劇場公開日 2007年4月20日

ロッキー・ザ・ファイナル : 映画評論・批評

2007年4月17日更新

2007年4月20日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー

ロッキーの“重いパンチ”に胸打たれる

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まさか齢六十のシルベスター・スタローンがリングに上がるとは。ましてや相手は現役の世界王者という設定なんてありえない。あなたが「ロッキー」のファンならば、間違いなくこうした“嫌な予感”を抱いているはずだ。しかし心配は無用。なぜならこれは、仮にロッキー・バルボアがリングに上がらなくても成立するストーリーだからだ。いや、正確には“リングに上がるまで”を描けばOK。つまり現役チャンプ相手の勝敗など、ここでの彼にとってはたいした問題ではないのだ。

ロッキーはいかにも覇気のない熟年男として登場し、情けないほど惨めな姿をさらす。序盤早々に愛妻エイドリアンがガンで他界していることが告げられる陰鬱な墓参りのシーン。続いて義兄ポーリーを伴いフィラデルフィアをさまようロッキーが訪ねるのは、エイドリアンとの思い出の場所。今はサラ地となったスケート場跡地を指さし、第1作での懐かしのデート・シーンを回想する。もはやロッキーは記憶の世界に住むゾンビのようだ。

そんな年老いた男が胸の奥で燻っていた闘志を煮えたぎらせ、誰も賛同してくれないリング復帰を決意する。ビル・コンティのおなじみの勇壮なテーマ曲。生卵の一気飲み。フィラデルフィア美術館広場でのガッツポーズ。これは時空を超えたファンタジーなのか、と一瞬目眩を覚えるが、ただ完全燃焼したいだけなのだというロッキーの悟りの境地に気づかされ、不意に涙腺が緩む。あなたが「ロッキー」のファンであればあるほど、彼自慢の“重いパンチ”に胸打たれずにいられないだろう。まさに墓場から始まるこの映画は、ロッキーの奇跡の生還を感動的に描いてみせたのだ。

高橋諭治

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