劇場公開日 1998年7月11日

「僕らは、「僕らのゴジラ」を見たいんだ。」GODZILLA ゴジラ(1998) まじさんさんの映画レビュー(感想・評価)

0.5僕らは、「僕らのゴジラ」を見たいんだ。

2014年5月13日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

さすがはローランド・エメリッヒ!
煽りのうまさが素晴らしい!冒頭のシーンには引き込まれる。『ID4』でも見せた、対象を見せずにそれを見る人々の顔で表現する手法は、スピルバーグ作品へのオマージュを感じるが、更に巨大感を出す為、巨大な円盤の影に街が覆われる姿を見せた。『GODZILLA』でも、漁師がうわ言のように「ゴジラ…ゴジラ…』と呟くシーンから始まり、N.Y.に上陸するまでの演出は素晴らしい。桟橋の魚釣りは勿論、タトプロスが調査に呼ばれて、「ここで何を調査するんだ?」と叫んだ後、カメラが引いて、「何か」の足跡の中にいた事がわかるシーンは最高だ!ゴジラの大きさを知る我々が、思わずニヤリとさせられる場面だ。そして、足音が鳴る度に、人や車が揺れる!近づく足音。高鳴る期待!そして、大きな音を上げながらビルが崩れて現れたのは…!!

あれ…えっと…どちら様?

オイラの知らない怪獣が現れたwww

そうか!きっと「僕らのゴジラ」がコイツを倒しに現れるんだね!
きっと、そうに違いない!

だって「僕らのゴジラ」は俊敏にミサイルを避けたりせず、当たっても「痛ェ!」くらいしか効かないし、ビルの影に隠れたりする卑怯な奴じゃないもん!ガム噛んでりゃアメリカ人かも知れないが、冷凍マグロ喰ってるヤツなんか「僕らのゴジラ」じゃないやい!
だがメリケンの人々は、ゴジラを騙る別の生き物をゴジラと呼んだ。いや、違うんだ!アレはただのイグアナだ!

だが、オイラの声も虚しく、遂に「僕らのゴジラ」は現れず、「こんなの事もあろうかと思った科学者が作った凄いヤツ」の登場もないまま、イグアナは呆気なく米軍の平凡な武器で退治された。

巨大生物が出てくるまでの演出が良いだけに、出て来てからのガッカリ感は、大きなショックを受けた。
ヤツらは、せいぜいトロールやドラゴンくらいのモンだと思っているのだろうが、それらは怪獣ではない。誰かの努力や軍隊で倒せるような奴らは、ただの害獣に過ぎない。
よって、この映画は怪獣映画の風上にも置けない。ただの害獣映画なのである。

後で知った話だが、エメリッヒは撮影前に一度来日し、東宝に「これが我々のGODZILLAデース!」と、あのデザインを見せていたらしい。東宝のスタッフは、唖然として言葉を失ったという。だが、エメリッヒは「何か気になる所があったら言って下サーイ。東宝サンが納得しないデザインはダメねー」と敬意を表したというのだ。
そこで、東宝から出した変更点は、たったの二つ。背ビレを二列から三列にする事と、逆関節だった脚を直す事を要求した。
おいおい、突っ込む所、そこじゃないでしょ!そこは東宝の意地を見せて欲しかった。生物学がどうこう言う奴にはゴジラの看板はやれぬ!くらいの事は言ってくれよぅ!
驚く事にエメリッヒ側は、東宝の要求を飲んで、その二点はしっかり直している。あのデザインで逆関節は、かなりのこだわりがあっての事だと思うのだが、彼らは東宝サンが言うならと、ちゃんとわ直したのだ。
だから、シルエットを直せとか、直立させろとか要求していたら、彼らはそれを直したに違いないのだ。
つまり、あのイグアナをゴジラと認めた責任は、当時アレを看過した東宝にあったのだ!

それから6年後、我々は、東宝製作の『ゴジラ FINAL WARS』の中で「僕らのゴジラ」が、このイグアナをひねり倒す姿を目撃する事になった…。
X星人を演じる北村一輝が「やっぱり、マグロばっかり喰ってるヤツはダメだな」と一蹴するセリフが忘れられない…。

まじさん
近大さんのコメント
2014年5月13日

突然失礼します。

僕もゴジラが大好きなので、大変面白くレビューを読ませて頂きました。
確かに“僕らのゴジラ”が現れて、エメリッヒのペットのイグアナをやっつけて欲しかったですね。
後に北村龍平が「ファイナル・ウォーズ」で描いていましたが。

東宝がほんの数カ所の注文であのイグアナにOK出したのは、せっかく本格的に始動したゴジラのハリウッド企画をボツにしたくなかったからというのを聞いた事あります。
田中友幸氏が生きておられたら、絶対激怒していたでしょうに。

今回の新ハリウッド版は日本版へのオマージュを感じ、期待しています。

突然失礼しました。

近大