さよならジュピター

劇場公開日:

解説

ブラックホールの太陽系接近による大惨事を阻止するために努力する人々を描くSF映画。脚本・総監督は作家の小松左京(同名ノヴェライゼイションも執筆)、監督はこれが第一作になる橋本幸治、特技監督は「大空のサムライ」の川北紘一、撮影は原一民がそれぞれ担当。

1984年製作/130分/日本
原題:Bye-bye Jupiter
配給:東宝
劇場公開日:1984年3月17日

ストーリー

2125年。地球人口は180億、太陽系宇宙空間の人口は5億に達していた。宇宙に住む人々は新しい資源とエネルギーの開発を推進し、火星では極冠が融解され、水資源が確保された。極冠のあとからペルーのナスカと同じパターンの地上絵が発見され、宇宙言語学者のミリセント・ウィレム博士は木星のミネルヴァ基地に向かう。ここでは本田英二をチーフにしてJS(木星太陽化)計画が進められていた。JS計画とは、地球連邦大統領直属のSSDOが推進しているプロジェクトの一つで、木星を第二の太陽にすることにより、木星以遠の太陽系惑星に新しいエネルギー源を提供しようというのだ。ミリセントは「ナスカや火星の地上絵は宇宙人のメッセージであり、木星に彼らの正体を解く鍵があるらしい」とJS計画の一時中止を求める。自然保護団体の一つで歌手のピーターが教祖のジュピター教団もJS計画に反対し、ミネルヴァ基地に破壊工作員を送り込んで来た。本田はその一人、マリアを見て驚く。彼女とは同じ火星で生まれ育った幼なじみだったからだ。本田はマリアとラブルームで無重力セックスを交す。ミリセントは祖父のSSDO総裁ウェッブに頼みこんで、本田と木星大赤斑を調査し、長さ120キロもある物体が存在していることをつきとめる。このところ、彗星の数が減少する異常事態がおき、井上博士とキン大尉がスペース・アローに乗って調査に出かけていた。しかし、途中でスペース・アローは消滅してしまった。同宇宙船の事故を分析した彗星源探査本部のムハンド・モンスールは、ブラックホールが太陽系に向かっていることをつきとめる。月にあるSSDO総裁室で会議が開かれ、その席で本田はブラックホールが近くをかすめる時に木星を爆破させてブラックホールの進路を変更させたらどうかと提案する。大統領の賛成を得て、提案は実行されることになった。残された時間は、あと二年。本田は若い少年のような研究主任カルロス・アンヘレスらと木星爆破計画に没頭する。ジュピター教団の妨害も過激化し、残り300時間になり、ミネルヴァ基地がごったがえすすきに、強硬派アニタにひきいられた破壊工作員が侵入。本田らと銃撃戦となり、マリアは本田の腕の中で死亡。謎の物体が動き出した。傷ついた本田は木星の爆発とともに死亡。ブラックホールは進路を変えて太陽系外に去っていった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

