悪霊島

劇場公開日:

解説

瀬戸内海のある島を舞台に起る、連続殺人事件を追う金田一耕肋の活躍を描く。横溝正史の同名の小説の映画化で、脚本は「幸福号出帆」の清水邦夫、監督は「夜叉ヶ池」の篠田正浩、撮影も同作の宮川一夫がそれぞれ担当。

1981年製作/131分/日本
配給:東映=日本ヘラルド
劇場公開日:1981年10月3日

ストーリー

ジョン・レノン暗殺のTVニュースを見ながら、三津木五郎は一九六七年の恐ろしい事件を思い出していた。当時、大学を出たばかりの五郎はヒッピー姿で放浪中、瀬戸内海の刑部島で、金田一耕助と出会った。その頃は、ビートルズの“ゲット・バック”が流行っていて、五郎のトランジスタ・ラジオからもよく流れていた。金田一はその島出身で、アメリカ帰りの億万長者、越智竜平の依頼で人を探しに来ていたのだ。島とフェリーで結ぶ岡山県下津井港で、海に漂う仮死状態の男が上がり、「あの島には悪霊がとりついている、鵺の鳴く夜は気をつけろ……」と言葉を残して息を引取った。そこで、金田一は別の事件で来ていた磯川警部と出会い、死体の男が金田一の探している男と同一人物であることを聞く。磯川は浅井はるという市子でもぐりの産婆の殺人事件で来ていた。事件の前に、磯川は、はるから手紙を受け取り、二十年以上も昔、赤ん坊を取り上げたことで恐喝をしていたが、それが原因で誰かに狙われていると書いていた。はる殺しの目撃者はうす汚い風体の男を見たと言う。島へ渡った金田一は、島の実力者、刑部大膳の経営する宿に泊った。大膳は、かつて相思相愛の仲だった刑部神社の娘、巴(現在の巴御寮人)と竜平の仲を裂いて、守衛と結婚させたことがある。巴にはふぶきという双生児の姉がいるが、脳を患って離れに住んでいる。さらに巴には双生児の真帆、片帆という娘がいる。金田一が探していた男は、島にレジャーランド建設を目指す竜平の派遣した尖兵だった。祭りを控え賑わう島へ、その竜平が凱旋帰郷した。数日後の夜、巴の婿である守衛が竜平が寄進した黄金の矢で胸を刺されて死んでいるのが発見された。さらに、行方不明だった片帆も絞殺死体で見つかった。その頃、はる殺しの目撃者の見た男が五郎と判明した。五郎によると、死んだ母に自分は貰われた子であり、はるによって取り上げられたことを聞いたのだ。そして、はるの手帳に、自分の生まれた年に巴が子供を生んでいるのを見つけ、彼女が母親かもしれないと思い、再度、はるを訪ねると彼女は殺されていたという。二十数年前、巴はそこで、竜平の子を産んでいたのだ。二十数年前、竜平と巴は鵺の鳴き声を合図に逢瀬を重ねていた。結局、守衛の殺人犯はふぶきと断定されるが、金田一は納得出来ない。ふぶきが若い頃に過した広島に向った金田一は、原爆で彼女が死んだらしいことをつきとめる。島に戻った金田一は磯川にふぶきは存在せず、犯人は巴であると話す。巴は竜平と別れたショックで、刑部神社を継ぐ女と、ひたすら男を求める狂った女の二重人格となった。そして、責任を感じた大膳は死んだふぶきを復活させ、巴が狂うと、ふぶきに仕立て離れにかくまったのだ。大膳を本当の刑部神社のある洞窟に追い込んだ金田一は、そこで、腰の繋がった双生児の骸骨を見た。それこそ、巴が産んだ竜平の子だ。そして、狂った巴が抱き、秘密がバレるのを恐れて殺された男たちのいくつもの骨。竜平に依頼され金田一が探していた男もその一人だ。そして、守衛を殺したのは、彼が竜平にレジャーランド用地として神社の土地を売ってしまったのを正気の巴がつきとめて殺したこと。片帆は父を探しに島に来ていた兄弟の一人との逢引きを巴に見つかり、嫉妬に狂った彼女に殺されたことをつきとめた。そこへ、狂った巴が竜平を連れて現れた。また、二人を追って、巴を守ってきた吉太郎もやってきた。蝋燭の消えた闇の中、もつれる音がして再び火が灯ると、竜平ともみあった吉太郎の死体。そして、巴は双子の骨のところへ走りよろうとして深い穴に落ちて死んでしまった。放心した大膳は吉太郎の銃で自らを射つのだった。島を離れる金田一。“レット・イット・ビー”が流れている。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第5回 日本アカデミー賞(1982年)

