劇場公開日 1980年12月23日

「当ホテルはお客様をお狂わせ致します…」シャイニング 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5当ホテルはお客様をお狂わせ致します…

2019年3月8日
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鑑賞方法:DVD/BD

怖い

難しい

原作はスティーヴン・キングの代表作。
天才スタンリー・キューブリックが映画化し、映画史上最も怖い映画にも選出。
代名詞とでも言うべきあまりにも有名なあのシーンは幾度となくオマージュやパロディーに。昨年はスピルバーグの『レディ・プレイヤー1』でも引用。
ホラーの金字塔と絶賛されながらも、原作者キングは本作を酷評。
色んな意味で、映画史に残る名作。

冬になると外界から閉ざされるリゾートホテル。
冬の間、管理人をする事になった小説家ジャックと、その妻ウェンディ、幼い息子ダニー。
ジャックにとっては執筆に集中出来る最高の環境。
妻子にしてみても、リゾートホテルを言わば貸し切り状態。
考えてみれば、これほど贅沢で美味しい仕事は無い。
…その筈だった。
このホテルには、何かが…。
その何かによってジャックが狂気に囚われ、遂には妻子を襲い来る…!

キングの酷評は別として、まず難点/不満点から。
やはり全体的に説明不足。
ホテルに巣食う何かとは…?
まだホテルが建つ前、この辺りに住んでいた先住民の怨念か、以前ホテルで起きたという凄惨な事件の呪いか、それともそれら以外の何かか…?
解釈は幾らでも出来るが、はっきりとした描写は無い。
ダニーとホテルの料理人が持つ不思議な能力(=シャイニング)についても説明は皆無に等しく、唐突でもある。
ジャックが狂気に取り憑かれるまでも早い。一体、いつ…? 何がきっかけで…?
ラストカットの写真。
…などなどなど。

原作は大ボリュームと聞く。
忠実にやったら、とてもとても2時間には収まらない。
後にキングも携わったTVシリーズ版は確か5~6時間。
大部分の省略、大幅な脚色は致し方ない。
でもキューブリックの狙いは改変より、インパクトだったのでないかと思う。

不穏な音楽と空撮から始まるOP。
ゴージャスだが、何処か異様なホテル。
遂に起き始めた怪現象の数々。
血の濁流。
双子の少女。
バスタブの腐乱女。
時折姿を見せるホテルの“住人たち”。
ダニーがブツブツ呟く“REDRUM(レッドラム)”。逆から読むと、その意味は…。
クライマックスの極寒の雪の夜。敷地内の迷路。
だけど何と言っても極め付けは…

ジャック・ニコルソン!
数々の名作で類い稀な名演を魅せてきたこの名優だが、本作は中でもズバ抜けている。
誰しもジャック・ニコルソンと聞くと、本作での怪演、映画史上最恐顔面と言っていいあのシーンを思い出すほど。
あまりにもヤバ過ぎて、何だか笑えてもくるくらいだ。
にしても、キング、キューブリック、ニコルソン…改めて思うと、スゲートリオ!
奥さんも負けず劣らずの絶叫怪演。
ダニー少年も、「REDRUM!REDRUM!」。

キューブリックの不気味ながらも華麗な作品世界。
クライマックスの雪の夜の迷路は、映像も撮影技術ももはや語り草。

万人受けするようなタイプのホラーではないかもしれない。昔友達に薦めた時、全然怖くなかった、つまらなかったと言ってたっけ。
怖いというより、何かこう、ヤなもん見ちまったなぁ…と脳裏にこびりつく不気味さ。
一度見たら忘れられないインパクト。
本当に色んな意味で、ホラーの名作/金字塔と呼ばれる所以。

続編小説が映画化される事になり、来年公開予定だとか。
このホテルでのトラウマを抱えたまま大人になったダニーのその後の物語。
これは楽しみだ!

近大
浮遊きびなごさんのコメント
2019年3月13日

近大さん、きびなごです。
返信遅くなってしまってスミマセン……。

『ミザリー』はサスペンスの傑作ですよね! キャシー・ベイツの名演はもちろん、原作再現と映画的表現をキッチリ両立させていて素晴らし。そしてハンマー恐ろし。『黙秘』とセットでもう一度観たいなあ。
ちなみに『スリープウォーカーズ』は未見。「キング脚本だけどザッツB級映画なミック・ギャリス監督だしそんなに面白くなさそうかのう」と思っていたんですが、近大さんのレビューを読む限りはそこまで頑張って観なくてもよさそうですね ('~`;)

やっぱりキング原作がどんどん映像化されるのはいちファンとしては嬉しい限りですよ。映画だけでなくドラマシリーズの新作もかなりの数です。ペニーワイズ様々!
しかしまあ、『ドリームキャッチャー』『ダークタワー』等々、アタリハズレが激しいのもキング原作映画。期待し過ぎず期待するのが丁度良さそうかな……。
個人的には『ペットセマタリー』が特に楽しみなんですが、原作に近くなるとドン底に重苦しい話になってくるのでご注意くださいね。ちなみに原題『Pet Sematary』はスペルミスなんですが、そこも作品的な意図があったりします。

しかし近大さん、花粉症ですか、しんどそうですね……。
僕自身は平気、だったのですが、ここ1,2年で急激にクシャミと目の痒みに襲われるようになり始めました。どうやら遂に僕も花粉症の世界に入門を果たしてしまったようでェックショイッ!

色々忙しい季節ですが、ご自愛くださいね。
返信お気になさらず! それでは!

浮遊きびなご
浮遊きびなごさんのコメント
2019年3月10日

近大さん、きびなごです。
キング原作映画レビュー5本、読ませていただきました!
いやはや、どのレビューも読みながら思わずJ・ニコルソンのようにニヤニヤしながら読んでしまいましたね(ヤバい人か)。原作未読としての視点も楽しかったです。

『黙秘』のK・ベイツ&J・J・リーは最高ですね!
原作は傑作で、最後はボロ泣きしながら読んでました。
『ゴールデンボーイ』のI・マッケランは最恐ですね!
映画は原作以上に後味の悪いラストになってますよ。

『シャイニング』のラストの写真については自分なりの解釈があるのですが……思い切りネタバレになるので自粛。ちょっとだけ書くと、中盤あたりのシーンでジャックが語るある"感覚"が写真の答えなのかな、と考えてます(その解釈もまた原作とはまるで異なる話になるのですが)。

なお、続編『ドクター・スリープ』は『シャイニング』とはかなり毛色の違う作品になる可能性があるのでご注意を。
原作はダニーのその後の人生と、全く異なる新たな怪異との対決を描いた作品で、ホラーというよりはホラーサスペンスといった感じの物語になっています。映画版『シャイニング』を軸にすると物語を進めづらい部分が出てくるので、映画と原作どちらの『シャイニング』に寄せて描く気なのかとちょいと不安に感じている部分も有ったり無かったり。

勢い余ってネタバレを書く前にこの辺で。
花粉症やら黄砂やら期末の七面倒臭い業務やら諸々お気を付けくださいね。それでは!

浮遊きびなご