端審問:Inquisitioという、キリスト教の歴史において最も恥部とも思えるシステムがあった。
ユダヤ教やアラブの宗教に殉じる人々、あるいは単なる誤解によってそう決めつけられた人々を異端と称し、連行し拷問により強制的に自白させ、やがて火刑などを執行する。
その異端審問を行う施設は異端審問所と呼ばれ、非人道的な行為が日常的になされていたという。
異端審問には、中世初期のもの、スペイン異端審問、ローマの異端審問の三つに大別され、各々異なった時代背景と特徴があった。
中でもスペインでは、キリスト教に改宗したイスラム教徒やユダヤ教徒に対しても、カトリックの国内統一と安定を目的とする恐怖政治そのものを遂行したという。
18世紀末スペインの宮廷にて、ゴヤという天才画家が筆をふるっていた。
彼は国王カルロス4世や王妃、その周辺の貴族の依頼による宮廷作品に従事する傍ら、巷の貧しい人々を描き、権力や不正に対して辛辣な内容の作品も残し続けた。

「宮廷画家ゴヤは見た」はその文字通り、当時の風刺や非人道的な異端審問の事実を伝えるメッセージと、その時代に翻弄されていく一組の男女が織りなす物語だ。
画家フランシスコ・デ・ゴヤの伝記や自叙伝ではなく、あくまでも一人のクリエイターらしい目で追う時代の正負そのままだ。
芸術作品を堪能する目的というよりも、中世ヨーロッパ動乱の歴史と暗部を理解するべく鑑賞された方が納得いくことだろう。

不条理さ、運命の果敢なさ、あらゆる事象のめまぐるしさ、別離・・・etc.いつの時代でもどの国でも有り得る物語として。

監督は巨匠ミロス・フォアマン:Miloš Forman、かつては「カッコーの巣の上で」や「アマデウス」でオスカーを受賞した人だ。
切り口の鋭さや描写を崩すことなく現代に反映させる、その説得力では定評のある人だ。
「アマデウス」でも垣間見せた重厚さと思惑が折り重なるストーリーを、18世紀スペインという設定で描く。
とは言うものの、彼にとっての時代背景などどうでもよいことであり、常に現代をテーマとして置く人なのだと思う。
200年以上も前の出来事、そんなことは重々承知。
大切なのは、同様なことが世界の片隅で今でも繰り返されている、それを切に訴えるということ。
ちなみに彼はユダヤ系の血筋、両親はともにアウシュビッツで亡くなったという悲しい過去を持つ。
「過去を題材にして、今を伝える」という意義を知る立派な映画人だと思う。

俳優陣の活躍ぶりにも注目していただきたい。
異端審問の犠牲となり不運な運勢を辿ってしまうイネスには、ナタリー・ポートマン:Natalie Portmanが扮する。
1994年のリュック・ベッソン監督の「レオン」にてスクリーン・デヴュした女の子も、今やハリウッドでは引っ張りだこな女優だ。
別解釈になるが、彼女の演技から得たものは、改めて自分自身の成長の未熟さと後悔かもしれない。
彼女のように、常に進歩をする姿勢は是非見習いたいものだ。
そしてもう一人、この物語の主軸を担った存在はロレンソ神父役のバビエル・バルデム:Javier Bardem、生粋なスペイン人俳優だ。
教会の権威復興の為に一役買った男が、様々な歴史的事件の中で多くを獲得しそして喪失する。
非常に難しく重厚な役回りを淡々とやりこなしてしまう演技力、久しぶりな演技派を発見した気分だった。
「ノー・カントリー」で見せた非道な殺し屋同様に、彼の存在感のある演技は映画界の未来そのものだろう。

ミロス・フォアマンがゴヤを選んだ理由は個人的憶測でこういうことなのだと思う。
ゴヤの作品には、そもそも二面性がある。
宮廷の華やかさとリアリティを描く画家そのものとしての目と、版画などをタブロイド化して世間に暴く風刺家らしい目利きの確かさだ。
彼の履歴上、前半後半とではその作風も相当な落差があったようだ。
「カルロス4世の家族」「マドリード、1808年5月3日」「巨人」・・・etc.各々の作品にて表現する世界観は全く異なったもの。
しかし一貫していることは、どこかで必ず暗黒な部分が強調されているという点だ。
そこを観て見ぬ振りをするか一点凝視するかで、社会への視点やアプローチさえも変わってくる・・・それは今も昔も関係のないこと、それを多くの人々に気づかせたいのだ。

時代や国柄ではない、ましてや人や文化の違いもない。
人が人として為すべき倫理を凝視するならば、答えは決まっている。

ただ知って欲しいのだ。
真実は一つだということを!