ノミネート

主演女優賞 岩下志麻
助演女優賞 岸本加世子
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映画レビュー

3.0根岸季衣のミニスカート姿に驚いた。 岸本加世子の遺体の描写が猟奇的でそこだけがホラー映画のようだった。 室田日出男、古尾谷雅人、伊丹十三、 もう鬼籍に入ってしまった俳優たちが懐かしい。

2022年11月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

劇場公開日:1981年10月3日

1981年製作/131分/日本
配給:東映=日本ヘラルド

鹿賀丈史
室田日出男
古尾谷雅人
中尾彬
伊丹十三
石橋蓮司
岩下志麻
佐分利信
岸本加世子
中島ゆたか
根岸季衣
大塚道子
二宮さよ子
宮下順子
原泉
武内亨
嵯峨善兵
氏家修
草間正吾
鷹瀬出
浜村純
多々良純
篠田正浩監督

動画配信で映画「悪霊島」を見た。

鹿賀丈史が金田一耕肋を演じていたとは知らなかった。

根岸季衣のミニスカート姿に驚いた。

岸本加世子の遺体の描写が猟奇的でそこだけがホラー映画のようだった。

室田日出男、古尾谷雅人、伊丹十三、
もう鬼籍に入ってしまった俳優たちが懐かしい。

石橋蓮司はほとんどセリフが無かった。

映画序盤で「鵺の鳴く夜は恐ろしい…」と言い残して死んだ人や、
行方不明になった父親を捜す兄弟や、中島ゆたか、二宮さよ子、宮下順子
は必要な役柄だったのかなと思った。

満足度は5点満点で3点☆☆☆です。

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ドン・チャック

3.5鵺の鳴く夜の金田一

2021年7月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

知的

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しゅうへい

3.0不思議な余韻と共に、去り行く一つの時代と金田一

2021年3月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

興奮

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近大

5.0横溝正史もの、金田一耕助ものの最高峰の映画 「犬神家の一族」、「悪魔の手毬歌」と並ぶ名作です!

2021年2月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

レットイットビーが流れ、映画が終わろうとしたとき、嗚咽していました
感動です、それも圧倒的な
横溝正史もの、金田一耕助ものの決定版であると自信を持ってお勧めできる作品です

70年代の横溝正史もの、金田一耕助もの映像作品の一大ブームは、1975年に始まり1979年に終わりました

ATG、角川、東宝、松竹、東映から9本もの映画が公開され、テレビシリーズも数シーズンも放映されたのです

さしものこのブームにも、観客にも製作側にも飽きが来て沈静化しました
1979年の「金田一耕助の冒険」は角川映画としての終止符でした
パーティーの終了を自ら宣言したものでした

角川が自ら製作した金田一耕助ものの映画は、1976年の「犬神家の一族」とその1979年の「金田一耕助の冒険」の始まりと終わりの2作品だけです

それが2年後の1981年、本作が角川映画として公開されたのです

それまでの金田一耕助ものは全て戦後すぐの作品でしたが、本作の原作は1979年から1980年にかけて角川の小説誌で連載された全くの新作です

これが翌1981年5月に単行本となり、10月に映画化されて公開されたのです

本当のところ、原作者の横溝正史への慰労と感謝の意味を込めた新作長編小説の発注であったと思います

パーティーは既に終了したのです
大勢の客はすでに引き上げてしまい、大宴会場は後片付けが始まっています

ところがこの新作小説が、素晴らしい出来ばえであったのです
金田一耕助ものの集大成というべきもので、古い因習と現代との相克、淫靡さ、怪奇さ、過去の名作のエッセンスを散りばめたような舞台と物語の展開
もちろん映画化に好適な内容です
この頃には角川も映画製作の経験を積んでいたので、角川が自ら製作する、それも「犬神家の一族」のように出資だけでない本当の製作者としてこの小説を映画化するということになったように思われます
この頃の角川映画は、1980年の超大作の「復活の日」は今一つ大ヒットには至らず、続く「戦国自衛隊」も同様
ここらで夢をもう一度という状況でもありました
このような経緯で本作は映画化がなされたのです

