青い山 本当らしくない本当の話

劇場公開日:

解説

老朽化した役所を舞台に、どこの国でも同じ官僚主義を痛烈に笑い飛ばした諷刺コメディ。監督は「ピロスマニ」のゲオルギー・シェンゲラーヤ監督の実兄で、伝統に根ざしたユーモアで悲劇と喜劇が渾然一体となったこのジャンルの作品を次々に手掛け、グルジア映画の主要な潮流の一つになったエリダル・シェンゲラーヤで、これが本邦初紹介作。ソ連の“崩壊”に先立つ5年前に発表され、セルゲイ・パラジャーノフ監督「スラム砦の伝説」(84)、テンギス・アブラーゼ監督『ざんげ』(86、日本未公開)と並び、現代グルジア映画の世界的な評価の火付け役となった重要な作品。脚本はグルジアの著名な小説家レゾ・チェイシヴィリのオリジナル。撮影はレヴァン・パータシヴィリ、音楽はギヤ・カンチェリ。出演はオタール・イオセリアーニ監督「落葉」に主演したラマーズ・ギオルゴビアーニ、テンギズ・アブラーゼ監督「希望の樹」のセシリヤ・タカイシヴィリほか。84年全ソ映画祭グランブリ。

1984年製作/97分/グルジア
原題:Голубне Горы Или Непобня Истрия The Blue Mountain or an Incredible Story
配給:日本海映画
劇場公開日:1995年3月25日

ストーリー

駆け出しの作家ソソ(ラマーズ・ギオルゴビアーニ)は、書き上げたばかりの小説『青い山―天山』の出版認可を得ようと、管轄の役所を訪ねた。応対してくれた人々は皆親切で、すぐにでも作品を読んでくれそうだった。ところが、それは見かけだけで、この役所では誰もほとんど仕事をしていなかった。元戦車兵の編集者ワソ老人は今にも自分の頭上に落ちてきそうな風景画を取り外せ、外さないで、管理人のグリーシャと口論が耐えない。ワソの美人秘書ベラは職場で子育て。彼女の夫は嫉妬深く、ソソが話しかけただけでも凄い形相でにらむ。編集委員のイロジオンは休暇が取れないと言いながら自室で食事ばかり作っているし、シュクリは海外出張を夢見て朝から晩までフランス語のレッスンを繰り返している。ほかの男たちはチェスに夢中で、女たちは編み物や縫い物で時間を潰している。そして肝心の所長は会議や宴会に追われて自分の部屋にいたためしがない。秋が過ぎ、冬が過ぎ、春になっても『青い山』の件は少しも進展しない。所長は相変わらず多忙で、誰も作品を読んだ様子はなく、彼の落胆は日増しに濃くなる。一方、その頃、役所では奇妙にも建物の天井や壁にひび割れができ、しっくいがどんどん剥がれ落ちていた。隣の広場のバイク遊びの振動が原因だろうと、所内で実際にオートバイのエンジンをふかしてみるが、どうもはっきりしない。なぜか役所に採用された鉱山測量士と名乗る老人が調査に乗り出し、あげくの果てはソソも駆り出される。夏が来て、ソソの出版の件で、ついに緊急会議が開かれた。だが、集まった委員たちは誰一人この小説を読んでいなかったばかりか、大事なコピーを全て紛失したことも判明。折しも人気俳優たちが出席するパーティーが開かれ、結局、あいまいなまま会議は打ち切られる。そして宴たけなわというところで、1年がかりの面倒な手続きの果てに会議室に移されていた風景画が、ワソ老人の頭に命中。幸いにも彼はすぐ気を取り戻したが、続いて天井が落ちてきた。ついには建物全体が崩れ始め、人々は崩壊する役所から逃げ出すのだった。

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