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jack0001

4.5ナタリーの迫真の演技に圧巻^^♪

2008年10月10日

悲しい

覚悟はしていましたが、かなり重い作品でした(>_<)

今や、宗教思想の自由は当たり前のことなのに、当時18世紀末のスペインでは、キリスト教以外は異教徒となり、異端審問で拷問され牢獄へ・・・
その被害者の1人がゴヤの肖像画のモデルになっていたナタリー・ポートマン扮するイネス・・・
ナタリーの迫真の演技を観て、拍手とともに心苦しく悲しい気持ちになりました。
宗教という名を借りた独裁社会だった18世紀。
誰1人として、反発できない中、宮廷画家に任命されながら、権力批判の作品を描き続け、後世に残したゴヤ。
この映画を観て、自由でいられるということがどんなに幸せなのか、改めて考えさせられました^^

今回もやってくれました^^ハビエル・バルデム。
彼は、悪役ではピカイチですな♪
それから、キャストで一番ビックリしたのがゴヤ役のステラン・スカルスガルド!
「どっかで観たことあるなぁ~」と上映中に考えながら観賞し・・・で思い出しました!!!
そ~だ♪「パイレーツオブカリビアン ワールドエンド」ウィル・ターナーのお父ちゃんだったビルじゃぁ~ありゃ~せんか^^
何だかちょっぴり嬉しくなっちゃいました♪

              10月9日109シネマズ高崎にて観賞

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ゆりこ

5.0伝記映画でなく、時の権威を「家政婦は見た」ならぬ「ゴヤは見た」という感じで炙り出している作品

2008年10月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 骨太で思想性にあふれているかなりの秀作作品です。
 『アマデウス』を見た人ならば、あの重厚な中世の世界がフォアマン監督の手によって、再現されているという点で、必見です。
 一見画家の退屈そうな伝記映画に見えそうですが、ゴヤの生き方や絵画がテーマではありません。神父役のハビエル・バルデムと娘役のナタリー・ポートマンを「家政婦は見た」ならぬ「ゴヤは見た」という感じで描いている作品なのです。

 そしてドラマはゴヤの生きた19世紀初頭の異教徒審判、ナポレオン率いるフランス軍の進撃、スペインの独立戦争、歴史の中で激変する動乱の時代を、実戦シーンを交えスペクタクルに描きます。
 そのなかで歴史に翻弄された登場人物の数奇な運命を、皮肉たっぷりに表現されていました。

 この作品で、一番印象的な存在なのが、狡猾な宗教政治家・ロレンゾ神父です。彼は異教徒審判の急先鋒に立ちながら、自らが審問をかけられるとあっさり信仰を捨てて逃亡を図るなど、偽善者ぶりが際だっておりました。
 なかでも、ロレンゾの悪辣さは、自らの異教徒審判で獄に繋げた娘イネスに救いといいつつ、そのまま獄中で押し倒して、エッチしてしまうのです。
 純粋にロレンゾを救いと信じるイネスに比べて、彼女を残して逃亡してしまうロレンゾの身勝手さが、神父という「善人」の看板に隠れた人間の業を浮き彫りにしておりました。
 またロレンゾと彼を追放する教会幹部とのやりとりも面白かったです。逃亡後、ナポレオンの手先として凱旋して地元の為政官となるロレンゾによって、教会幹部の異教徒審判の非人道性が裁かれるのです。ロレンゾに裁くこの件で資格などあるはずもないのですが、彼はナポレオンの掲げた「自由と民権」という虎の威を借りて、教会幹部を断罪します。しかし、「自由と民権」がただの侵略行為だったと民衆が知り、ナポレオンから離反する者が相次いでいったとき、教会が復権し、立場が全然逆になってしまいます。
 しかし復権した幹部がいかに威厳をただそうとしても、それまで囚人となっていた無様な姿を見せつけられていた観客には、その威厳が茶番にしか見えませんでした。
 このようにフォアマン監督は、既存の権威に対して、ウィットに満ちたスパイスを利かせています。
 一見反権力のように見えますが、キリスト教の暗部を描く視点には、本当の信とは善なることは何かという、真実を求めている気持ちを強く感じました。
 ダビンチコードのシリーズ化という欧米の映画人の中で、自ら信じているキリスト教を根本から見直す機運が高まっているものと思います。
 その分異教徒審判の描写はえぐいので、いかに中世のローマ教会が行った魔女狩りが酷かったか、印象深くもたれることでしょう。
 それにしてもバルデムの悪人ぶりが強烈すぎて、主役のゴヤが、すっかりかすんでしまっています。本作でも、憎たらしいほどの偽善ぶりであるが、バルデムが演じるとそんなロレンゾについつい同情し、感情移入してしまうから不思議です。そしてラストも圧巻でした。
 「アカデミー賞:助演男優賞」をとる前の作品ですが、彼の強烈な個性を味わいたいなら本作も見落とせないでしょう。