本作は、1980年12月8日のジョン・レノン暗殺のニュース速報のシーンから始まります
原作連載中の事件でした
本作では主要登場人物の三津木五郎が、この1980年から1969年の事件を回想するという構成になっています
11年前の彼は、ビートルズに影響を受けたヒッピーであったから、そのニュースでかっての忌まわしい記憶が蘇ったという設定です

そして1969年のビートルズのヒット曲「ゲットバック」が流れて回想が展開されていきます
ラストシーンには「レットイットビー」が訳詞付きで流れます

これだけで莫大な使用権料が掛かっているはずです
もちろんどちらの曲もビートルズのオリジナルではありません
それでも使用権料は高額です
映画の展開に必要不可欠でない限り普通なら使用を回避する楽曲です

しかし観終わって感じることは、これらの楽曲は本作に絶対必要であったと言うことです

1969年の刑部島
源平合戦の昔から連綿と続く因襲の島
それと現代の人間との対比
それが音楽を流すだけでものの見事に達成されているのです
費用対効果でみるなら安いくらいです

序盤、「ゲットバック」が流れ近景の社寺、遠景の石油コンビナート、そして三津木のヒッピー姿の登場
このシーンだけで、松竹の「八つ墓村」で主人公を羽田空港の誘導員に設定して、現代と過去の因襲の村との対比を構成していったものを一瞬で解決してみせているのですから!
まさに一刀両断、鮮やかな演出としか言い様がありません

冒頭のレノン暗殺のシーンはこの為の導入であった訳です
しかし本作公開の約2ヵ月後の1981年の末に横溝正史が永眠しています
レノン暗殺のニュース速報のシーンは、今日の私達からすれば、映画公開後の出来事である横溝正史の永眠の衝撃を伝えているように見えてしまうのです
時系列からすればおかしいのは分かっていてもそう感じてしまいます

そしてエンディングの「レットイットビー」
歌詞の内容が本作のテーマとシンクロしています

現代人が失っているもの
それは静かで激しい拒絶だ

それへの心優しいメッセージなのです

そして因襲の島の事件が全て終わり、その島から金田一耕助が去っていくシーンに見事にマッチしています

しかし、この曲は1970年5月の発売です
つまり本作の事件があった1969年の夏よりも後の曲です

この曲はビートルズの事実上の解散1ヶ月後の発売でした
まさに祭りの後
全てが終わったという意味での考え抜かれた選曲だったわけです

波間に漂う打ち捨てられた神社の御輿
そして石油コンビナート

全てが、あるがままに拒絶できずに、過去は夢幻のように消え去っていくのです

金田一耕助もまた後ろ姿で消えていくのです

警察車両の中で三津木は彼の名を叫びますが、聞こえないのです

これで本当に横溝正史もの、金田一耕助ものは完全に終わってしまった
1979年のなんとなく不本意な幕切れではなく、完全燃焼しつくした
そんな満足感に包まれる本作の終わり方です
嗚咽させられたのは半分はその感動であったのだと思います

篠田正浩監督のまどろむことのない的確な演出、宮川一夫の目の覚めるような美しい撮影、端役にいたるまで見事な配役と演技

何より岩下志麻の美しさ!
41歳で、妖しい淫靡さを秘めた腰が抜ける程の美貌、肌の滑らかさ
この美しさが無ければ本作は決して成り立たなかったと思います
さらに名演振りは目を見張り感動を覚えるほどのものです

鹿賀丈史の金田一耕助は、どうしても石坂浩二や古谷一行の面影を求めてしまうので、中盤までは違和感を感じてしまいます
しかし、後半になればもう金田一耕助そのものだと受け入れているはずです

横溝正史もの、金田一耕助ものの最高峰の映画
「犬神家の一族」、「悪魔の手毬歌」と並ぶ名作です!

1981年の公開当時、本作は高林陽一監督の「蔵の中」と併映されました
こちらも横溝正史原作の作品です
金田一耕助こそ登場しませんが、横溝正史の世界観が濃密に表現されています
ぜひ併せてご覧ください

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