サテリコン

劇場公開日:

解説

暴君ネロの寵臣ペトロニウスが描いた爛熟、頽廃のローマを、現代との酷似状況としてとらえた壮大な風刺劇。製作は「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」のアルベルト・グリマルディ、監督は「魂のジュリエッタ」のフェデリコ・フェリーニ。脚本はフェデリコ・フェリーニと「華やかな魔女たち」のベルナルディーノ・ザッポーニ、撮影は「華やかな魔女たち」のジュゼッペ・ロトゥンノ、音楽は「ロミオとジュリエット(1968)」のニーノ・ロータ、美術はルイジ・スカッチアノス、セット及び衣裳はダニロ・ドナーチ、特殊効果はアドリアーノ・ピチウッタ、編集はルッジェーロ・マストロヤンニがそれぞれ担当。出演は三人の新人マーティン・ポッター、ハイラム・ケラー、マックス・ボーン、ほかに、サルヴォ・ランドーネ、マリオ・ロマニョリ、アラン・キュニー、キャプシーヌ、タニア・ロパート、サルヴォ・ランドーネなど。

1970年製作/128分/イタリア
原題:Satyricon
配給:ユナイト
劇場公開日:1970年9月12日

ストーリー

紀元前のローマ。世は頽廃の極に達し、人々はただ快楽を求め、快楽に溺れていた。学生のエンコルピオ(M・ポター)とアシルト(H・ケラー)も、獣のように快楽を求め、冒険に身を投げ出していた。二人は友人であり、美少年ジトン(M・ボーン)をめぐっての恋仇でもあった。そして、アシルトにジトンを奪われ絶望したエンコルピオは、酒池肉林の宴であるトリマルキオ(M・ロマニョリ)の宴会にでかけた。そこには、このローマ市民の頽廃の代表的な光景が、ぶかっこうに展開され、トリマルキオの淫蕩な妻フォルチュナタ(M・ノエル)も、女友達と戯れていた。その狂乱の中からエンコルピオは、老詩人エモルポ(S・ランドーネ)を救い、二人は知人となった。翌朝、エンコルピオは、アシルトやジトンとともに、少年狩りにひっかかり、貴族リーカ(A・キュニー)の軍船に運ばれた。リーカはエンコルピオを愛し、彼と結婚の儀式をあげた。この頃、若き皇帝(T・ロバート)が暗殺され、粛清軍隊が貴族を襲い、リーカも殺された。それを彼の寵姫トリファエナ(キャプシーヌ)は、冷然とみていた。エンコルピオとアシルトはやがて釈放された。爛熟したローマは、ようやくその崩壊のきしみをはじめたが、二人の学生には関係なかった。彼等は、色情狂の夫人を慰め、金儲けの為、生神様を誘拐したりした。そうした時、エンコルピオは突然闘技に狩り出され、命は助かったものの、精魂つきた彼は性的不能に陥ってしまった。彼を侮蔑の淵から救い出したのは、アシルトと、今は富を握ったエモルポであった。女魔術師エノテアによって、エンコルピオは回復したが、その時には、アシルトは盗賊に襲われ、殺されていた。エジブトへ船出するというエモルポをエンコルピオが訪れると彼もまた死んでしまい、遺書に財産相続を願うものは、我が屍肉を食え、と書いてあった。若い船長と共に船出しながら、人間が人間の肉をくらう異様な光景をみていたエンコルピオは、静かに笑い出し、やがてそれは、すべてを否と諾の呪縛からときはなつような、壮大な笑いにかわっていった。

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映画レビュー

3.0古代ローマを学べる教育的映画(大嘘)