総監督
監督
橋本幸治
特技監督
川北紘一
脚本
小松左京
原作
小松左京
製作
田中友幸
小松左京
イメージデザイン
張仁誠
模型デザイン
宮武一貴
加藤直之
撮影
原一民
水中撮影
大津喜彦
新田末広
松村ひろ子
寺本健
美術
竹中和雄
装置
鈴木和夫
加藤慶一
柳堀衷一
木工
片山友治
谷口武己
組付
沼倉信吾
装飾小道具
田代昭男
田中良直
電飾
稲垣秀男
動く彫刻
伊藤隆道
音楽
羽田健太郎
音楽プロデューサー
前田忠彦
主題歌
松任谷由実
挿入歌
杉田二郎
録音
吉田庄太郎
効果
佐々木英世
柴崎憲治
照明
小島真二
編集
小川信夫
ネガ編集
上池康夫
衣裳デザイナー
志村雅久
衣裳
原田勝美
メーク
太田修
結髪
中尾さかゑ
俳優係
橘田捷成
製作担当
森知貴秀
製作係
前田光治
林茂里穂
助監督
三好邦夫
記録
梶山弘子
スチール
石月美徳
特技撮影
江口憲一
特技美術
寒竹恒雄
特技照明
三上鴻平
特技スチール
中尾孝
特殊効果
渡辺忠昭
操演
松本光司
合成
宮西武史
光学撮影
真野田嘉一
合成作画
石井義雄
塚田猛昭
モーション・コントロール・システム
片岡紘
大瀬戸茂一
特技装置
竹中儀雄
特技組付
鴨志田平造
特技木工
田中敬喜
入沢秀雄
野村安雄
神保まさ子
特技照明機材
棚網恒夫
特技記録
鈴賀慶子
特技製作担当
池田雅行
特技製作係
篠原啓峰
スペースイラスト
島倉二千六
CGプロデューサー
デイヴィッド・M・ゲシュウィンド
CGディレクター
デイヴィッド・M・ゲシュウィンド
土屋裕
システム・アドバイザー
石塚朝生
特技助監督
浅田英一
造型
安丸信行
模型制作
小川正晴
高山弘
小宮俊男
殺陣
宇仁貫三
照明機材
横田俊司
赤沢幸彦
特殊機械
高原定
鹿山和男
協力製作
田中文雄
藤原四郎
宣伝プロデューサー
鹿野英男
島谷能成
中川敬
製作宣伝
三井孝俊
全てのスタッフ・キャストを見る

フォトギャラリー

映画レビュー

1.5ジュピター教団サイコー

2023年6月23日
スマートフォンから投稿

学生の時にワクワクしながら映画館に足を運び、
若人の夢を木っ端微塵に破壊してくれた凡作。
特撮頑張ってたのになぁとは、当時の自分のレビュー。
約40年ぶりに見直したが、やっぱりダメだった。
ジュピター教団サイコーやし、ジュピターゴーストが泣いてる?はぁ?誰のせいなん?宇宙を救うってあんた、
人間のエゴ丸出しやんか?てな感じで昔も今もツッコミどころ満載の、小松左京先生渾身の一作でありました。
残念!

コメントする (0件)
共感した! 0件)
Hide T

2.5いろんなもの詰め込みすぎた映画だなと思いました。

2022年12月14日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ブックオフのDVDで買って観ました。
当時の特撮方法で公開に挑んだ映画だと思いますが、SF要素あり、ラブロマンス要素ありなどいろんなもの詰め込みすぎてよく公開出来たなと思いました。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
HIDE Your Eyes

3.5シン・ゴジラへの道は、本作から始まっていたのだ 全否定してはいけない映画であり、ある意味重要で画期的な作品だったのだ

2021年7月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

黒歴史
思い出したくもない

本作ほどこの言葉に相応しいSF映画は思いつかない
本作を知る人は今では少ない
改めて観てみたいと思う人もまたほとんどいないだろう

しかしなにやら俄かに注目を集めているらしい
それは何故か?

主題歌は松任谷由実の「VOYAGER(ボイジャー)~日付のない墓標」だ
その曲が「シン・エヴァンゲリオン劇場版」のクライマックスで林原めぐみの歌唱で流れたからだ

それで自分も超ひさびさに観てみたくなった
なぜ庵野秀明監督はこの曲をつかったのか?
その理由を知りたくなった
またそれによって本作への評価が覆る新しい発見があるかと期待したのだ

しかしやっぱり変わらない
黒歴史だ

では無価値なのだろうか?
いや意味はあった
日本の特撮映画にとって、本作がなかったなら取り返しのつかない損失になっていたはずだ
全否定してはならない映画であり、ある意味重要で画期的な作品だったのだ

