愛の渇き

劇場公開日:

解説

三島由紀夫の同名小説を藤田繁夫と「夜明けのうた」の蔵原惟繕が共同で脚色、蔵原惟繕が監督した女性ドラマ。撮影もコンビの間宮義雄。

1967年製作/98分/日本
原題:Longing for Love
配給:日活
劇場公開日:1967年2月18日

ストーリー

松本悦子は夫良輔の死後も杉本家に住み、いつか義父の弥吉とも関係をもっていた。杉本家は阪神間の大きな土地に農場をもち、広い邸宅の中には、元実業家の弥吉、長男で大学でギリシャ語を教える謙輔夫妻、園丁の三郎、女中の美代、そして悦子が、家庭のぬるま湯の中で、精神の飢えを内にひめながら暮していた。その中でも悦子は弥吉との関係を断ちがたく、その心は愛に渇ききってしまっていた、その悦子がある日ふと心を動かしたのは園丁の三郎であった。若くひきしまった身体粗野なたくましさは、悦子のいる世界とは異質であるが、何か彼女の渇いた心を満たす湧水のようであった。買物のついでに三郎に靴下を買いあたえた悦子は、三郎に深く魅かれていった。また三郎もそんな妖艶さをひめた悦子に心まどわされるのであった。だが悦子は女の直感で女中の美代が三郎と恋仲であることを見破った。美代は三郎の子供をみごもっていた。表面静かに見える杉本家にとってこれは重大事であった。とりわけ悦子には、美代が三郎の子供を妊ごもったことに、深い嫉妬を覚えていた。胎児を始末させた悦子を恨みながら美代は郷里へ帰った。美代から愛を奪った悦子。だが三郎も家族も何もなかったように働いている。その頃、弥吉は農園を売り悦子を東京に連れてゆく計画をたてていた。その東京行がせまった頃、悦子は三郎に会った。その頃邸では、財産とられた謙輔夫妻を中心に、人間の空虚なうめきが狂い泣いていた。三郎と会った悦子は自分の心の渇きを訴えたが三郎の強い抱擁がただ男の暴力だと知った悦子は、三郎をつき放した。弥吉が血相を変えてかけつけた。鍬をふりあげた弥吉の手をとった悦子は自から、三郎の肩に下した。絶命した三郎の始末を済ませた悦子は、弥吉に別れを告げると自分を始末するため去っていった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0原作者の三島由紀夫やゴダールが絶賛したのも当然だと思います

2020年8月18日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

見応えが有りました
傑作だと思います

脚本が、原作の要点を的確に押さえてあり見事です
演出もまた優れています
ヘリコプターの空撮で主人公の悦子を見下ろすアングルから、そのまま一家の晩餐のテーブルを見下ろすシーンにつなげるシーンや、洗濯して干されたシーツが風に煽られて悦子の頬を叩くシーン、靴下とザボンの性的暗喩を見事に映像化してみせる演出手腕には感嘆しました
大きな夏みかんのザボンを切り、汁の滴る果肉を手で開かせるなんとエロチックなことか!

白黒作品ですが、3回画面が真っ赤に染まるカットが挿入されます
夕映えの坂道を下りながら、祭りの夜に三郎の背中に爪を立てて血を流させた回想と、三郎と腕を組んで二人で歩いて行く妄想をする時のごく短い2回のカット
そしてラストシーンの朝焼けの中をツカツカと独り歩く姿の短いカットです
真っ赤な画面こそが本当の悦子の姿であり、白黒の本編は悦子の仮の姿であったということです
見事と言うほかありません
その白黒映像も撮影の腕が良く、階調豊かに撮れています

浅丘ルリ子の演技は、この難しい作品を破綻させることなく成立させており素晴らしいものです
単なる美人女優という枠を超えて、彼女はが大女優になった作品だと思います
鎖骨の浮き出し、細い白い頸、へそと下腹部の滑らかさ、長く細い脚の曲線・・・感嘆すべき肉体の美でした

三郎役の石立鉄男は大変に名演
若過ぎて彼だとは思えないです

原作者の三島由紀夫やゴダールが絶賛したのも当然だと思います

お祭りは豊中市熊野町の八坂神社と思われます
毎年10月上旬にある喧嘩まつりがそれのようです
川は今では用水路みたいになっている天竺川でしょうか
阪急宝塚線に服部霊園駅は実在しません
駅標は曽根と豊中の間の駅となっていますから岡町駅のことです
今は高架になって近代的な駅舎になっています
周囲も住宅街で建て込んでいます
1967年公開ですが、撮影は1966年のようです
阪急梅田駅が、まだ地上にあった頃の映像もチラリと写ります
今のような3階の高いホームは1972年に完成したそうです
当時はまだ地下鉄御堂筋線は新大阪駅までだったそうです
1970年の万博の時に、江坂駅から直通で北大阪急行が千里中央まで延伸したので、今は桃山台駅からからの方がその辺りの最寄り駅になっています
万博以降この辺りも開発が進んで、劇中の空撮にあるような田舎の光景はなくなって、大きな一戸建てや、マンションが起伏の多い丘陵地帯に立ち並んでいます
劇中、杉本家の屋敷から大阪城が大きく見えるのは実際にはあり得ません
舞台が大阪であるという説明なのでしょうが、却って土地勘のある人間にとってはえ?と混乱してしまいます

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あき240

3.0和製『チャタレイ夫人の恋人』かと思った・・・

2018年10月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

萌える

ヌーベルバーグの影響を受け、映像表現は面白いけど、つまらない原作をいかに料理したかという、それだけの映画としか思えない。最後には人間の醜い嫉妬が悲惨な結末へとつながるが、面白かったのは、自由で自堕落な生活をする家族。特に謙輔(山内明)が自嘲気味に言う台詞がいちいちおかしい。

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kossy

2.0利己主義な未亡人

2018年6月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

目力があり色気たっぷりの浅丘ルリ子。主人公の気持ちをナレーションに語らせるのが少し鼻につく。三郎をくわで殺した悦子が朝焼けの中進む画で幕。

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mimiccu

3.0原作は三島由紀夫

2018年2月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

萌える

主人公(浅丘ルリ子)は次男の嫁だったが、次男が亡くなり、そのまま婚家にとどまり、義父の愛妾となった。
婚家には義父、長男夫婦、離婚した長女と子供、使用人の男女が住んでいた。
主人公は使用人の若い男に興味を抱く。
ヌーベルバーグ色の濃い一本。

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