寒椿

劇場公開日:

解説

昭和初期の土佐高知の色街を舞台に、原色の男女が織りなす愛と侠気の世界を描く、宮尾登美子原作の映画化。脚本は「代打教師 秋葉、真剣です!」の那須真知子が執筆。監督は「首領になった男」の降旗康男。撮影は「略奪愛」の木村大作がそれぞれ担当。

1992年製作/115分/日本
配給:東映
劇場公開日:1992年5月30日

ストーリー

昭和2年、21歳の貞子は女衒の岩伍に買われ、高知の妓楼『陽暉楼』へ身売りされる。永年の女衒稼業を続ける岩伍は、これまで1度も身売りされる娘やその親に同情したことはなかったが、貞子の初々しさには何か心にひっかかるモノがあった。早速「牡丹」という源氏名が付けられた貞子は、女将のみねのもとで芸事の特訓をさせられる。岩伍は先ず一安心だった。苦界といっても『陽暉楼』なら、それなりの格式もあり客質も上等だ。牡丹も慣れぬ世界で始めは苦労するだろうが、愚にもつかない父親と暮らすよりは幸せになるだろうと、岩伍はこの商売をしてきて初めて心の安らぎを感じる。だが、その一方で岩伍の妻・喜和は、若い娘の身を売買する夫の商売が心痛で、息子の健太郎を連れて家出をしてしまうのだった。しばらくたって牡丹が座敷へ出る日が訪れ、たちまち『陽暉楼』の1番の売れっ子となった。岩伍は我がことのように喜び、事あるごとに励ましの言葉をかけた。だが、牡丹に熱い想いを寄せる力士くずれのヤクザ仁王山は、そんな岩伍に強い憎しみを覚える。それから数日後、仁王山が牡丹をさらって姿をくらます事件が起こる。牡丹の身を心配した岩伍は単身で2人の捜索に旅立つ。やがてある寂しい漁村で2人を見つけ出した岩伍。2人は高知に連れ戻された。仁王山は牡丹をあきらめることで組に戻り、牡丹は財閥の御曹司・多田守宏に見受けされることを承知して『陽暉楼』に戻った。だが、牡丹が心底好いているのは岩伍だけだった。そのことを告白された岩伍は胸が熱くなるが、女衒が売り買いした女を抱ける道理はなかった。そして傷心のうちに見受けされて東京に発つ牡丹。しかし牡丹は満州へ売られ、それを知った岩伍は満州へ向かい牡丹を助ける。そして再会する牡丹と仁王山。そんな2人に再び魔の手が襲いかかり、岩伍は死闘の末、牡丹と仁王山を追っ手から逃がすのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第16回 日本アカデミー賞(1993年)

ノミネート

主演男優賞 西田敏行
主演女優賞 南野陽子
助演女優賞 かたせ梨乃
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映画レビュー

4.0確かに宮尾登美子原作の世界のお話です しかし、どうしても自分は五社英雄監督なら、この物語をどう撮ったであろうかと考えてしまうのです

2022年1月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1992年5月公開、降旗康男監督の作品

原作は宮尾登美子
1980年代前半に、彼女の原作で五社英雄監督が撮った3本はどれも大ヒットしました

彼女が高知を舞台にした小説は4作あります
発表年、題名、映画化年は次のとおり

1972年 櫂 1985年
1976年 陽暉楼 1983年
1977年 寒椿 1992年(本作)
1980年 鬼龍院花子の生涯 1982年

つまり、五社英雄監督は何故か「寒椿」をスルーして映画化していたのです
「鬼龍院花子の生涯」の成功の次は、「陽暉楼」を撮りたいという五社監督の気持ちは分かります
よりテーマを掘り下げるに相応しい作品ですから

では、その「陽暉楼」の次の作品は何故「櫂」であって「寒椿」では無かったのでしょうか?
本作の方が「櫂」よりも「陽暉楼」との連続性が高いのにという疑問です
五社監督には「櫂」を先に撮る何らかのお考えがあって、それから本作に取りかかるという計画であったのかも知れません

しかし結局、五社英雄監督は「寒椿」を映画化することはありませんでした
本作公開のわずか3ヵ月後の1992年8月30日にガンで永眠なされたのです

では、その「寒椿」を降旗監督が映画化したのは何故でしょうか?
「櫂」以降、というよりその前年の「北の蛍」を撮ってから、五社監督はより大作志向になって行ったからかも知れません

「寒椿」を映画化したい
五社監督が撮らないのなら、他の監督に任せたいと東映から相談があったのだと思います
本作の製作者の奈村協は、鬼龍院花子の生涯、陽暉楼、櫂の3作品の製作者でもあるのです

