讃歌

劇場公開日:

解説

谷崎潤一郎原作の「春琴抄」の映画化で、従えようとする少女と、従おうとする少年との“掠奪”と“献身”のすさまじい葛藤、そして、それはやがて常識の域をふみこえた美的恍惚の世界へと広がっていく。脚本・監督は「鉄輪」の新藤兼人撮影は「忍ぶ川」の黒田清巳がそれぞれ担当。

1972年製作/102分/日本
原題:Sanka
配給:その他
劇場公開日:1972年12月29日

ストーリー

春琴と佐助の墓は同じ場所にあったが、佐助の墓は春琴の半分くらいで、あたかも主人に仕えるごとくひっそりと立っていた。この墓に詣でた作者は鴫沢てるという七十八歳の老姿を知った。やがて、その老姿は春琴と佐助の物語を話し始めた--。春琴の家は代々鵙屋安左衛門と称し、薬種問屋の中でも名の聞えた老舗であった。そこの二女お琴は、九歳で失明したが、琴三弦を弾かせては並ぶ者のいない程の実力であった。その上、生まれつきの美貌と、我ままいっぱいの環境が彼女を驕慢にしていた。お琴は使用人の左助だけに身の回りを見させていた。その佐助が、知らず知らずに三味線を覚え、お琴に本格的に教示してもらうようになったが、お琴の指導は過酷を極めた。しかし佐助は、お琴の食事、風呂から厠の世話まで親身になってするのだった。お琴が妊娠した。しかしお琴は「一生独り身で暮すわたしには子は足手まといでございます」と涼しい顔で言い、生まれた子を里子に出した。やがて、お琴は師匠の看板を上げ、佐助と女中てると共に一戸をかまえた。それからというもの佐助は今まで以上にお琴に献身的に奉仕するのだった。弟子の中にはお琴の美しさを目あてに通う者も多かった。美濃屋九兵衛の伜利太郎きもその一人だった。ある夜。利太郎はお琴の寝室に忍び入ったが、誤って熱湯の入った鉄びんをお琴の頭上からあびせてしまった。無残な火傷をとどめたお琴の顔。「おまえにだけはこの顔を見られとうない」としつこく佐助に頼むお琴に、佐助も答えた、「お師匠さま、必ず見ないようにします」。数日後、佐助は我と我が眼を針で突いて、失明した。「佐助はお師匠さまと同じ世界へ参りました。うれしく思います」。佐助にとって見えるものは眼の底にしみついたお琴の美しい顔ばかりであった。盲目の二人の世界は、こまやかに厚く結ばれた。これこそたった二人の世界であった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0ATG = 日本アート・シアター・ギルド

2024年3月26日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

せっかく同一原作から映画が8度も作られているのだから、
新藤兼人さんも同名で、「春琴抄」のままで良かったのではないかな。
観比べる楽しみが増えますからね。

いかにもなATG。
テーマも、画像も、演技も、音楽も。
実験的で先鋭化した作品を、数々と生み出してきたムーブメントです。

1972年。
うちの隣地の大学では、機動隊と若者が連日闘っておりました。
佐助が抱えた縫い針と、突撃する学生たちのゲバ棒が、どこか重なります。
確かに、
「純愛」と「革命的闘争理念」のためには、眼球も生命も捧げて捨てた。
それがあの時代でした。

学生たちや意識高い系の観衆が、眉間にしわを寄せてこれを観ていたのでしょうけれど、
お師匠さまの春琴が、厠 カワヤ でつくばっている後ろ姿とか、
蒔絵の鉢でうやうやしく運ぶ大便とか、
白塗りで佐助と情交しているあられも無いシーンとか、
「山口百恵・三浦友和バージョン」では、あれらは一体どうなっているんだろうと
淫らに夢見ます。

エログロナンセンス
闘争勝利

谷崎潤一郎は、めっぽう助平な、大衆流行作家だったんですねぇ。

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きりん

3.0原作は未読です・・・本を読まないもんで・・・

2022年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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kossy
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