シクロ

劇場公開日:

解説

混沌とした現代のヴェトナムを背景に、3人の主人公の心理と行動を通して、人々の心の中に共存する純真さと残酷さを描いた1編。監督・脚本は「青いパパイヤの香り」で世界的に注目されたヴェトナム出身のトラン・アン・ユン監督で、彼の長編第2作。今回も光と影、原色の効果を巧みに活かした映像美とディテール描写、要所要所に挿入されるヴェトナムの流行歌をはじめとする音楽の使い方が印象的。製作は「青いパパイヤの香り」「憎しみ」のクリストフ・ロシニョン、 撮影のブノワ・ドゥロム、音楽のトン・タ・ティエは「青いパパイヤの香り」に続いての参加。主演は数百人の候補者から選ばれた新人レ・ヴァン・ロック、「青いパパイヤの香り」のトラン・ヌー・イェン・ケー、「非情城市」「恋する惑星」の香港のトップ・スターのトニー・レオン。第52回(95年度)ヴェネチア国際映画祭グランプリ受賞。

1995年製作/128分/フランス
原題:Xich lo
配給:パイオニアLDC=メディアボックス=シネセゾン
劇場公開日:1996年8月3日

ストーリー

現代のヴェトナムのホーチミン市。シクロと呼ばれる輪タクの運転手として働く青年(レ・ヴァン・ロック)は、裏町で祖父や姉妹と暮らしている(以後、彼を〈シクロ〉と呼ぶ。)彼は〈女親方〉(グエン・ヌ・キン)からシクロを高額で借りており、あがりの何割かを収めなければならないうえ、縄張りを巡ってヤクザに絡まれることも多い。ある日、彼は商売道具のシクロをヤクザたちに盗まれる。被害を届けた〈シクロ〉は、〈女親方〉の愛人らしい暗い陰のある若いヤクザ〈詩人〉(トニー・レオン)とその一味によって、荒れ果てたビルの一室に匿われる。〈詩人〉は〈シクロ〉の〈姉〉(トラン・ヌー・イェン・ケー)に、客をとって変態行為の相手をさせて稼いでいたが、〈姉〉は〈詩人〉を愛していた。やがて、〈シクロ〉は〈詩人〉一味と行動を共にするうちに、犯罪行為の深みにはまりこんでいく。自分のシクロを盗んだヤクザを見つけ、釘の出た板切れで殴り倒して溜飲を下げたりもした。そんな時、〈姉〉が客に乱暴され、怒った〈詩人〉は客を刺し殺してしまった。これがきっかけとなったかのように、人々に次々と悲劇が訪れる。〈シクロ〉は酒とドラッグに身をまかせ、全身に青いペンキを塗り、顔にビニール袋を被ってわが身を包んだ挙げ句、ピストルで傷つく。〈詩人〉は虚無と絶望の果てに、部屋に火を放って焼死した。さらに〈女親方〉の知的障害の息子が車にはねられて死亡し、〈女親方〉はその亡骸を抱いて泣きわめく……。元の商売に戻った〈シクロ〉が、祖父と姉妹をシクロに乗せて走る市街は、何事もなかったかのようにざわめいている。見渡せば、豪華な高層ホテルとスラム街が雑居する混沌とした街並みが、彼らを取り巻いていた。

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映画レビュー

3.5白の中の異色

2016年2月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

下着もシャツも建物も、舞台であるベトナムは淡白な白だった。そんな中に女の子の赤の洋服、黄、青のペンキ、クラブの光や、ラストのカラフルな高級マンション。鮮やかな色々が途中から増え始め、今までとは違う異質な雰囲気が出来上がる。
そんな中で壊れていく男と女、母と少年。彼らが崩れていくことには大きな違和感がなく、権力の有無に関わらず、社会の流れに無力に飲み込まれていくようだった。

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あきら

3.0トニー・レオンがかっこいい!

2014年12月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

 トラン・アン・ユンの独特の色彩。トニー・レオンがとにかく退廃的でかっこいい。悪い奴(になりきれずにいる)の役やるとどうしてこんなにセクシーなのか。
 私のトニー・レオン好きを決定づけた作品。

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佐分 利信

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