お父さんのバックドロップ

劇場公開日:

解説

悪役レスラーとして弱小プロレス団体を引っ張る父親と、そんな父の姿がどうしても好きになれない息子が衝突を繰り返しながらも、やがて本当の絆を結ぶまでを描く。中島らもの同名短編小説を映画化した、ハートウォーミングな父子ドラマ。主演は宇梶剛士、共演に人気子役の神木隆之介。監督はこれが劇場映画デビューとなる李闘士男。脚本を、「OUT」「刑務所の中」の鄭義信が手がける。

2004年製作/98分/日本
配給:シネカノン
劇場公開日:2004年10月9日

ストーリー

洗濯物がはためくアパート「幸荘」に、「新世界プロレス」の中年プロレスラー下田牛之助(宇梶剛士)と小学生の息子・一雄(神木隆之介)が引っ越してくる。母親が他界し、牛之助の父・松之助(南方英二)と一緒の3人暮らしをすることになったのだ。仲間のレスラーたちの手伝いによって着々と作業は終わり、その後は同じアパートに住む牛之助の幼なじみ・英恵(南果歩)が営む焼肉屋で引っ越し祝いが行われた。盛り上がる大人たちを尻目に、一雄は終始シラけた顔をしている。プロレスが大嫌いな一雄は牛之助の職業を恥ずかしく思い、なかなか父親に心を開けないでいるのだ。大人顔負けの手際のよさで焼肉屋を手伝う英恵の息子・哲夫(田中優貴)とは同級生。さっそく友達になり、父親がプロレスラーであることをクラスメイトには内緒にしてほしいという”男の約束”を取り交わす。牛之助たち「新世界プロレス」の試合が行われる、どこか郊外のがらんとしたスーパー。牛之助はマネージャーから、団体の人気を盛り返すためにヒール(悪役)に転向してくれと懇願されるが、それを拒否。客席からのまばらな拍手の中、牛之助が中年とは思えぬ屈強な体でリングに現れ、次々とパワフルにワザを決めていく。牛之助の巡業中、松之助が寝静まったころ、一雄が決まって観る思い出のビデオテープがあった。深夜にひとりぼっちで、大好きな母親の懐かしい笑顔を見ながら涙ぐむ一雄。一雄は母親の死に際に、試合のために立ち会えなかった牛之助を今でも許せないでいるのだった。一方、牛之助は仲間のレスラーをリストラしないことを条件にヒールに転向。息子との溝がますます深くなっていることを感じた牛之助は一雄をキャッチボールに誘うが、「無理にお父さんしなくていいよ! 僕のことはほっといてくれよ!」と言ってしまう。また一雄のクラスでも父親がプロレスラーであることがバレて話題になる。久々に牛之助の試合の模様がテレビ放映されることになり松之助が録画をするが、なんとそのテープは一雄が大切にしている母親のビデオテープ。「お母さんより僕よりプロレスが好きなんでしょ!?」と一雄に責められながらも、どうしても尊敬してもらえる父親になりたい。そう考えた牛之助にできることは、やっぱりプロレスしかなかった。「分かって欲しいやないか、お父さんはお父さんで一生懸命頑張ってるって!」。そして息子に自分が本気で戦う姿をみせるために、世界空手チャンピオンのロベルト・カーマンに挑戦状を叩きつけたのだった!

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0祖父、父、息子と親子3代に渡る笑いと感動のバトル、98分1本勝負!

2021年7月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 下田牛之助というネーミング自体が上田馬之助のパロディになっているので、他にも面白い名前がないかとあちこちに目を凝らしてみて・・・「あった、あった、丹下段平がいたよ!」と子どものように喜んでしまった(黒板の日直の名前も・・・見逃しました)。時代設定も1980年。プロレスの世界も全日本から新日本へと人気が移りつつあった時代で、政治の世界に喩えると二大政党論のようなものだった。バックドロップというタイトルも正統派ストロングスタイルレスラーの代表格である技だったように思う。

 ストーリーも親子愛をテーマにしたスポーツものであり、『チャンプ』や『ロッキー』のように80年の辺りはそんな映画が多かった。ハリウッドではそうした父と息子の約束、尊敬できる父親を表現した映画はかなり多いが、日本映画では少ないと思う。家族の愛がなくなってきているかのような事件が多い現代で、こうした「父親=ヒーロー」映画は貴重だ!その他にも息子の学校でイジメに遭う様子や友情を取り戻す光景も良かった。

【2005年1月映画館にて】

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kossy

5.0大阪だからこそ生まれゆくリングの絆

2012年8月17日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館、DVD/BD

泣ける

笑える

幸せ

見事、幕を閉じたロンドン五輪でメダル旋風を巻き起こしたレスリングつながりの映画をと、棚からDVD引っ張り出して、久々に観たけど、やっぱりオモロいなぁ〜。

劇場で観たのが7年も前やと思えないぐらい見応えが色褪せてない。

まあ、私が敬愛する物書き・天下の中島らも先生なんやからつまらんワケが無い。
(急死する直前の先生本人もウサン臭い床屋のおっさん役でゲスト出演している)

アルコール・薬物依存症、躁鬱病に苦しみながらも、深い人間観察とさり気なく温かい笑いで綴った文芸作品同様、最後まで心を鷲掴みにされ続けた。

中年レスラーのしょっぱいファイトぶりや大阪の下町人情etc.の笑いの部分、
必死に息子を振り向かせようとする父親のプライドや死んだ母親を未だ愛するがゆえに父親へ反発する息子の複雑な胸中etc.の泣かせる部分、
両方とも出しゃばらず、観る者を安心してストーリーへ導き、なおかつ大事な場面では確実にオトしてくれる。

特に、牛之助のオトンを演じているチャンバラトリオの南方英二師匠は、泣きと笑いの両極で味わい深い存在感を放つ。

異種格闘技戦のゴング前、意を決した牛之助がリング上で叫んだメッセージに、みんながジ〜〜ンとしている最中、すかさず投げかける師匠の呟きの絶妙なタイミングの素晴らしさ。

脱帽の一言である。

生ぬるい空気に浸かりっぱなしの静岡人が逆立ちしたって生まれてこない発想だ。

8年経た現在、師匠も先生も残念ながら鬼籍に入ってしまった。

此処にはもういない…。

しかし、入れ替わって走る神木隆之介の瑞々しい活躍が見事に師匠達のバトンを受け取っているみたいで感慨深い。

肝心の試合がおもいっきり『ロッキー』になっていたのが、オイオイって思ったけど、吉本新喜劇とは違う難波のエネルギーに圧倒される。

拍手を送り続けながら最後に短歌を一首

『向かう父 ぶつける背中の しょっぱさよ リングに叫ぶ セメントの愛』
by全竜

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全竜
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