さらば、わが愛 覇王別姫

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劇場公開日:

さらば、わが愛 覇王別姫

解説

2人の京劇俳優の波乱に満ちた生きざまを描き、中国語映画として初めてカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した一大叙事詩。京劇の古典「覇王別姫」を演じる2人の京劇役者の愛憎と人生を、国民党政権下の1925年から、文化大革命時代を経た70年代末までの50年にわたる中国の動乱の歴史とともに描いた。デビュー作「黄色い大地」で注目され、本作の成功によって中国第5世代を代表する監督となったチェン・カイコーがメガホンをとった。

1925年の北京。遊女である母に捨てられ、京劇の養成所に入れられた小豆子。いじめられる彼を弟のようにかばい、つらく厳しい修行の中で常に強い助けとなる石頭。やがて成長した2人は京劇界の大スターとなっていくが……。

時代に翻弄されながらも愛を貫こうとする女形の程蝶衣(チェン・ディエイー)をレスリー・チャンが演じ、恋敵の高級娼婦役でコン・リーが出演した。製作から30周年、レスリー・チャンの没後20年の節目となる2023年に、4K版が公開。

1993年製作/172分/中国・香港・台湾合作
原題:覇王別姫 Farewell My Concubine
配給:KADOKAWA
劇場公開日:2023年7月28日

その他の公開日:1994年2月11日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第66回 アカデミー賞(1994年)

ノミネート

外国語映画賞  
撮影賞 クー・チャンウェイ

第51回 ゴールデングローブ賞(1994年)

受賞

最優秀外国語映画賞  

第46回 カンヌ国際映画祭(1993年)

受賞

コンペティション部門
パルムドール チェン・カイコー
国際映画批評家連盟(FIPRESCI)賞 チェン・カイコー

出品

コンペティション部門
出品作品 チェン・カイコー
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(C)1993 Tomson Films Co.,Ltd.(Hong Kong)

映画レビュー

5.0レスリー・チャンの全ての仕草に魅了される172分

2023年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

興奮

今回の4K版には、公開30周年、レスリー・チャン没後20年という副題が付いている。それは実に理に適っていて、時代に翻弄されても、演じることへの情熱と、最愛の相方に対する変わらぬ思いを体全体、目線、仕草、台詞、笑顔、憂い、涙で表現するチャンには、改めて魅了される。30年前の公開時、自分はいったい何を見ていたのか?という気持ちになるほどだ。それだけ、中国の激動期を生き抜き、散っていく京劇俳優の蝶衣を演じるチャンの、魂を投入したのような熱演には、独特の美しさと儚さと、凄みがあるのだ。

蝶衣と相方、小楼を通して描く、日中戦争から文化革命へと流れていく中国のリアルな現代史には、文化革命当時に多感な少年時代を過ごした監督、チェン・カイコー自身の体験が投影されているとか。そんな監督の創作意欲を全て映像に結実させるには、172分の上映時間は短いという意見もある。しかし、改めて見てみると、展開はスピーディで、かと言って短すぎるとも、端折っているとも感じさせない。これは、演出と演技に加えて、編集のペイ・シャオナンが的確な仕事をしているからだと思う。

中国でアートシネマが自由に作れていた時代を代表するチェン・カイコー渾身の歴史絵巻は、映画の尺についても改めて考えさせられる傑作だ。

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清藤秀人

5.0映画的な迫力と美しさに圧倒される傑作

2023年7月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

興奮

知的

京劇の古典「覇王別姫」を演じる2人の京劇役者の愛憎と人生を、国民党政権下の1925年から、文化大革命時代を経た1970年代末までの約50年にわたる中国の激動の歴史とともに壮大なスケールと映像美、音楽で描いた一大叙事詩です。

遊女である母に捨てられ、京劇の養成所に入れられた少年・小豆子が、厳しく過酷な稽古に耐えかねて逃げ出した町中で、初めて本物の京劇を目撃するシーンの映画的な迫力と興奮に、まず鳥肌が立つことでしょう。また、スターとなった主人公の2人が一転、文化大革命時に反革命分子として大衆の前で糾弾されるシーンは圧巻。実の父親を裏切って糾弾した苦い体験を持つカイコー監督自身の思いも込められており、その不条理な描写に圧倒されます。

そして今回の4K公開で最大の見どころは、やはり主演のレスリー・チャンの美しさです。小豆子が成人し、姫を演じる女形となった程蝶衣。覇王を演じる段小樓へ秘かな思いを寄せる程蝶衣をレスリー・チャンが、狂おしいほどの妖艶さと儚さで演じています。

