映画女優

劇場公開日:

解説

日本映画史にその名を残す大スター田中絹代の映画デビューの頃から41歳までの半生を描く。脚本は原作となった『小説・田中絹代』(読売新聞社刊/文春文庫版)を書いた「落葉樹」の新藤兼人と「鹿鳴館」の日高真也と同作の市川崑、監督は市川崑、撮影は「雪の断章 情熱」の五十畑幸勇がそれぞれ担当。

1987年製作/137分/日本
原題:Actress
配給:東宝
劇場公開日:1987年1月17日

ストーリー

大正14年。女優を志す少女・田中絹代は蒲田撮影所の大部屋女優として採用された。新人の監督清光宏の強い推薦のおかげだった。上京に当っては母のヤエ、姉の玉代、兄の晴次と洋三、それに伯父の源次郎までが関西の生活を捨てて同行することになった。大部屋の給料が10円~15円だった当時、破格の50円をもらい、清光作品ではいつも良い役がつく絹代に、同僚の嫉妬が集まったが、小さな身体にファイトをみなぎらせて撮影所通いを続けた。そんな絹代の素質を見抜いた五生平之助監督は、撮影所長の城都を説得し、「恥しい夢」の主役に抜擢した。自分が発見した新人女優をライバルにとられた清光は、「恥しい夢」が完成した後、強引に絹代に迫った。何事にも熱中するタイプの絹代は、清光との愛にも激しく燃えた。城都の提案で2年間の試験結婚という形で同棲生活を始めたものの、女優としての仕事が忙しい絹代は炊事も掃除も満足にできない花嫁だった。ある日、清光が暴力を振るい、怒った絹代が座敷でオシッコをするという抵抗の仕方で終った。それ以後の絹代の活躍は目ざましかった。第一回トーキー作品「マダムと女房」の主演と成功、「伊豆の踊子」の主演、そして「愛染かつら」の大ヒット……。しかし、家庭的には恵まれなかった。姉の駆け落ち、撮影所をやめた兄たちの自堕落な生活、母の死が絹代を打ちのめしたが、付人兼用心棒として雇った仲摩仙吉に励まされ、何とか切り抜けることができた。昭和15年、絹代は溝内健二監督の「浪花女」に主演するため京都に向かった。やかましさとねばり強さで有名な溝内の演出に、絹代の激しい開志が燃え上がった。それから11年の歳月が流れ、昭和26年秋、溝内から出演交渉を受けた絹代は京都を訪れた。戦後の新しい時代に即応できず低迷していた溝内は、新作の「西鶴一代女」に起死回生を賭け、そのパートナーに絹代を選んだのだ。お互いに好意を持ちながら、仕事となると仇敵のように激しく火花を散らす2人--。メイクで老醜の無残な限りをさらけ出す絹代--。そこには溝内が心中しようとしている「西鶴一代女」と、自分も心中しようと決意した絹代の、女として映画女優としての凄まじさがあった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第11回 日本アカデミー賞(1988年)

ノミネート

監督賞 市川崑
主演女優賞 吉永小百合
音楽賞 谷川賢作
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映画レビュー

2.5名女優、大女優、女流監督、でもやはり映画女優の田中絹代をリスペクトしたが

2020年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

日本映画では溝口健二に最も畏敬の念を抱くことで、過剰な期待をしてしまったのがいけなかった。確かに戦後日本映画の大女優田中絹代と同格の女優を現在で選べば、吉永小百合しかいないのかも知れない。しかし、それはあくまで格の話であって、女優としての資質や個性ではない。また、映画史挿入の半記録映画のスタイルにした市川崑の演出も集中力に欠け、ドラマとしての重量感に不満を覚えた。清水宏との実験結婚、五所平之助との関係、家族の全生活を支えた女優業、そして戦後巨匠溝口との出会いと、欲張った題材が二時間の枠に収まるとは思えない。共演者も豪華に揃えてはいるが、ドラマ部分から筋書き以上の思いが伝わってこなかった。市川監督がこの作品で何を描きたかったのか、私的には理解できなかった。
  1987年 2月9日  郡山東宝

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Gustav

3.0田中絹代、どんな女優さんなのか、残念ながら世代の違う私には分かりま...

2016年11月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

田中絹代、どんな女優さんなのか、残念ながら世代の違う私には分かりません。いつか鑑賞してみたいと思います。

サユリストの私には、小百合様自身をモデルにした作品にして欲しかった。しかし、小百合様の代表作とはなんだろう?ちょっと考えてしまう。

渡辺徹の太さだけが印象に残る前半。後半の文ちゃんとの共演でやっと作品として成り立ったかな、そんな感じ。今作も小百合様の代表作とはなり得ず、「吉永小百合99本記念映画」のテロップが悲しい。

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はむひろみ

3.0日本映画史を見た

2016年11月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

吉永小百合のかわいいから体当たりまで
でも私の好きな田中絹代の雰囲気はさすがに出てないかな?

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mamagamasako

0.5大きく空振りしたな

2015年11月20日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

笑える

主演:吉永小百合、監督:市川崑、脚本:新藤兼人、その他、森光子、石坂浩二、菅原文太などの助演とくれば、なんかものすごいできるのではないかと、誰もが期待しただろう。
おそらく、関係者全員がその期待を、自分自身にではなく、自分以外の者に寄せてしまったことによる、この出来栄えではなかろうか。
吉永小百合が、アイドル路線から本格女優へと方向転換してからの作品で印象に残るものは「天国の駅」と「動乱」だけである。
何故だろう、この大女優の作品で心に残るものが少ないのは。もちろん、吉永の責任ではあるまい。
なぜなら、この作品でも田中絹代の、用心深いが故の慎み深さと映画に出演する仕事のことしか頭にない狂気とをしっかりと演じ分け、観客に対して、田中の外面と内面との相克を表現していたではないか。
しかし、一方で清水宏(「清光宏」)との新婚生活での床のシーンでは、寒気すら感じる空々しいキスが繰り広げられる。
市川崑は、このようなキスシーンを求めたのだろうか。被写体が例えば岸惠子だとしたら、これと同じようなキスでOKを出しただろうか。
物語の導入部分に関しても酷い脚本だ。
常田富士夫のセリフが一本調子の説明調で、画面の構図は硬直死している。誰も動かない。ならばいっそナレーションでも良かったのだ。石坂浩二あたりに、東京に出てくるまでの田中家と当時の映画会社について解説をさせたほうがよっぽど気が利いている。
菅原文太の溝口健二(「溝内健二」)も、偉そうな感じだけで、危ない意味で何を考えているのか分からない男だ。
第一、小津安二郎以外の監督の名が全て変えられていることが不自然だ。恋多き女としての一面も描く上で、小津を除いた監督と色恋の関係があるように描いたから遠慮したのだろうか。でも城戸四郎(「城都四郎」)とは何もなかったように描かれているから、理由は他にあるのだろう。

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佐分 利信
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