 ただ、ゴヤも腐敗した内政を痛烈に批判する反骨精神の持ち主であったので、劇中見せる女王の絵のシーンなどで、気骨ぶりを見せます。

 ところで天才子役として数々の役歴をこなしてきたポートマンも今や27歳になった大人の女。獄中では全裸を晒すなど、ファンには信じられない体当たりの演技を披露しています。特に15年間獄中に繋がれたあとにゴヤと再会する変わり果てた姿のイネスがすごいのです。精神にも異常をきたしていて、あまりの汚れ役に絶句です。目はくぼみ、とても本来の美女とは想像できません。ファンには卒倒ものでしょうね。

 そんな彼女をストイックに保護するゴヤの優しさが印象的でした。

 単館映画好き、濃厚な人間ドラマを見たい、バルデムが好きという人に特選です。

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流山の小地蔵

4.0宮廷画家ゴヤは、しっかりと見たった。

2008年10月5日

泣ける

悲しい


 ナタリー・ポートマンの脱皮しようとする女優魂を観よ。

 18世紀末のスペイン。
 国王カルロス4世の宮廷画家に任命された
 フランシスコ・デ・ゴヤ(ステラン・スカルスガルド)。
 最高の地位の画家でありながら、常に人間の真実を見つめ、
 現実の社会と向き合い、権力を批判し、
 社会風刺に富んだ作品も精力的に制作していた。
 2枚の肖像画に取り掛かっていた、1792年。
 1人は裕福な商人の娘で純真な魅力に溢れていて、
 天使のような少女イネス(ナタリー・ポートマン)。
 もう1人はロレンソ神父(ハビエル・バルデム)という
 異端審問を強硬する威厳に満ちた男。
 ロレンソの提案でカトリック教会では、異端審問の強化が図られ、
 ある日、イネスは居酒屋で豚肉を嫌ったことから
 ユダヤ教徒であるというあらぬ疑いをかけられ、
 審問所への出頭を命じられてしまう。

“カッコーの巣の上で”や“アマデウス”の巨匠ミロス・フォアマン監督が、
 スペインが経験した激動の時代を背景にし、
 そんな時代でも逞しく生き続けようとする人間の力強さと、
 権力に執着することの愚かさを、
 純真無垢な少女イネスと、
 威厳に満ちた神父ロレンソが辿る数奇な運命を、
 2人の肖像画を手掛ける天才画家ゴヤの目を通して、非人道的であり、
 非寛容な異端審問が惹き起こした、一つの悲劇を繊細に、
 そして重厚に描いた物語。

“カッコーの巣の上で”や“アマデウス”のような素晴らしい作品を、
 傑作を期待してしまうと、期待が大きいと、
 ちょっとその期待には答えてくれていないかな。

 スペインでの公開から2年近く、
 アメリカでの公開から1年以上遅れての日本公開。
 それはどういうことなんでしょう。
 興行的に日本での公開は単館系でも厳しいと思われていたのか、
 もしかしたらハビエル・バルデムがアカデミー賞を獲っていなかったら、
 公開はなかったのか。
 アカデミー賞を獲ったので買い付けて、作品的に公開は秋ぐらいだろう、
 ということなのか。などと、考えてしまう。

 衣装や街の雰囲気などは詳しくは分かりませんけど、
 おそらく申し分ない出来でしょう。
 ロレンソ神父を演じるハビエル・バルデムも、
 イネスを演じるナタリー・ポートマンも、
 ゴヤを演じるステラン・スカルスガルドも、
 素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれています。

 特にナタリー・ポートマンは可愛いだけでなく、
 元々演技派だとは思いますけど、更に脱皮しよう、
 脱皮しようというのが、ヒシヒシと伝わってくる。
“モンスター”のシャーリーズ・セロンのような、
“オアシス”のムン・ソリのような、
 というとちょっと言いすぎかもしれないが、汚れ役も、
 はっきりと見えてはいないけど、肌を見せることもいとわない。
 2役というか、もう変わりようは3役というか、汚れっぷりも、
 変貌振りもよく分かりますし、のめり込み具合を感じさせて、
 よかったと思いますが、
 逆にそこに違和感を感じる人もいるかもしれない。
 はっきりと見せないのも、中途半端と感じる人もいるかもしれない。
 そんなことないかな。

 イネスは拷問を受け自白してしまう。
“24”を観ているとジャックは正義のために拷問をしまくりで、
 笑ってしまうほどであるが、当時のスペインだけでなく、
 今もどこかで行われていると思うと恐ろしくなる。
 1度でも、嘘でも自白してしまうと、更に厳しい環境に放り込まれ、
 見るからに変わり果てた姿になってしまう。
 イネスの父親やゴヤにイネスを救うように頼まれ、
 それを受け入れる過程が拷問の愚かさを、
 ロレンソの情けなさをよく表している。

