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◆誰も知らない
平均評価[3.8]

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作品情報


[ネタバレ!]
豊かな国の貧困は親の喪失
印象:
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
PCから投稿
評価:[4.0]

有料契約をしなくても本格的な作品を放映しているのがすごいと思うし、若干気が引けるが、GYAO!でキネマ旬報ベストテンに入った作品群を放映しているという事と、柳楽優弥が14歳でカンヌ国際映画祭の男優賞最年少という受賞をしたのは薄っすらと新聞かテレビでやっていたかなと思い出したので観てみる。柳楽は『おんな城主 直虎』で私は認識したが、その後『ピンクとグレー』も観た。今の風貌のほうがかなり個性が出ていて、しかし14歳の頃も少し変わったルックスではあるかも知れない。是枝裕和監督については、何も最初から最後まで観た映画はないが、『海街diary』が異母姉妹のドラマらしく、どうしてそうした複雑なことを描くのか、スケベ親父のせいだし、女も女だと思って、そういうのを美化して描くのは偽善的だと思い、印象の良くない監督なのだが、少し調べたらこの映画も、シングルマザーになったのもわかるようなルーズな母親が失踪してしまい、残された子供4人の苦労の話らしい。現代の家族崩壊の病理を追った作品だろう。映像は、薄暗い色合いで高級感はない。ドラマの筋からいってわざとなのだろうか。海街にしても、この映画にしても、異母とか異父とかあるようでも4人という兄弟姉妹の人数は現在ではかなり多いほうになってしまっているだろう。淡々と独自の生活が続き、面白いなとは思えない映像が続く。映画というよりもリアルに描いているのだろう。見過ごしたが、出てくるコンビニは、14年後の現在のような、ファミマやローソンに吸収されていく以前のどこかのコンビニなのか。それはすでに歴史が動いている気がした。背景に音楽を流さない作りのようだ。主人公が父親に会いに行ったと思われるシーンがあるが、タクシー運転手をしていた。と思ったら、パチンコ店員の別の男も次に会いにきて、異父兄弟の別の父なのか。複雑な社会になると、よくわからない映画になる。理解不可能になるだろう。結局、母親の失踪で金が無くなったので、仮にまわっているのだろう。パチンコ店員はおじかなんかか。わからずじまいだ。元愛人か。しかし、こうした設定を苦労に強いとか、偽善的に映像化するのは良くはないだろう。というか、そう思ってみてはいけないだろう。不憫だとみれば、映像化の意味もあるのかも知れない。健気だとはいっても、悪いのはルーズな母親であり父親が元凶なのである。そこを見過ごしてはいけない。失踪したと思ったら、いったん戻ってきたが、長男は複雑な表情をしている。弟や妹はやや幼くて感情がわからない。しかし、母親はルーズながらも、長男の髪を切ってあげたりしている。貧乏だと1000円カットにもいけない。映像は薄汚くリアルに徹し続けている。1ヵ月も家をあけていたらしく、長女も不信がる。長女のさみしさを表すような演技も自然にみせている。また一重瞼の眠たい気味なそんな顔の子役である。数々の男と関係し、金もそれでなんとかしようとする母親だったとしたら、子供は辛いわけである。学校にも行かせてもらっていない。「だいたいお母さん勝手なんだよ」。「あんたのお父さんだっていなくなって勝手でしょうよ。学校なんかいかなくたって偉くなった人だっているのよ。田中角栄とか。アントニオ猪木とか。知らないか。」そしてまたどこかへ行ってしまった。四人の子供たちだけの生活が続く。どん兵衛のつゆにごはんを混ぜて食べるシーンや、長男が末っ子の5歳の女の子と手をつないで歩くシーン。女の子がアポロチョコがあと一粒だといとおしそうに口に入れるシーン。