KT

劇場公開日:

解説

73年に実際に起こった金大中事件の真実に迫ったポリティカル・サスペンス。監督は「新・仁義なき戦い」の阪本順治。中薗英助による原作を基に、「皆月」の荒井晴彦が脚色。撮影を「ELECTRIC DRAGON 80000V」の笠松則通が担当している。主演は、「新・仁義なき戦い」の佐藤浩市と「太白山脈」のキム・ガプス。第76回『キネマ旬報』ベスト・テン第3位、助演男優賞(香川照之)受賞、第52回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品、第24回ヨコハマ映画祭2002年日本映画第4位、日本芸術文化振興会映画芸術振興事業、日韓合作作品。

2002年製作/138分/日本・韓国合作
配給:シネカノン
劇場公開日:2002年5月3日

ストーリー

73年6月、朴軍事政権下の韓国から亡命し、日本で故国民主化の為に精力的な活動をしていた金大中を拉致暗殺せよとの至上命令を受けた駐日韓国大使館一等書記官・金車雲らは、いよいよそれを実行に移そうとしていた。名付けてKT作戦。その作戦に、朴大統領と陸軍士官学校時代から繋がりを持つ自衛隊陸上幕僚二部部長・塚田によって、民間興信所を開設しKCIA(韓国中央情報部)にサポートするよう命じられた陸幕二部所属の富田は、様々な手を使って金大中の行方を追うが、その度に、大使館内部の密通者に偽の情報を掴まされてしまう。そんな中、彼は金大中の取材に成功していた夕刊トーキョーの記者・神川に接近し、遂に金大中が8月9日に自民党で講演を行うとの情報を入手。報を受けた金車雲は、それを機に作戦を実行しようとする。ところが、またしてもその計画が漏洩し、神川を通して週刊誌にスクープされてしまった。この事態に、KCIAは金大中が講演の前日に日本滞在中の民主統一党党首・梁宇東を訪ねる機会を狙って、強行手段に打って出ることに。そしてそこには、自衛隊関与の疑惑を恐れた上官から一切手を引くように言い渡されながら、想いを寄せる韓国人女性・李政美の手術費用を協力費として金車雲から受け取った富田の姿があった。予想外の展開があったものの、金大中拉致に成功する金車雲たち。彼らは、用意してあった船で故国へと走り出すが、アメリカの要請を受けた自衛隊によって計画は阻止されてしまうのだった。その後、上官から退官を命じられた富田は、金車雲を心配して全てを神川に告白。李政美と田舎で暮らすそうとするが、一発の銃弾によって命を奪われる。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

監督
脚本協力
丸内敏治
西田直子
脚色
荒井晴彦
原作
中薗英助
ゼネラルプロデューサー
李鳳宇
プロデューサー
椎井友紀子
撮影
笠松則通
美術
原田満生
装飾
大光寺康
音楽監督
布袋寅泰
録音
橋本文雄
音響効果
伊藤進一
照明
松隈信一
編集
深野俊英
衣裳
岩崎文男
アソシエイト・プロデューサー
石原仁美
製作担当
鈴木勇
助監督
杉山泰一
スクリプター
今村治子
スチール
佐藤ヒデキ
撮影効果
上野隆治
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映画レビュー

4.0期待して観た通り

2022年1月19日
Androidアプリから投稿

ずっと観たかった作品ですが、上映機会は少し前のフィルメックスで見逃した。期待どおりの骨太な政治サスペンス。日本でも少しずつ政治映画が作られているが、2002年製作とはかなり早い。それも、細かい歴史というより、金大中事件という大ネタ。韓国との緊張感と癒着。大手メディアや政党名をバンバン実名で出す、気骨も素晴らしい。主要キャラのバラエティーも良い。

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タカシ

3.0日本製韓国映画

2021年10月6日
iPhoneアプリから投稿

いい意味で韓国映画みたいな日本映画。
わたくし「人類資金」を観て以来、軽く阪本順治恐怖症でしたが、今回は問題なく生還できました。
普通に面白かった。知ってる顔がみんな若いなー。
原田芳雄を筆頭に、佐藤浩一、柄本明、香川照之、麿赤兒など豪華キャスト目白押し。
鶴の一声を受ける官房長官が円谷作品でお馴染み佐原健二。音楽はなぜか布袋寅泰。

金大中誘拐事件の裏にあるKCIAと自衛官の関係を描いた影の日韓史。
三島由紀夫の自決事件から始まるのも、観ていくうちにだんだん理由がわかってくる。

実際のところは原作も読んでいないしわからないけど、少なくともこうすれば日本でもポリティカルなサスペンスが作れる、というレアな成功例ではある。
全体に地味だし、事件を知らない人には話が見えない危険性はあるけど、今ほどCGが使えない2000年代初頭に、車やロケ場所の工夫でちゃんと70年代の空気を出しているのはすごい。

佐藤浩一演じる自衛官は、歴史の中で自分の役割を持っているKCIAのキムをうらやましく思っていたんだろうなぁ。
それはたぶん自身のアイデンティティを求めて無邪気にリスクに近づく筒井道隆と大差なく、その道のプロではあるとはいえたいへん危なっかしい。
衣食足りて礼を知る、ならぬ意味を欲しがる彼の悩みはしかし、キムからすれば贅沢な悩みでしかないはず。

後半になるにつれ、互いにない物ねだりしてる男同士のブロマンスのようになっていくけど、韓国映画ほど前面に押し出してこないし、とくに序盤ではそのラインが見えづらかった。

代わりに強烈な存在感を示す原田芳雄はモロ戦後日本の象徴的なキャラクターで、その名も神川昭和。
現実にいたらそんなカッコいいわけないと思うけど、左も右もなくただ生きてること自体に意味があるんだと公言して憚らない飄々としたノンポリ。
でもそれも凄惨な歴史を目の当たりにした記憶があるからこそというパラドックス。

佐藤浩一みたいな憂国保守は絶滅危惧種というか、20年後の今、もはや実在しないのかも知れない。
そう考えるとますます日本の観客にとって誰得なんだ感は拭えない。

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ipxqi

3.5音楽とタイトル以外は悪くない

2015年4月6日
iPhoneアプリから投稿

KCIAによる日本での金大中暗殺計画にからめて自衛隊の矛盾やら日韓の個々人レベルでの愛憎やらを実直に描こうとしていることは伝わってきて好感が持てる。こんな策謀があったことすら知らなかったから、その意味でも面白かった。個人的に阪本順治監督作品は当たり外れがあんるだけど、これは悪くない方の阪本順治だったかな。

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lylyco

3.5派手さを排除した堅実な演出に好感が持てた

2014年3月8日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

難しい

総合70点 ( ストーリー:70点|キャスト:70点|演出:80点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )

 実際に日本で起きて世間を震撼させた大事件を基に、暗殺や秘密工作や国際的陰謀が描かれる。この手の話だと邦画は何かと無意味な派手さや大袈裟な演出をして迫力をだそうとしてしまいがちで、その結果として却って質感を下げてしまう傾向があるが、この作品では現実的な堅い演出で諜報戦や工作員を描いていて好感が持てた。設定や物語をもう少ししっかりしてくれればさらに良かった。

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