初恋・地獄篇

劇場公開日:

解説

寺山修司と、「アンデスの花嫁」の羽仁進が共同でオリジナル・シナリオを執筆、羽仁進が監督した青春もの。撮影は「樹氷のよろめき」の奥村祐治。

1968年製作/108分/日本
配給:日本ATG
劇場公開日:1968年5月25日

ストーリー

シュンが七歳の時、父が死に、母は再婚した。教護院に入ったシュンは間もなく、彫金師の家にひき取られ、仕事の手伝いをしながら成長した。孤独なシュンはある日、ひとりの少女ナナミと知り合った。ナナミは、集団就職で上京した後、いまヌードモデルをやっている。二人は一軒の安ホテルで抱きあった。だが初めての経験でシュンは当惑するばかりであった。ナナミはそんなシュンに優しかったが、二人は不成功のままホテルを出た。ある日、シュンは公園で幼ない女の子に会った。シュンはその少女の柔かい皮膚の感覚に、幼ない日の郷愁を誘われたが、物蔭で二人を見ていた男に変態扱いされてしまった。精神病院へ連れていかれたシュンは、医師の暗示によって過去を想い出したが、それは嫌な記憶ばかりだった。シュンはナナミのいるヌードスタジオを訪ねた。そしてナナミにはもう一つの生活があるのを知った。女と女が互いに肢体をからませ、闘い合う女闘美がそれだった。窓から覗き見たシュンは驚いたが、見張りにつまみ出されてしまった。あくる日、シュンはナナミが中年男と連れ立っているのを見て、男を殴ろうとしたが、ナナミヘの歪んだ愛について語る男をシュンは殴れなかった。海辺での撮影会の日、ナナミはその男と、妻と小さな子供たちのピクニック姿を見て、顔が青ざめていくのを覚えた。一方、そのころシュンは自室で孤独な夢を結び、妄想を描いていた。ある高校の文化祭の日、ナナミは、友人の高校生代数君、シュンとともに見学に行った。代数君は八ミリ映画「初恋の記録」を映写した。一度も口を聞いたことのない少女への一方的な恋を綴ったその映画を、シュンとナナミはある感動とともに受けとめた。それは一人の少年が自らの存在を探っていく記録だったのだから。二人は、翌日、ホテルで会う約束をして別れた。その日、シュンはナナミが待っているホテルへ向う途中、やくざに追われて逃げた。そして自動車にはねとばされてしまったのだった。

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映画レビュー

3.5ヌードモデルと心を閉ざした若者の、壊れ易くして実らなかった初恋物語の虚しさ

2021年12月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

羽仁進監督作品の初見学。この一作だけでは、羽仁監督の演出の特徴を述べることは出来ない。ドキュメンタリー映画の演出タッチは窺えるが、それ以上の個性は感じられなかった。関心を抱いたのは、この60年代後半の時代を背景とした青春映画の暗さである。個人的な子供時代に経験した世の中の雰囲気は、もっと明るく未来に対して楽観的だったはずだが、日本映画界の斜陽とリンクするかのように映画の内容も暗い。強いて挙げれば、大人と子供の間にあった価値観の相違が戦後の高度成長と共に広がり、安保問題と反戦の主張を告発した学生運動の社会的なムーブメントによる焦燥感の深刻さだろうか。若者の価値観がひとりでに大きな社会批判となり大人社会と対立して、その闘争の激しさが社会不安を煽っていた。しかし、その状況下で傍観していただけの若者がいたことも、また事実である。
この映画の主人公は高校を卒業後大学には進学せず、家業を継いで地道に生活する若者だ。だから授業をボイコットしてまで抵抗した学生運動の背景は描かれていない。それなのに暗いイメージにつながるのは、彼の中に人生の目標がなく、あくまで生きて行くだけの為に家業の仕事がある。そんな主人公の若者らしい欲望は、女性との性交渉に直結する。街で知り合ったヌードモデルの女性と連れ込み宿へいって行為に及ぶが、上手く行かない。と言うのも、彼の家庭環境の特殊性が大きく影響している。育ての両親がいて、その父親が同性愛を強いる少年期があったためである。映画は、そんな孤立した若者が公園で知り合った少女に性的な興味を抱く倒錯した世界まで描いている。この男女のセックスに到達していない若者の、欲望が彷徨う未成熟さを表現する寺山修司脚本の独特な世界観が、作品全体のイメージを構成している。それに対比させて、ヌードモデルに関わる好色な大人たちのマニアックな写真撮影を描く。理解に苦しむのは、少女役に羽仁監督が実の娘を使っていること。悪戯をされる少女にまだ性的欲求を知らない実子の配役は、表現者としての配慮なのかもしれないが、親としては大胆であろう。ラストはタイトルの地獄編を象徴するエンディングで終わり、悲劇的な若者の青春残酷劇として完結する。打ち砕かれた性の欲求の彷徨と、それでも初恋の体験に生きる意味を求めた若者の虚しさ。

  1980年 4月10日  フィルムセンター

ドラマのストーリーとは直接関係ないが、文化祭での8ミリ映画の不出来を言い訳する発表場面が可笑しかった。自分も高校生の頃から8ミリ映画を制作していたが、どうしても編集で誤魔化せない駄目なところを承知で使わざるを得ないカットがあった経験がある。素人ならではのあるあるエピソード。この登場人物には、甚く親近感を抱いてしまった。

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Gustav

3.0暗い過去

2018年11月22日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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kossy

3.0寺山修司らしい設定

2014年11月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

単純

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タテスジコ

3.5まさにタイトル通り

2011年5月22日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

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yuki
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