コンビニの名前は「新鮮組」だった。現在はローソンのフランチャイズをしているらしい。2004年。小学生の活動の場にコンビニが影響しているシーンが幾つかでる。生活苦でもないのに万引きを催促する悪い仲間。だがその時は主人公は万引きを断る。少し調べてしまったが、やがてその防波堤が、貧困ゆえに崩されていってしまうのか。やがて彼らは中学生になり、学校に行っていない主人公を嫌いはしないが相手にしなくなる。一方で、いじめを受けている女子中学生をみかける。アパートには隣への挨拶は母親が主人公を連れてしていたが、若干の遭遇があっても、部屋の中の状況までは近隣も気づかない。主人公はコンビニのアルバイトの募集年齢に1年満たない。タイトルが「誰も知らない」の意味が少しわかってきたような気がしてくる。コンビニの親切な女性の店員にも母親が帰ってきたと嘘をついてしまったりする。四人兄弟姉妹で暮らしたいからと、児童相談所にもいかない。リアリズム映像で続けるが、こんな子供たちが本当にいるのかというのが、リアルなのかどうかというのが交錯している。豊かな国の貧困は、家庭崩壊が原因の一つだ。親と子は壊れている。しかし兄弟姉妹はこの映画では壊さないのだ。しかも異父である。『海街』にしてもなぜ是枝監督はこうしたモチーフを繰り返したのか。とうとう電気、水道などが止められる。知り合いになっていく女子中学生は、いじめで制服を着ながら学校に行っていないようである。ここら辺も豊かな国の病理だろう。さらに女子中学生が貧困の兄弟姉妹のために援助交際でお金を作ってしまうところは、怒りと悲しみが混在してしまう。そして主人公はそれを察してお金をうけとらずに走って別れてしまうのだ。この場面は思春期の衝撃とも受け取っても良い。感情もなく淡々と描いているが。豊かな国の病理。14年後に既に末っ子役や次男の役者は引退しているようである。それもリアリズムになんとなく感慨を与えるようだ。ここで気づくと背景に音楽が流れている。なぜか状況はますます苦しいのだが、映像が若干明るくなっているような気がする。技術的な差異に過ぎないだけか。どん兵衛の天ぷらを生でかじる次男。そばが食べたいというとどん兵衛。カップ麺がごちそうで、おもちゃのピアノで遊ぶ次女。弟や妹に献身的に尽くしてきた長男に、いら立ちが積もってしまう。服を売りに行くんだといって長女と長男は喧嘩になる。実際にあった事件がモデルになっている面があるそうだが、誰もまさか学校に通っていない14歳くらいの人がいるとは思えない。なぜ野球を知っていたかなどは突っ込みどころにもなるが、偶然に長男は少年野球のチームに助っ人で出してもらえて喜んで家に帰ると、末っ子が家の中で事故を起こして死んでしまっている。長男は母親の愛人宅に公衆電話するが、お金が切れてしまう。そして長男はそれまでしなかった万引きをして店を飛び出す。手を見つめる長男。女子中学生と再会する。以前の援助交際えの金を欲しいという。それでアポロチョコをいっぱいコンビニで買う。次女の弔いをするのだ。時すでに遅しなのか、母親から仕送りのような数万円が届く。長男に、「頼りにしてるわよ」と書いてあった。トランクに詰められた次女の遺体と、女子中学生と一緒に長男は電車に乗って空港に行く。飛行機の飛ぶ横の草むらを二人で掘って、次女を埋葬する。脈絡はわからないがなんとなく、古い洋画の『スタンド・バイ・ミー』が思い浮かんだ。私は複雑な周辺が生んでしまう複雑な物語は好まない。複雑を見せてくれても好みはしない。このどうしようもないタイミングでようやく映像は美しく映される。飛行機という巨大資本と、コンビニの廃棄おにぎりをいくつも礼を言ってもらう残された3人の兄弟姉妹と女子中学生の4人。その後はわからない。豊かな国にしておきながら2004年当時いまだに貧困映画が作られていた。

2018/01/29 Takehiroさん

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