では何故、降旗監督が本作の監督に選ばれたのでしょうか?
それは五社監督が本作を撮らなかったのと表裏の関係なのだと思います

本作を観て思うのは、これは男の映画だということです
女を描く映画ではないのです

岩伍を中心に、仁王山や田村などとの男達の物語が中心なのです
それもヤクザ映画に近い内容のものです

女性ももちろん描かれていますが、牡丹をはじめ女達はみんな運命に翻弄されるだけなのです
五社監督作品での女性達のように自己を強く主張して男に負けない迫力を示すことはないのです

だから、「寒椿」の映画化には五社監督は食指が伸びず、逆に降旗監督にとってはぜひ撮りたい映画だったのではないでしょうか?

公開当時、西田敏行は45歳
仲代達矢は60歳、緒形拳は55歳
配役の若返りは致し方ないのは理解できます
小津監督だって「秋刀魚の味」では、原節子から岩下志麻にヒロインを交代させているぐらいですから
第一アクションシーンがあるのです
西田敏行の演技は素晴らしいと思います
なのにアップシーンで彼の顔はなんとなく緒形拳に見えてくるのはどうしたことでしょう

牡丹役の南野陽子はイメージ通りで、美しく儚げで、演技も悪いものではありません
スケバン刑事2での高知弁の記憶もまだ残っていました
濡れ場シーンも大胆で、白い太股をだし、乳房と惜しげもなくさらけ出しています
ヤクザに手込めにされもしますし、クライマックスで指を切断されるシーンなどは衝撃です
しかし、スケバン刑事の「おまんら許さんぜよ!」みたいな目の覚める啖呵をきるような演出はありませんし、胸はペッタンコに撮ってしまうのです
工夫次第で、胸の膨らみや柔らかさは出せたはずです

もっと配役の問題があります
それは岩伍の妻喜和役の藤真利子です
「櫂」の時は30歳、本作では37歳での出演です
「櫂」の時と同じ風情での出演であったなら、イメージ通りだったと思います
失礼ながら別人のようです
ただの細い中年女性、少し綺麗なお母さんにしか見えないのです
とにかく降旗監督の喜和の解釈はそうだったのです
はっきり言ってガッカリです
岩伍が執着するのも納得できる美しさで撮ろう、残されている色香を表現しようという情熱がまるで感じられないのです

仁王山の髙嶋政宏は、ラストシーンの笑顔をみると彼で正解だったとは思いますが、相撲取り出身にはどうしても違和感があります

収穫だったのは、田村役の萩原流行です
強烈な印象を残しています

確かに宮尾登美子原作の世界のお話です
しかし、どうしても自分は五社英雄監督なら、この物語をどう撮ったであろうかと考えてしまうのです

西田敏行主演で本当に良かったのでしょうか?
ヒロインは、白くか細くであっても乳房は丸く膨らんでいる女優であるべきではなかったのでしょうか?
最低限、乳房の見せ方にはこだわりがあるべきだと思います
そうでなければ、体当たりで初めて濡れ場を演じた彼女に失礼です

そして妻の喜和役はもっと若く美しくあるべきです
そこを徹底的にこだわるべきだったと思うのです

そもそも女性が脇にやられすぎです
女性からの視点ではないのです
女性の主張が弱すぎます
というか主張させていないのです
そんなことより男のドラマを撮ろうというようにしか見えないのです

結局のところやっぱり降旗監督作品ということです
男を描いた映画であったと思います
女性を中心に描く五社監督作品とは異なるのです

監督が違うのだから、宮尾登美子原作世界へのカメラの視線もまた異なるのは当たり前です
それは分かっています

それでも陽暉楼の外観が五社監督作品と同じであるからには、おなじものを求めてしまうのです

五社監督がお亡くなりになる前に、病床にあっても本作をご覧になられることができたかどうか、それはわかりません
五社監督が本作を観られていたとしたら、一体どのような感想をもたれたことででしょうか?

これは降旗監督作品であるのだと強く思ってみれば悪くない映画であると思います

しかし、やっぱり自分は五社英雄監督が撮った「寒椿」を観てみたかった!
そうどうしても思ってしまうのです

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あき240

4.0南野陽子が可憐で美しく親子愛にジーンと来る話だった。子役の健太郎が...

2020年8月7日
iPhoneアプリから投稿

南野陽子が可憐で美しく親子愛にジーンと来る話だった。子役の健太郎が健気だった。

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tuna

3.5「陽暉楼」よりも良い

2013年3月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

難しい

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Cape God
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