瀬降り物語

劇場公開日:

解説

かつて関東以西の地方に多くいた、一般社会の人々と隔絶して山野を漂泊いながら生活を送る山の民の姿を描いた作品。脚本・監督は「序の舞」の中島貞夫、撮影は「ふるさと」の南文憲がそれぞれ担当。

1985年製作/125分/日本
原題:The Seburi Story
配給:東映
劇場公開日:1985年5月11日

ストーリー

山野の漂泊う山の民の一族で、群子の親分と呼ばれる木下一と一人息子の太が、亀蔵とクニの一家が住む川原の瀬降りを訪れた時には、山はもうすっかり色づいていた。ヤゾーが来たのは二人の息子カズオがハナという娘を嫁に迎えたためで、その仲立ちをするのであった。二人の祝言は古式にのっとり行なわれ、二人は山の民の掟に従って翌朝、新天地へ向かって旅立った。ヤゾーは一年前に妻を亡くしており独り身であった。クニはそんなヤゾーに、カズオの妹ヒデをさかんにすすめるがヤゾーはとりあわなかった。冬--。兄が去り、ヤゾー親子が去ったヒデは何となく寂しい気分でいた。そんなある日、亀蔵が死んだ。葬儀には各地から一族の仲間が集まったが、何故かカズオとハナの姿がなかった。その頃、カズオはある村で巡査に捕まっていたのだ。窃盗と兵役忌避の疑いで取り調べを受けていたカズオをやっとのことで助けだしたハナは、巡査にサーベルでさされ、二人はどうにか瀬降りに戻ってきた。事の仔細をきいたヤゾーは二人を永久に逃すことを決意する。夏--。ヒデは修理した箕を村へ届けに行き、ジローという若者と知り合う。二人はその後も密会をかさねるが、これが原因となり、村人との間がギクシャクしてくる。久しぶりに仕事を手伝いに来たヤゾーは、掟を破ったヒデを首だけだして土中に埋める。そんなヒデを不憫に思ったクニはジローに会いに行くが逆に村人に追われ殺害されてしまった。ジローは村人がしたこととはいえ、深く責任を感じ、全てを捨ててヒデと暮す決心をする。そしてヒデのためなら命を賭けるという言葉を聞いたヤゾーは、ジローの片眼を山刀でつぶすのであった。やがて、瀬降りを背負ったヤゾー親子、ヒデ、ジローの四人が山の渓谷をのぼって行く姿があった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

第9回 日本アカデミー賞(1986年)

ノミネート

主演男優賞 萩原健一
助演女優賞 藤田弓子
音楽賞 井上堯之
新人俳優賞 河野美地子
詳細情報を表示

フォトギャラリー

映画レビュー

5.0昭和初期、四国山中における山窩(サンカ、山の民)の厳しい生活をドラマ化

2022年3月7日
PCから投稿

名前と少しの伝聞だけをかろうじて知っているに過ぎない山窩(サンカ、山の民)。
戦局に突入する時期の昭和という時代背景のもとに彼らの生活を、俗的な〝一般国民”との関わりを絡めつつ描写していく。

どれだけこの映画でサンカの人達の実情を描いていたのか分からないが、その〝香り”の一部だけでも嗅ぎ取れたような気はした。
※一部だけなんて失礼! 本物の冬季積雪期の撮影にはオオーッと驚かされた。

戸籍ない流浪の民が、戸籍持ちの村人たちと交わる中で生じうる問題の一端も垣間見える。
そして、国家総動員法という抗いようのない巨大権力に翻弄される山の民の苦しみも・・・。

ラストのクライマックスは予想外の展開だったが、山の民と「一般国民」、そして国家権力すべての困難を解消する一つの手段が提示されていたようで、ホーッと感心すると共にじんわり感情が動かされた。

製作陣とキャストの方々に全面的に敬意を表します。

追記
音楽が全く合っておらず中盤位までかなり気になったが、全部見終えてまぁいいかという気分に。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
resuwisshu311
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る