ヒッチコックのファミリー・プロット

劇場公開日:

解説

監督生活50年を迎えるアルフレッド・ヒッチコック監督の53作目の作品で、手数料目当てに資産家の遺産相続人を捜す若い男女と、ダイヤモンドを狙う誘拐犯の男女、の2組が織りなすサスペンス映画。監督は「フレンジー」のアルフレッド・ヒッチコック、脚本はアーネスト・リーマン、原作はビクター・カニング、撮影はレナード・J・サウス、美術はヘンリー・バムステッド、音楽はジョン・ウィリアムス(2)、衣裳デザインはイーディス・ヘッド、編集はJ・テリー・ウィリアムスがそれぞれ担当。出演はカレン・ブラック、ブルース・ダーン、バーバラ・ハリス、ウィリアム・ディベイン、エド・ローター、キャスリーン・ネスビット、キャサリン・ヘルモンドなど。

1976年製作/アメリカ
原題:Family Plot
配給:ユニヴァーサル=CIC
劇場公開日:1976年8月28日

ストーリー

アメリカのある大都市の高級住宅地。ジュリア・レインバード(キャスリーン・ネスビット)という金持の老嬢の邸に、降霊術師ブランチ・タイラー(バーバラ・ハリス)が呼ばれた。ジュリア・レインバードは、40年前、彼女の妹のハリエットが生んだ父なし子の男児を、見知らぬ他人のもとへやってしまった。だが、ハリエットが死に、血のつながった身内が、この甥1人になってしまった現在、何とかしてこの甥を探し出し、自分の財産を譲ってやりたいと思い、ブランチに甥を見つけ出してほしい、と依頼したのだった。レインバート邸を辞したブランチをタクシーが待ちうけていた。その運転手ジョージ・ラムレイ(ブルース・ダーン)は、ブランチの情夫であり、しかも、彼女の霊のお告げというのは、すべてジョージが探偵もどきにかき集めた情報で、ブランチはその情報を神がかり的演技で言っているにすぎないのであった。2人を乗せた車が、危うく若い女を轢きかけた。この女、フラン(カレン・ブラック)は、警察のパイロット養成所に入り、1粒のダイヤモンドを受け取ると、警察に準備させたヘリコプターに乗って、とあるゴルフ場に着陸させた。ここで彼女を待っていたのはアーサー・アダムソン(ウィリアム・ディヴェイン)で、ダイヤが本物であることを確認すると、車で逃亡した。この2人、実は億万長者を誘拐し、その身代金としてダイヤを受け取ったのだった。市内の隠れ家に戻って来た2人は、ダイヤをクリスタルのシャンデリアの中に隠した。一方、ジョージは、ジュリア・レインバードの甥を養子にしたという夫婦の消息を追って、バーロー・クリークという田舎町にやって来た。だが夫婦子供とも既に死んでおり、確かに墓まで建てられていた。しかし、息子--リチャードの墓石が新しいことに気づいたジョージは、墓石屋からジョージの墓の下には何も埋まっていないことを聞き出し、さらに役場にリチャードの死亡証明書を申請したマロニー(エド・ローター)といううらぶれたガソリン・スタンドの経営者に目をつけた。そのマロニーが、色々と嗅ぎまわっているジョージのことを報告した相手は、表向きは宝石店を経営しているアダムソンだった。その頃、ジョージとブランチは子供に洗礼を授けた牧師に会うべく教会に行った。ところが、突然飛び出したフランとアダムソンが、大勢の信者の目前で牧師を誘拐してしまった。そしてアダムソンは、マロニーにブチンチとジョージを殺すように命令した。マロニーは2人を郊外のドライブインへ誘い、隙を見て車のブレーキに細工を加えた。急な山道でブレーキのきかない車に乗って危機一髪の目にあったブランチとジョージだったが、車ごと崖から墜落したのはマロニー自身だった。ついにブランチは遺産相続人がアダムソンであることを調べ、彼の家を訪ねた。アダムソンはそこで初めて、ブランチとジョージが自分を捜し求めていた理由が、自分にとって不利な事どころか大金がころがり込んでくる話であるのを知ったのだが、丁度、車に積んでいた牧師をブランチに見られてしまい、やむなく彼女を捕まえて監禁した。一方、ジョージもブランチの伝言によってアダムソンの家を訪ね、戻らないブランチを不審に思って家に忍び込んだ。そして、ブランチを助け出すとともに、人質の牧師と交換してダイヤを受け取り、意気揚々として戻ってきたフランとアダムソンを掴まえたのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第34回 ゴールデングローブ賞(1977年)

ノミネート

最優秀主演女優賞(コメディ/ミュージカル) バーバラ・ハリス
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映画レビュー

5.0見つかったのは何が?その後、どうなるのか?分からず終わり。

2023年9月3日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ

4.0映画の王様ヒッチコック監督の映画演出の模範を示したシニカルなジョークとユーモアのストーリーテリング

2022年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

最近の洋画を観ると刺激の強い表現が新しい感覚の様に取り上げられ、かつての構成力の高い映画の形体が単に古いだけの評価に止まるのには、どうしても納得できないでいる。勿論進化する映像の迫力を娯楽的な満足度で言えば、新しい映画に分があるのは明白であるのだが、映画演出の個性と技量の点では均等化しているのではないかと、危惧している。そんな意識でこの映画の王様(ヒッチコック監督の容姿や傑出した技量、そしてユーモアのセンスから個人的に尊称して)の53本目の新作を観ると、若い世代の人たちに映画の演出とはこうするのだよ、と教え諭すような老巨匠の技が見て取れる。流石に77歳の老齢ではパンチの効いたスリルやサスペンスを全盛期の様には創作できていないが、その代わりにヒッチコック監督だけの熟練された演出の味があり、1960年代後半の不振から復活した72年の「フレンジー」に並んで晩年の代表作に挙げられるであろう。