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和田隆

4.0流転の只中で、変わらぬ愛を

2024年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

1920年代から1970年代の中国を舞台に、京劇の古典「覇王別姫」を演じる程蝶衣(チョン・ティエイー)と段小樓(トァン・シャオロウ)の愛憎を描いた作品。

彼らの愛憎は、必然的に当時の政治状況とも絡み合い、何度も流転する様は諸行無常の響きあり。

程は遊郭で働く母に身売りされ、幼年期/幼少期は京劇の芸を習得するために過酷な修行をする。段も似た境遇だと思うが、二人の修行は師匠らの体罰を含む虐待でしかない。しかし彼らは必死に芸に励むことで「覇王別姫」の大役をつかむのである。彼らが演じる「覇王別姫」は凄い。いや京劇自体が凄い。絢爛な衣装とメイクで浮世離れしているが、セリフとしぐさと音楽と舞台装置で確かな世界観を築いている。まさに「唱・念・做・打」の表現。カットのテンポのよさもあって、スクリーンに釘付けにされる。

1920年代から1970年代の中国を舞台にすることは、パンフレットに記載される藤井省三のコラムに則れば、「軍閥政府期」「統治期」「盧溝橋事件後の日中戦争期」「戦後の国民党統治期」「中華人民共和国・建国」「文化大革命」の時代を描くことでもある。時代によって統治権力は変わり、戦争や紛争が起き、彼らの人生や京劇のあり方も変わる。

段は日中戦争期、日本軍の軍人の命令で彼らの目の前で演舞をする。それは彼が生き延びるための苦渋の選択であるが、戦争が終わり国民党統治期になると、逮捕の対象となり裁判で糾弾されることになる。このように時代の変遷によって、統治権力が変わると称賛から糾弾の対象になるのはあまりにも不条理だ。それは京劇にも言える。京劇は中国の古典芸能であるはずなのに、「文化大革命」では労働者のための芸術ではないと迫害の対象となる。さらに彼らが保身のために、彼ら同士が非難を言い合うことに転じるのだから尚更、理不尽だ。

彼らが悲劇的な結末に向かうまでを辿ってみる。
程と段は舞台上でのパートナーである。しかし段は遊郭の女・菊仙(チューシェン)を妻にすることで、綺麗な三角関係になっていく。程と段に関係は儚い。彼らは舞台の関係でしかないと言えばそうではあるが、幼年期や幼少期は生活を共にしたほど私的な関係
であった。だから程は舞台の延長として生活でも親密な関係を求めるが、段は大人になって舞台と生活を切り離す。さらに菊仙の関係の介入は、舞台上でしか男女の関係を演じられない程とは対称に、法的にも身体的にも男女の関係になれる「女」の優位を際立たせる。
三人の関係は、師匠や袁世凱、軍人、大衆との関係とも絡み合っていく。それにより、各人の思惑や誰が権力を把持しているかによって愛憎が流転することも見事に描くのである。

印象的なのは程と段の弟子の存在だ。彼は程や段と1世代ぐらい年が違うが、同様に幼年期は厳しい修行に励む。しかし大人になって程や段の端役で演じていると反発していく。程や段は自分を主役にするつもりはないと言ったり、厳しい修行は時代遅れと言ったり。両者の言い分は理解できるのだが、実際に彼が程の役を奪うことは驚きだった。彼に能力がないとは言わないが、それ以上に時代の政治状況が運命を分けることを痛感した。さらに彼は「文化大革命」の時、共産党に加担し程や段を糾弾するのである。権力への迎合。世代間で意志を引き継ぐのは困難なのである。

彼らは「覇王別姫」と同様に悲劇的な結末を迎える。それを回避する手立てはなかったのか。時代をひとりの個人が変えるのは難しい。しかし時代をつくるのもひとりの個人たちであるのだから、京劇としての「覇王別姫」にある古典的な本質を見据えて懸命に生きていくしかないのではないだろうか。愛憎は流転してしまう。政治もまた流転してしまう。しかしその流転の只中で、変わらない「愛」を私は迎えたい。

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abokado0329

4.0【全世界に対し政治は制服されど、文化は征服されず固有文化である京劇を伝る様を描いた逸品。小豆子は女役、石頭は男役として「覇王別姫」で共演し、スターへと上りつめる魅力を伝えた作品。】

2024年4月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■1925年の北京。
 孤児や貧民の子が集まる京劇の養成所に入った少年・小豆子。
 いじめられる彼をかばったのは、兄のような存在である石頭だけだった。
 成長した2人は、小豆子は女役、石頭は男役として「覇王別姫」で共演。スターへと上りつめる。

◆感想・・になってません。

・学生時代に中国を3カ月放浪したが、京劇を見るのは大変苦労した。チケットが取れないのである。
 で、粘りに願ってチケット入手。日本でも歌舞伎座の席を確保するのは、裕福な叔母様方である。

・今作が面白いのは、京劇の養成所に入った少年・小豆子を始めとした見習いたちが厳しい修練を受ける様であろう。
ー 今で有れば労働基準法に引っ掛かるであろう。-

・そして、大人になったレスリー・チャン、グォ・ヨウが京劇で踊り舞うシーンは、きっと海外の著名監督達を惹き込むんだのは、間違いないであろう。

<今でも、面々と続く京劇、及び日本であれば歌舞伎と狂であろうか。
 今作は、貧しい出自ながらも、京劇に寄り人生を開いて行った少年たちの物語である。>

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NOBU
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