2023年8月15日
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興奮

知的

難しい

古代ローマ帝国において暴君として知られるネロ・クラウディウスに仕えたペトロニウス(「クォ・ヴァディス」では架空の人物である主人公の叔父と設定)が書いたとされる当時の堕落したローマを描いた風刺小説「サテュリコン」をイタリアを代表する「映像の魔術師」フェデリコ・フェリーニが映画化した作品。当時の文化を学べる学生にもオススメな教育的映画!!
………というのは大嘘で、後期フェリーニの特徴である奇抜な世界観をエログロで濃厚に味付けした作品である。後に実写映画版「ベルサイユのばら」にてジェローデル伯爵を演じる当時新人のマーティン・ポッターの主人公エンコルピオ(エンコルピウス)、彼が愛する少年奴隷ジトーネ(ギトン)、ハイラム・ケラーがギラギラした目と出っ歯気味の歯で魅せる悪友アシルト(アスキュリトス)の3人が古代ローマ世界を探求する。サテュリコンは完全な形で現存していない。その為かほぼオムニバス形式となっている。古典ゆえにセリフも芝居調。建物や衣装、ヘアメイクなど時代考証がどこまで正確かは分からないが、後期においてチネチッタでのセット撮影に拘った監督らしい「なんだかそれっぽい」奇想天外な世界を醸し出す。また日本人としては、サテュリコンの有名な場面である「トリマルキオの饗宴」に登場する無教養な成金の解放奴隷トリマルキオが開く生前葬のシーンで般若心経が流れていることにも注目したい。当然ネイティブによる読経ではないので不自然な響きではあるのだが、それがかえって不思議で奇抜、そして異様な画面にマッチしているのだ。
時代設定は2000年以上昔の話ではあるが、挿入される兵士と未亡人の逸話や途中細身のエンコルピオに"妻"として嫁いでしまう逞しい倒錯的な将軍(古代ローマでは同性愛は一般的だったが年上や身分の高い者が目下の者に対して"受け"に回ることは恥とされた)など現代にも通ずる人間の滑稽さが描かれている。
ただ、スティーブン・スピルバーグに対するジョン・ウィリアムズ、宮崎駿に対する久石譲、ティム・バートンに対するダニー・エルフマン、アルフレッド・ヒッチコックに対するバーナード・ハーマンのようにその音楽でフェリーニとの名コンビを演じてきたニーノ・ロータ(「ゴッドファーザー」が有名)の音楽が今作ではあまり魅力を感じず、その点で減点とした。
いい構成の文章ではないが、胡乱な世界に引っ張られたと思ってご容赦願う(鑑賞するのは3回目)。

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ハッカ飴1/2

4.0古代ローマの退廃的な社会を旅する若者を現代に共鳴させたフェリーニ監督のニューシネマ

2022年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「アマルコルド」「道」と観てきたフェリーニ作品の、今度はそれらとは全く違う時代と内容に当惑しながらも、この紀元前のローマを舞台にした学生が体験する放浪の旅に圧倒されながら観ることになった。主人公エンコルピオが予想もしない事件や出来事に遭遇するストーリーには、一貫したものはない。だから論理的な解釈は浮かばないし、物語というより動く古代絵巻の絵画を鑑賞する面白さに終始している。ここにあるのは、酒池肉林と背徳的な性に象徴される古代ローマの退廃的で享楽的な人間の赤裸々な姿。それを映像に再現したフェリーニ監督独自の世界だ。建造物や奴隷船の巨大セット、貴族から奴隷までの色鮮やかな衣装、そして様々な人たちを登場させる背景のスケール感などが、フェリーニ監督の豊かなイマジネーションによって見事に創作されている。見世物映画として、個性的かつ贅沢な巨匠の作品。

それでも、この映画のフェリーニ監督には、アメリカ・ニューシネマに対抗したエネルギーを感じた。学生運動が激しい時代に偶然制作されたからかも知れないが、若者を主人公にした社会派映画を古代ローマの時代で気兼ねなく自由自在に描いたようなフェリーニ監督の奔放さと若さがある。その感性は、若い映画作家に負けていない。この点で、この作品はフェリーニ映画の中で特別な価値をもっていると思う。

  1977年 5月24日  池袋文芸坐

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Gustav

3.0撮影大変だったろうな

2020年3月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

頽廃期のローマを描くフェリーニ監督作。

奔放なイマジネーションの洪水。熟れた(または熟れ過ぎて腐った)果実をズラリと揃えて見せつけられた気分。異型への愛と「お前も一員だ」というメッセージ。

何と言っても美術が圧倒的。意味などわからなくともその画面を見てればいい。猥雑でプリミティブな表現の連続。世界の宗教的な音をモチーフにしたであろう音響も素晴らしい。

エピソードの積み重ね&アンチクライマックス幕切れ。見終わった後しばし呆然とした。

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散歩男

4.0キリスト教の道徳観を押し付けられる前のローマと道徳観の薄れた現代

2020年1月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

キリスト教の道徳観(まあ、これも怪しいもんだが)が席巻する前、人間の欲望が露になっていたローマの酒池肉林ぶりをフェリーニらしい壮大なスケールでイマジネーション豊かに描いた世界。こういう世界を良しとするか眉をしかめるかは個人の自由でしょう。だから、フェリーニの意図を探るよりこの映画を観て自分なりにどう感じるかの方が大事だと思うけど…

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もーさん
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