作品全体は、イギリス人ヒッチコックのシニカルなユーモアが支配している。それはバーバラ・ハリスが演じる主人公の偽の降霊術師ブランチの設定から、予想を裏切る二転三転の脚本のストーリーテリングにヒッチコック監督らしいユーモアがあって、大きな笑いは生まないもののくすくす笑える楽しみがある。登場人物は一癖も二癖もあるし、キャスティングは地味でも役者の演技は確りしていて不足はない。
ブランチの情夫のタクシードライバーのジョージが或る資産家の甥を探し出す依頼を受けるが、報酬1万ドルと聞いてやる気になり弁護士に化けて探偵に乗り出す。見つけ出したその甥は亡くなっていたと調査を進めると、実は宝石商を生業にして生きていたと知るが、これが表向きで実際は身代金誘拐の常習犯アダムソンという。そこから、この男が妻のフランと組んでブランチとジョージの二人を始末しようとして知人のガソリンスタンドの経営者マロニーに殺害を依頼するが、間抜けにも未遂に終わるどころかマロニーは自滅してしまう。といったお話が冗談と深刻さを併せ持った皮肉で展開していく。そしてブランチがアダムソンに遺産相続のことを打ち明けたときは誘拐事件の真っ最中というのが、皮肉が効いている。二組の男女が入り乱れての騙し合いと欲の皮を突っ張らせた人間の可笑しさ。それを楽しみながら演出しているヒッチコック監督の満足げな表情が、ラストの宝石を見つけてウインクするブランチに見て取れる。

演出で光るのが、マロニーにブランチとジョージが誘い出される郊外の喫茶店のシーン。ヒッチ監督は観客にマロニーが来たことを教えるが、待たされている二人が注視する喫茶店のドアからマロニーは現れない。ブレーキの細工を示唆するこの演出は、観客に予測させて主人公ふたりの身の危険を知りながら教えられないもどかしさを狙っている。それが、その後の坂の道を暴走する窮地のスリルを増幅させている。観客に何を見せるか、ショットをどう繋げてイマジネーションを刺激するかを知り尽くしたヒッチ監督の匠のモンタージュだ。ここに映画だけの模範的な表現が凝縮されている。

  1977年 3月13日  池袋文芸坐

結果的に、この作品がヒッチコック監督の遺作になってしまった。偶然かも知れないが、戦後アメリカ映画を支えた巨匠の代表者ヒッチコック監督が亡くなって、映画に対する見方も評価も変わってしまった。特に娯楽映画に関しては、1978年に公開された「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカスと「未知との遭遇」のスティーヴン・スピルバーグの活躍により、SF物やファンタジーに主力ジャンルが移行して今日まで来ている。その時代の大きな転換期が1980年頃になると思う。個人的にも、それまでクラシック映画からジャンルを問わず観てきた私も社会人となり、仕事、結婚、育児(と言って今のイクメンには遠く及ばないが)に追われて映画とは距離を置くことになる。だからここ40年の映画については、自信を持って論じることは出来ない。絶対数が少なすぎるからだが、唯一の拘りは、古い映画の良さなら語れるし、その美点を新しい映画にも見つけることが出来ることぐらいかも知れない。

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Gustav

3.0カーアクション?あります

2021年11月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

2021年11月27日
映画 #ヒッチコックの #ファミリー・プロット (1976年)鑑賞

#アルフレッド・ヒッチコック 監督の遺作

サスペンス作品なんだけど、コメディっぽい要素も散りばめられてるので、気軽に見れる作品

主演が、#カレン・ブラック となってるけど、いちばん有名だからかな?違和感あった

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とし

3.0ヒッチコック最後の作品は、小品のコメディ。

2020年5月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

Blu-rayで観賞。

ヒッチコック最後の作品。
スター俳優は出ていない。
美男も美女もいない。

二組の犯罪者カップルの物語なのだが、片方は誘拐によって身代金に宝石を奪い取る悪党で、もう片方は霊能力者のふりをして占い料金を騙し取る小悪人だ。
小悪人カップルが金持ちから人探しを依頼され、行き着いた先が悪党カップルだったという物語。
ファミリー・プロットを直訳すると「家族の筋書き」なので、家族間の人間模様にまつわるスリラーかと思いきや、「一族の墓」という意味らしい。

初観賞時の印象はつまらなかった。多分中学生くらいだった。
テレビの洋画番組で放送されるヒッチコック映画は、もっと面白かったからだ。
Blu-rayもボックスに入っていたから買っただけで、単品だったら買わなかった。
が、観かえすと細かいところが面白い。
なにより、小悪人カップルの会話の下ネタがヒッチコック作品では珍しい。
悪党カップルも、なかなかのドジぶりだ。

ヒッチコックのウィットが他の作品よりも相当多く挿入されていて、大人のコメディサスペンスになっている。

山道のカーアクションは、今観てもスリルがある。
宝石の隠し場所がユーモラスで、それがラストシーンに繋がるあたりは、サスガだ。

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kazz
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