恍惚の人

劇場公開日:

解説

息子も孫も顔をしかめてそっぽを向くボケた八十四歳の老人との温かい心のふれ合いを日常茶飯事の中でとらえる。原作は有吉佐和子の同名小説。脚本は松山善三、監督は「地獄門」の豊田四郎、撮影は「喜劇 泥棒大家族 天下を取る」の岡崎宏三。

1973年製作/102分/日本
原題:Twilight Years
配給:東宝
劇場公開日:1973年1月15日

ストーリー

立花家は、84歳の茂造、その息子夫婦の信利と昭子、子供の敏が同居していた。茂造は老妻が死んで以来、ますます老衰が激しくなり、他家へ嫁がせた自分の娘の京子の顔さえ見忘れていた。それどころか、息子の信利の顔も忘れ、暴漢と錯覚して騒ぎ出す始末。突然家をとび出したり、夜中に何度も昭子を起こしたりする日が何日か続いた。昭子は彼女が務めている法律事務所の藤枝弁護士に相談するが、茂造の場合は、老人性うつ病といって老人の精神病で、茂造を隔離するには精神病院しかないと教えられた。昭子に絶望感がひろがった。ある雨の日、道端で向い側の塀の中からのぞいている泰山木の花の白さに見入っている茂造を見た昭子は胸を衝かれた。茂造には美醜の感覚は失われていない、と昭子は思った。その夜、昭子がちょっと眼を離している間に茂造が湯船の中で溺れかかり、急性肺炎を起した。だが、奇跡的にも回復、昭子の心にわだかまっていた“過失”という文字が完全に拭いとられた。そして、今日からは生かせるだけ生かしてやろう……それは自分がやることだ、と堅い決意をするのだった。病み抜けた茂造の老化は著しくなった。そんな時、学生結婚の山岸とエミが離れに引っ越してきた。茂造は今では昭子の名さえ忘れ“モシモシ”と呼びかけるが、何故かエミにはひどくなつき、エミも色々と茂造の世話をしてくれるようになった。しかし、茂造の奇怪な行動は止まなかった。便所に閉じ篭ってしまったこと、畳一面に排泄物をこすりつけたこと……。ある日、昭子が買い物で留守中、雨合羽の集金人に驚いた茂造は恐怖のあまり、弾けるように外へ飛び出した。血相を変えて茂造を捜す昭子の胸に、迷子になり母の姿をみつけた少年のような茂造がとび込んできた。それから二日後、木の葉の散るように茂造は死んだ。「家が臭い」と無遠慮に言う京子に、敏は「臭いから良いんだ。お爺ちゃんがいるようで」と反論する。昭子は茂造を思い、小鳥に「もしもし」と語りかける。そしてその頬には一粒の涙がこぼれ落ちるのだった。

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映画レビュー

3.5痛い。辛い。今、我が母がこうなりつつあります。痴呆老人の問題は昔も...

2017年2月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

痛い。辛い。今、我が母がこうなりつつあります。痴呆老人の問題は昔も今も変わらぬのかも。いや、昔は制度が整っていなかった分、余計にきつかったかも。
名優、高峰秀子がどんどんかわいそうになってきます。
森繁は歳いってからしか知りませんでしたが、この時代も感じは同じですね(笑)

今、母がそうだが、やがては自分も…そう思うと怖い。辛い。子どもには迷惑かけたくない。いろんな思いが交錯しました。
現代を生きる我々こそが見なければならぬ映画なのかもしれません。

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はむひろみ

2.0なんか最後までみてしまった

2016年5月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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とば

3.0炙り出し。

2015年2月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

知的

難しい

1973年の作品。
もう40年が経過している。超高齢社会に突入した現在の日本において、改めて観直す価値のある作品だと思う。

この40年で、認知症に対する考え方やそのサポート体制は大分良い方向に進んできていると思うが、道半ば。
本人、家族が孤立しないように、かつ、本人の尊厳が保たれるように、如何に関わっていくのか。
暴力、徘徊、弄便(排泄物を手にしたりなすりつけたりする行為)…。一時的、或いは、半恒久的に避けられない、行動の障害と、社会がどう折り合いをつけるのか(受け入れるのか)。

40年前の登場人物たちの態度や言葉には、それぞれの本音、真実が顔を覗かせていて、とても面白く拝見しました。

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Nori
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