1984年3月17日公開
その年の12月にはリブートされた「ゴジラ」が公開されている

しかしそれよりも重要なことは
3月11日に「風の谷のナウシカ」が公開されているということだ
本作公開の6日前の公開だ

知ってのとおり、庵野秀明は「風の谷のナウシカ」の製作に参画してプロとしてのキャリアをスタートさせたのだ
彼がいきなり巨神兵の作画を任されたことは伝説の逸話だ

庵野秀明に取っては、キャリアのスタートを切った映画とほぼ同時公開の特撮映画であったのだから、特に思い出深い作品になったのは間違いない

それゆえに本作の主題歌をシン・エヴァンゲリオンでどうしても使いたかったのだと思う

それだけでなく、庵野秀明監督は、本作はダメな映画と思われているが、自分は好きだとコメントされている

それは何故だろうか?
理由はいくつもある

本作は日本映画にはとても珍しい本格的なSF映画であるということ
1962年の「妖星ゴラス」以来だから、実に22年ぶりのこと

日本SF小説界の巨人、小松左京が日本でも本格的なSF映画を作りたいと情熱を傾けた作品なのだ
内容はハードSFと言えるものだ
豊田有恒、山田正紀、野田昌宏、高千穂遥など当時の錚々たる日本SF作家が結集した内容なのだ

メカデザインは、スタジオぬえの宮武一貴が担当しているから、素晴らしいクォリティで世界水準なのは間違いない

そもそも庵野秀明がアニメ業界に関わることになったのは彼のダイコン3でのオープニングアニメでスタジオぬえがメカデザインした機動歩兵が動くのが会場にいた彼らの目に留まったことがきっかけなのだ

特撮用のミニチュアの出来も見事だ

スターウォーズで使用され、当時の日本の特撮にはまだなかった為に決定的に立ち遅れていた特撮技術がモーション・コントロール・カメラだった

これを「アマダ製作所」の協力で工業用ロボットを改造してモーション・コントロール・カメラに仕立てて使用することで、この技術ギャップを解消しているのだ
これによって、日本で初めてスターウォーズのように滑らかに宇宙船が宇宙空間を進む特撮を撮れるようになったのだ
それまではピアノ線の操演しか特撮技術がなかったのだ
世界水準から大きく立ち遅れていたのだ

CGが多用されているが、ショボいと批判してはいけない
当時はまだ海外の映画でもCGが使われることは少なかった
1982年の「トロン」、1983年の「ウォーゲーム」、本作の7ヵ月後の1984年10月公開の「ターミネーター」ぐらいだ
日本では皆無だった
しかし本作では、当時の16ビットパソコンを数台使用するだけでなく、当時世界で40台しかない、日本には2台しかなかったスーパーコンピューターを三菱総合研究所に借りて、このようなCGを作りだしたのだ

これらは全て小松左京自身が自ら動いて、しかも自腹で用意したことだ
日本の映画会社に任せていてはいつまで待っても実現出来ないことだからだ
何をしなければならないのか自体さえ、日本の映画会社には分かっていないことを知っていたからだ

この小松左京の努力により、日本の特撮が世界水準に達する為の各要素が、本作の製作によって日本でも揃ったのだ

24歳、プロとしてのキャリアをスタートさせたばかりの庵野秀明に取ってはどれも嬉しいことだったに違いない
これらの要素を縦横に使って、将来自分が特撮を撮ることを夢見たに違いないのだ
いつか必ずその日を実現させてやると野心を燃やしたに違いないのだ
つまりシン・ゴジラに至る道は本作から始まっていたのだ

だから彼は本作が好きで、本作の主題歌をエヴァンゲリオンの総決算に使用したのだ

なのに本作は黒歴史になってしまった
何故だ?!