 原題は Goya's Ghosts だけど、実際は幽霊、幻というよりも、
 激動の時代のスペインの裏と表という感じで、
 宮廷画家ゴヤは見た という邦題で、家政婦を、
 市原悦子を思い出してしまうようではあるが、
 確かにしっかりと見ていたのかもしれないが、
 勝手に宮廷画家としてのゴヤが、彼の目を通して描き、
 彼の絵画が物語の中で、もっと大きな役割を果たすと、
 何か仕掛けがあると思ってしまっていたのも、
 期待外れという印象を持ってしまった要因か。
 もうこれは勝手な思い込みで僕が悪いのです。
 でも、そんな変な見方をしなければ、
 激しく移り変わるスペインに於いても、ゴヤの目は常に中立で、
 安心して観ていられると思います。

 一番不思議なのはロレンソの描き方で、
 肖像画を描くときに小者振りの表現が面白く、小者で、小悪党で、
 どこまでも狡猾だった男が、情けなくて、卑劣だった男が、
 日和見主義的だったロレンソが、どうしてあのような選択をしたのか、
 ハビエル・バルデムはしっかりと魅せてくれますが、納得できなかった。
 諦めなのか、意地なのか、信念なのか、何なのかが分からなかった。
 ゴヤが称していたように、天使のようなイネスとの対比として
 ロレンソの滑稽な人間は面白かったのですがね。

 上映時間は2時間もない作品なのに、長さを感じてしまう。
 しかし、描きたいことは描ききれてないのではないか。
 コンパクトに纏めすぎたのではないか。
 それこそアマデウスのディレクターズ・カット版ぐらいの長さが
 あってもよかったのではないか。
 一気に時間を飛ばしちゃうことで、
 じっくりと描かないことで長さを感じてしまい、
 上映時間がもう少し長い方が、長さを感じなかったのではないかと、
 変な感想を持ってしまっていた。
 その時間を、描かれなかった時間を、
 ナタリー・ポートマンの演技力で埋めようとし、
 それだけの時間が流れても、ただただ一途に信じ続け、
 愛と呼んでいいのかは疑問もあるし、不条理な感じも受けてしまうが、
 後半は堪らない展開で、2人のナタリー・ポートマンの表情の違いに、
 愛を求め続けるイネスという女性に、ラストの行動に、
 少しはグッとくるモノはあることは、あったんですけどね。

 それから、“それは、立ち入り禁止の、愛。”というコピーには、
 アホか、と言っておきます。

 ナタリー・ポートマンのファンとしてはそれなりに満足はしています。

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いきいき

5.0人がヒトたる所以がそこにはある

2008年9月28日

悲しい

怖い

この作品は
ゴヤという歴史上実際にいたスペインの偉大な画家が、
18世紀後半から19世紀初頭にかけて自分の目にした事を
ある一組の男女の運命を通して描いた作品です。

時は18世紀後半、世の中の秩序を守ろうと
教会は異端の取締りを強化する。
滑稽な事に、男が立ちションするとき廻りの人に見られないように
こそこそするのは割礼のせいで、異教徒だからだ、とか
難くせをつけながら憲兵隊のような者たちを市中に見回らせる。
そのせいで、美少女のイネス(ナタリー)は、
居酒屋で豚肉を食べなかったばかりに、
異端者扱いされ、拷問のすえ、ありもしない告白をさせられてしまう。
このシーン、全裸姿のイネスの演技が凄ざましい。

対する、協会側の先導者となったロレンソ神父(ハビエル)は
取締り強化を主張しておきながら、都合が悪くなると、
国内へ逃亡し、ナポレオン軍とともにスペインへ凱旋してくる。

その後、スペイン国内は戦火となり、正義とは何かを
見失ってします。
そんな混乱をゴヤの目を通して描いているのです。

今の世の中も、アメリカ同時多発テロ以来の戦争が続き、
何のための戦争なのか、何が正義なのか不透明な世の中です。

そんなことを、この映画を通して訴えたかったのでしょうか。
私にはそのように思えてなりません。

同じ事を何度も何度も繰り返す、人間の愚かさよ!

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カサキショー

4.5大作だと思いました♪

2008年9月28日

悲しい

知的

今日、eiga.comさんに招待していただき、藝大で行われたロイヤルプレミアに行ってきました。いろいろな意味でとても深い、大作だと思いました!ゴヤの目から見た、世の中が描かれています。とにかく、考えさせられました。
ゴヤのすばらしい絵画も何点も登場しますし、美術好きの方にもおすすめです★

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hitomi