浮草

劇場公開日:

解説

「お早よう」のコンビ野田高梧と小津安二郎の共同脚本を小津安二郎が監督したもので、ドサ廻り一座の浮草稼業ぶりを描いたもの。撮影は「鍵(1959)」の宮川一夫が担当した。

1959年製作/119分/日本
原題:Floating Weeds
劇場公開日:1959年11月17日

ストーリー

志摩半島の西南端にある小さな港町。そこの相生座に何年ぶりかで嵐駒十郎一座がかかった。座長の駒十郎を筆頭に、すみ子、加代、吉之助など総勢十五人、知多半島一帯を廻って来た一座だ。駒十郎とすみ子の仲は一座の誰もが知っていた。だがこの土地には、駒十郎が三十代の頃に子供まで生ませたお芳が移り住んで、駒十郎を待っていた。その子・清は郵便局に勤めていた。お芳は清に、駒十郎は伯父だと言い聞かせていた。駒十郎は、清を相手に釣に出たり、将棋をさしたりした。すみ子が感づいた。妹分の加代をそそのかして清を誘惑させ、せめてもの腹いせにしようとした。清はまんまとその手にのった。やがて、加代と清の仲は、加代としても抜きさしならぬものになっていた。客の不入りや、吉之助が一座の有金をさらってドロンしたりして、駒十郎は一座を解散する以外には手がなくなった。衣裳を売り小道具を手放して僅かな金を手に入れると、駒十郎はそれを皆の足代に渡して一座と別れ、お芳の店へ足を運んだ。永年の役者稼業に見切りをつけ、この土地でお芳や清と地道に暮そうという気持があった。事情は変った。清が加代に誘われて家を出たまま、夜になりても帰って来ないというのだ。駅前の安宿で、加代と清は一夜を明かし、仲を認めてもらおうとお芳の店へ帰って来た。駒十郎は加代を殴った。清は加代をかばって駒十郎を突きとばした。お芳はたまりかねて駒十郎との関係を清に告げた。清は二階へ駆け上った。駒十郎はこれを見、もう一度旅へ出る決心がついた。夜もふけた駅の待合室、そこにはあてもなく取残されたすみ子がいた。すみ子は黙って駒十郎の傍に立って来た。所詮は離れられない二人だったようだ。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.5賀原夏子さんのシミーズ姿が脳裏に焼き付いた。

2023年12月15日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ

3.5ラストが泣けるね

2023年5月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

杉村春子が珍しく良い役。

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あっちゃんのパパと

5.0隙間に寂しさがある

2023年3月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

知的

小津と言えば低い位置の固定カメラ、なイメージが強かったが、こちらはそこまで低くもない。むしろ見易い。

当時旅芸人の立場が随分と低かったのだろうことは分かる。
そんな時に公的機関郵便局に務めるなんて、そりゃあもうご近所さんでも評判のエリート扱いだ。

お前らとは人種が違う、と罵倒されたすみこが腹を立てて企てる訳だが、なんて酷いことを言うのだと鑑賞してても思ったものの、実の父だと言い出せないあたり、誰よりも罵倒した当人が己を恥じているという悲しさがある。

しかし描き方は俺だって辛いなど喚きもせず。
カメラは少し距離を置く。言葉にはしないけれども、眺める空間や影に寂しさが漂っている。
美しい。胸に迫るものがある。

それぞれみな胸に抱えるものがあっても、日々はあっけらかんと軽口を交わして過ごしていく。それが大人というものだろう。いちいち説明しなくても、互いにあなたの辛さは分かっていますよ、という心の触れ合いのようなものがそこにはある。
誰もが我慢を強いられた時代だったからこそ、他人にも寛容だったのかもしれない。

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こまめぞう

4.5赤と言う色彩

2023年2月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

単純

知的

難しい

赤と言う色の切なさ、艶やかさ、まるでピート・モンドリアンの絵画のよう。演技と言うものが何を意味するか全編に渡って教示してくれる作品。揺るぎの無い傑作、隙の無い完成品。ただただ美しい❗

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mark108hello
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