落葉樹

劇場公開日:

解説

老作家が少年時代を回想する中で、亡き母への追憶と思慕が描かれる。原作・脚本・監督は「地平線」の新藤兼人、撮影は三宅義行がそれぞれ担当。

1986年製作/105分/日本
原題:Tree without Leaves
配給:近代映画協会
劇場公開日:1986年11月15日

ストーリー

雪の降る菱科高原、初老の男が過ぎし日の少年だった頃を想い出している。ある年の正月、餅つきは一家の年中行事だった。少年は8歳、二人の姉が17と15、杵をふり下す兄は20歳。父は大黒さまのように坐り煙草を喫っている。少年はいつも母にくっついていた。夏、母と少年はご馳走を持って、広島の軍隊にいる兄を訪ねる。少年にとって母と一緒の帰り道が楽しみだった。ある時、父が請判をしたため倒産がさけられなくなった。善人の父はご先祖様に申し訳ないと頑として土地や山を手離そうとしない。我慢のできなくなった兄は、父から力づくで実印を取り上げようとして、母や姉の猛反対にあい家出してしまう。そんな時、毎年の楽しみである陰暦6月17日、厳島の管弦祭がやって来た。土産物店で、少年は欲しい玩具を買ってもらえないと地面にひっくり返って暴れ、なだめる母を殴り続けた。長姉が過分な結納金を貰ってアメリカ移民に嫁ぐことになった。警官になった兄も帰り見送った。母が家があるうちにと兄の婚礼をあげさせた。豪勢な屋敷での最後の盛大な婚礼だった。長姉の犠牲も屋台骨を支えることはできなかった。田畑も山も売り渡し、家を手放す日も近かった。次姉も広島で看護婦として働いていた。とうとう家を手放す日が来た。屋根の瓦を運び出すかけ声を聞きたくないと、母は蔵の中に閉じ込もる。父は相変らず泰然自若として煙草を喫っていた。唯一つ残された蔵の中に、畳を敷いて一家の生活が始まった。残った桐箱には祖父の灘波一甫流免許皆伝がおさめられていた。祖父の想い出を懐かしむように母はそれを少年に見せた。母は心労のため遂に病に倒れた。夜半に起こされた少年は、母の臨終を見守った。--初老の男は、やがて小屋の中へ入っていくが、管弦祭の夜のこと、母を殴ったことを想い出した。「お母さん」と思わず叫ぶ老人の声がふるえていた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0広島のある旧家の没落を亡き母への思慕を込めて描く

2021年8月5日
PCから投稿

 新藤兼人自選10本の中の1本。登場人物がメリーゴーランドに乗ってるシーンがオープニングになっている。

 昭和初期、父(財津)、母(乙羽)と兄、2人の姉と幸せに暮らしていた家族だったが、他人の借金の保証人になったばかりに借金まみれとなった。“腰ひょうたん”と呼ばれていた少年も金のない母親にねだったりして、悔恨の念に胸を痛める初老の作家(小林)。長姉(園みどり)はアメリカ移民の男に嫁ぎ、日本へ帰ることはなかった。兄は軍隊を辞め、警察官となっていた。やがて次姉も嫁ぎ、家を売ることになったが、先祖の土地を離れられないと、残った頑固に居座る父。そして、母も亡くなるのだった・・・

 餅つき、獅子舞、魚獲り、海水浴、楽しい想い出がいっぱいある中、映像的にはヌードがところどころ見られる。乙羽信子の乳にしゃぶりつく少年。一緒に風呂に入ると、彼のちんちんにキスをするシーンは印象的だ。中学生くらいの次姉(若葉しをり)のヌードもある・・・

 「はるさー、ごはんじゃけ。帰りんさい」と何度も流れる台詞が印象的。

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kossy
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