遠雷

劇場公開日:

解説

宇都宮を舞台に、都市化の波に流される人々の中で、土地にしがみつき、トマト栽培に賭ける青年の姿を描く。野間新人文芸賞を受賞した立松和平の同名の小説の映画化で、脚本は「ひと夏の体験 青い珊瑚礁」の荒井晴彦、監督は「狂った果実(1981)」の根岸吉太郎、撮影は「スローなブギにしてくれ」の安藤庄平がそれぞれ担当。

1981年製作/135分/日本
原題:The Far Thunder
配給:ATG
劇場公開日:1981年10月24日

ストーリー

満夫は僅かな土地にしがみついてトマトを栽培している。先祖代々の土地は、父が売ってしまい、豪華な家を建てたが、今は家を出てバーの女、チイと同棲している。兄も百姓を嫌って、東京でサラリーマンをしている。家に残っているのは満夫と母と祖母の三人だけだ。日々のいらだちをトマト栽培にまぎらわす満夫にお見合の話がきた。あや子という相手は、まんざらでもない女だ。子供をペロリと産みそうだ。二人はその日にも、モーテルで抱き合った。父が帰って来た。世話になった人が立候補するので、選挙の手伝いをするという。母も父の浮気のことなど忘れて、調子に乗っている。その頃、子供の時からの友人・広次が工業団地に住む人妻、カエデと駆け落ちした。カエデは満夫のビニールハウスにトマトを買いに来たこともあり、関係を結んだこともある。いらだつ満夫に、追いうちをかけるような事件が続いた。トマトが大量発生したアブラムシで全滅してしまった。そして、父も選挙違反で警察にあげられてしまった。あや子の父の希望で、村一番の盛大な結婚式をあげている晩、広次が帰ってきた。カエデを殺してきたと言う。盛大な宴の歓声が母屋から聞こえてくる。ハウスの中で広次は告白しながら泣いた。そして「稲刈り、頼んだぜや」と言い残して自首した。警察を出た父はそのままチイとどこかへ行ってしまった。残された満夫とあや子が腐ったトマトを燃していると不動産屋がやってきて土地を売ってくれと言う。満夫は猛烈な勢いで不動産屋を追い返した。はるか遠くで、雷が鳴っている。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第5回 日本アカデミー賞(1982年)

ノミネート

作品賞  
監督賞 根岸吉太郎
脚本賞 荒井晴彦
主演男優賞 永島敏行
主演女優賞 石田えり
助演男優賞 ジョニー大倉
音楽賞 井上堯之
新人俳優賞 石田えり
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(C)1981 日活/東宝

映画レビュー

0.5『遠雷』と言うが宇都宮辺りは『近雷』だと思う。が。

2023年10月13日
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マサシ

3.5地方農村に生きる青年の想いが伝わる日本映画

2022年6月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

トマト作りに賭ける地方農村の若者の現代的な生き方を描いた日本映画の力作。根岸吉太郎の演出は良いが、主人公の友人が人妻と駆け落ちする脚本が定石すぎて先が読めてしまい、詰まらなく感じた。題材と演出と主演二人の演技を観る映画。永島敏行は、「サード」「帰らざる日々」と比べると役者として自信をもってやっている様に見えて、安定感がある。

  1982年 5月11日 銀座文化2

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Gustav

5.0ようこそここへ

2021年3月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

団地と農村との垣根で、トマト栽培を営む自然体の若者を見事に演じた永島敏行にまず拍手。
石田えりも怖いものなしって感じでよかった。
秀逸はジョニー大倉のモノローグシーン。殺人に至るまでの経緯を、ちょうどいい緊迫感で長台詞を語りきった。
井上氏の音楽もよかったが、「わたしの青い鳥」を歌っているときの永島敏行の感情表現も秀逸。

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まこべえ

4.0ポスト団塊世代の青春がここに描かれている

2019年10月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ポスト団塊世代の青春がここに描かれている
おそらくこの世代の青春の在り方をテーマに据えた映画は本作は最初だろう

政治の話は一切ない
関心が全く無いわけでは無いだろう
父親が選挙応援する候補者のポスターを破いたり選挙運動に冷たい視線を向けるのは、父親への反発だけではないだろう
雷はかっての世の中の政治的な情熱を表現したものだろう
しかしそれは近くで大きくは鳴らない、まして落雷などしないのだ
遠くで雷がゴロゴロと鳴る音が聞こえることはある、遠くの雲の向こうで稲光がピカピカとかすかに光ることもある
それだけのことだ
自分達は日々の仕事をするのみと達観しているのだ

トマトの市況が悪いことも、病気で作物が枯れても社会や体制やそんなものの責任にはしない
仕方ないのだ、自分で背負うしかないのだ
文字通り地に足をつけて地道に働くのみなのだ


親の世代、兄の世代のように好き勝手に家を飛び出すことはできない
彼らが放り投げたことやり散らかしたことを片付けて、なんとかやりくりして、辻褄を合わせて生きていかねばならない世代なのだ
ボケ始めた祖母、無神経な母を誰が面倒見てくれるというのか
他に誰がやってくれるというのだ
それが満夫の父親への視線であり、兄を見る視線なのだ
そういった世代の物語だ

その中でも青春はあり事件もある
こうして世の中は日々過ぎて行くのだ
前の世代達が作って放り投げた世の中の歪みも矛盾も全て受け止めて、満夫とあや子はそれなりに身の丈で生きていくのだ
だから満夫は青い鳥を大きな声で涙をこらえて最後まで歌うのだ
彼だって幸せを自分なりに探し求めてみたいのだ

21世紀に繋がる青春の在り方は、ここから今も続いている
基本的にはなにも変わっていないのだ

いや、さらに下の世代には子供部屋おじさんの世代が生まれている
21世紀に映画にすべき青春は彼らの物語のはずだ

永島敏行は正にポスト団塊世代だ
その虚無感が見事に映像に写し撮れている
ジョニー大倉は実年齢は団塊の世代に近いが、見事な演技力で存在感があった
そして森本レオの役作りが秀逸だ
団塊の世代の身勝手さを一目でわかるように表現した説得力ある髪型と口髭だった
ケーシー高峰の無責任感溢れる演技も良かった

また井上尭之の音楽は大変に素晴らしい
21世紀の今日でも全く古さを感じない印象的なものだ

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