かげろう(2003)

解説

第二次大戦下のフランスで、孤独な少年と未亡人の恋愛感情を綴るドラマ。監督・脚本は「溺れゆく女」のアンドレ・テシネ。製作は「太陽と月に背いて」のジャン=ピエール・ラムゼイ・レヴィ。脚本は「デュラス 愛の最終章」のジル・トーラン。原作はジル・ペローの小説『灰色の目の少年』。撮影は「彼女たちの時間」のアニエス・ゴダール。音楽は「マドモアゼル」のフィリップ・サルド。衣裳は「トスカ」のクリスティアン・ガスク。出演は「8人の女たち」のエマニュエル・ベアール、「ジェヴォーダンの獣」のギャスパー・ウリエルほか。

2003年製作/95分/フランス
原題:Les Egares

ストーリー

1940年6月、パリにはナチス・ドイツ軍が攻め込み、夫を亡くした教師オディール(エマニュエル・ベアール)は、13歳の息子フィリップ(グレゴワール・ルプランス・ランゲ)と7歳の娘カティ(クレランス・メイヤー)を連れて南仏を目指す。やがて爆撃により周囲の人々が倒れていく中、たくましい生命力を持つ17歳の少年イヴァン(ギャスパー・ウリエル)が、母子の命を救った。彼を警戒しながらも、共に森の奥深くへと進むオディールたち。まもなく彼らは無人の屋敷を発見し、そこで共同生活を営むようになる。最初はイヴァンに心を許さず、不法に他人の家に滞在することに罪悪感を持っていたオディールも、徐々にこの生活を受け入れていく。そしてイヴァンが字が読めないことを知った時、彼に字を教えながら、彼女に別の感情が芽生え始めた。そんな中、戦火から逃れた軍人が2人、屋敷にやってくる。イヴァンは過剰に警戒するが、彼らは紳士的な態度に終始し、数日滞在した後、屋敷を去っていく。その途端、何か堰を切ったようにオディールはイヴァンに野外で抱きつき、そのままセックス。しかしまもなく、警察が4人を発見。オディールと子供たちは保護されるが、イヴァンは実は感化院を脱走した少年であることが判明し、そのまま逮捕される。そして彼は、独房で首を吊って自殺してしまうのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第56回 カンヌ国際映画祭(2003年)

出品

コンペティション部門
出品作品 アンドレ・テシネ
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映画レビュー

4.5活写とはこういうことを言う

2021年2月24日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

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yolanda

3.5べアールの表情が魅せるフランス映画の矜持

2020年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

1940年ドイツの攻撃でパリから脱出した子連れの女教師の、感化院を脱走した少年との束の間の触れ合いを描いたフランス映画の佳編。ドイツ占領下の過酷な状況は「禁じられた遊び」「ルシアンの青春」などの作品と同じだが、これは時代背景より主人公の女性に焦点を当てた女性映画の純度が高い。それゆえ時代を超えた普遍性がある。年上の未亡人を演じるエマニュエル・べアールの揺れ動く女性心理が、丁寧で細かい表情変化で説得力を持ち、14歳の長男とカエル遊びに夢中の長女の設定が程よい絡みで、二人の関係を刹那的に描く。対して少年役のガスパール・ウリエルに、幼さゆえの危うさがもう少しあれば良かったのではないか。人間ドラマと云うより、べアール主演の女性映画としての価値は高い。

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Gustav

5.0オーディールを妻として守らんとしたイヴァンの成長に目を奪われました

2019年7月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

《ネタバレ》です

戦時中、フランスの田舎を避難していく母子の数日の物語。
秀作です。

フランス映画は台詞がしみます。言葉に含蓄があります。そして度々返事をしない母の無言がまた、女として母として窮地に立たされている彼女の呆然とした心情をとてもよく表しています。

息子フィリップ。
父の戦死を子供ながらに受け止めて母親を支えようとする息子フィリップの健気さに、胸が締め付けられるんですよ。
僕はいつしか「戦死した父親目線」でこのフィリップを見ていたかもしれません、フィリップをねぎらい抱きしめてやりたい思いで涙がこぼれました。
大人の男のように母親を支え、母親を諭し、潜り込んだ空き家の手紙を盗み読みする母をたしなめるこの息子の言葉のくだりと言ったら!
でもまだ隠れて泣いているんだし、お母さんの胸にもたれかかりたい子供なんですよね。

そして、母子を助けたイヴァン(ギャスバー・ウリエル)の若いこと。無鉄砲な若者の落ち着きのない動作の演じ方は天才と思います。
育ちが悪くて家庭生活も知らないこの粗野なイヴァンに座って食事をすることや、文字の書き方や、そして矯正施設での男の体しか知らなかったイヴァンに・・

教師であったオーディールに「器用だ」「賢い」と生まれて初めて褒められたのであろうイヴァンのステップと背中に皆さん気付きましたか?イヴァンもね、本当はお母さんをまだまだ必要としていた17才の子供だったのですよ。

暗転の最後はつらい。
“かげろう”の日々は過ぎ去る。

その青年イヴァンの死を伏せて
我にかえって「娘カティはどこ」と聞く母親オーディール。
“女”である自分を保留し、“妻”であった自分を諦め、なんとかして残された子供たちを守らなければならない我に戻った“未亡人”の母親が、たった独りそこに残されて映画が終わります。

「ひまわり」とか「禁じられた遊び」とか、そして「この世界の片隅で」とか、
地味で目立たないけれど庶民の生活を追い詰めていった戦争の罪と悲しみの姿ですね、これ。

一生忘れられない作品となりました、
kossy さんオススメありがとうございました。
イヴァンは、ジャン・デルマスだったんですね。

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きりん

4.0エマニュエル・ベアール

2019年4月14日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 一面に広がる麦畑と緑いっぱいの森、そんな田舎の田園地帯にもドイツ軍は爆撃してくる。もぬけの殻となった村のある家に避難し、3人家族と一人の青年という奇妙な関係を続けていくが、他人の家で生活するうちに理性や道徳観が失せていく様子がわかる。その間にも、子供たちはイヴァンを慕い、良好な関係を築いていったが、人間関係は徐々に変化してゆく。

 唐突に「妻にしたい」と言うイヴァン。理性で感情を押さえ、文盲の彼に文字を教えるオディール。そのまま4人で生活を過ごし、幸せな一時を過ごせそうな予感がした途端に、フランス軍兵士二人が村にたどり着いた。

 官能的な描写はほんのちょっとだけ。むしろ、『かげろう』という邦題に示されるように若者の短い命を表現したかったのであろう。ラストが駆け足で流されていくので、観終わってからジワリとくるパターンだ。「あっさりしすぎ」とも言う・・・

 この映画を観てジュネが『ロング・エンゲージメント』の主役に抜擢したといわれるウリエルと、ベテラン女優のベアール。子役の二人も名演技だ。カエルと遊ぶ女の子クレメンス・マイヤーが可愛い。

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kossy
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