本編監督の橋本幸治の責任であると自分は思う
「小松さんの言うことはあまり聞かなかった」「小松さんが描いた絵コンテもほとんど見なかった。コンテ通りに撮っても面白くないので」
「小説も読んだけどイマイチわからなかった」
その上、「テーマは愛である」
「英二とマリアの愛をしっかり描くことが最も重要な課題だった」などと本人が語っているからだ

つまりSFが分からない人だったのだ
SFには何ら愛の無い人だったのだ
特撮は特技監督の仕事であり、本編監督はそんなもの何の関心も無かったのだ
そんな人が、日本で世界水準の本格的SF映画を作ろうとした作品を監督したのだ

だから結果はこれだ
大惨事になってしまったのだ
黒歴史にしたのは彼だ

黒歴史とは、期待が大変に大きかったのに裏切られたからそうなるのだ
最初から期待してなければ黒歴史にはならない
日本発の世界水準のSF 映画を!とのSFファン、特撮ファンの期待をぶち壊したから黒歴史なのだ

日本の特撮映画の最大の問題点はここだ
本編監督とその現場の無理解にこそあるのだ

アニメではSFやファンタジーのことが分かる、それを愛してやまない監督が心を込めて作品を作れるのに、実写ではそれが出来なかった
原作者であり総監督の小松左京ですら、現場に何も口出し出来なかったし、現場は言うことを聞かなかったのだ
関心も興味すらなかったのだ

しかし特技監督は川北紘一だ
円谷英二、中野昭慶に連なる正統なる後継者
平成ゴジラシリーズを背負って立った人
世界水準に達しているいくつかの目を見張る映像はこの人の功績だ

特にブラックホールの映像は秀逸
単純な特撮ながら、超重力により宇宙空間がドップラー効果で赤方偏移して漏斗状の赤い渦に見える映像は見事だった

モーションコントロールカメラを上手く駆使している映像が嬉しい

宇宙船のコクピット窓内に小さく動く人影、コクピットのディスプレイのはめ込み映像、回転する宇宙基地のドックに、回転を同期させて進入する宇宙船の特撮は「2001年宇宙の旅」の特撮を16年かかってようやく追いついたところをみせてくれる
それまでは真似しようにも、日本の特撮はそれだけの技術すらなかったのだ

ただ、どの映像も「空気」が見える
スターウォーズのように真空の宇宙空間であるという映像には至っていない
当時のカメラさん、照明さんには言っても理解出来ないことだったのかも知れない
それでも日本の特撮が、なんとかここまで追いついたのだ

1978年の「スターウォーズ」、「未知との遭遇」という2隻の黒船に為す術もなかった日本の特撮が、ようやくここまできたのだ
そこは評価されなけばならないのだ

全否定してはならないのだ
シン・ゴジラへの道はこの本作から始まっていたのだから

因みに主題歌のボイジャーとは、宇宙探査機のボイジャー1号、2号のことをイメージされたタイトルと歌詞のように感じる

打ち上げは共に1977年
木星最接近は1979年
土星最接近は1980年(2号は1981年)
その後、2003年と2018年にそれぞれ太陽系を脱出していまも恒星間宇宙を飛行している
恒星間は英語でいうとインターステラーだ
高名な天文学者カール・セーガンによる宇宙人へのメッセージとして地球の生命や自然の音を収録したゴールデンレコードを積んでいることは有名だ

本作の公開の頃は、このボイジャー探査機が撮影した驚嘆すべきカラーで鮮明な美しい木星や土星の写真が沢山出回っていた
カールセーガンのベストセラー「コスモス」が日本でもテレビ放映されたのは1980年の11月のこと
天体精密画家の岩崎一彰の画集がベストセラーになったのは1983年と1984年のこと
この頃はちょっとした宇宙や惑星ブームだったのだ

ボイジャーの撮影した惑星写真集は今もたくさん販売されている
センスオブワンダーそのものだ
これを数時間でも飽きずに眺めていられる人しか、SFや特撮を撮ってはいけないのだ

コメントする (0件)
共感した! 6件)
あき240

0.5世紀の大愚作

2021年5月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 1件)
odeonza
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る