劇場公開日 2004年4月24日

CASSHERN : 映画評論・批評

2004年4月16日更新

2004年4月24日より丸の内ピカデリー2ほか全国松竹・東急系にてロードショー

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宇多田ヒカルの夫にしてカリスマ写真家、紀里谷和明の初監督作品である。各方面から寄せられていた期待に映画は見事に応え、観客を驚きの渦に巻きこむ。

まず驚かされるのが視覚効果である。ほとんど全カットに過剰なまでのCG修正が施され、画面はつねにキラキラと光り輝いている。すべて見た目重視で選ばれた俳優陣もCGで修正を受け、ほとんど俳優というよりも素材の趣がある(黒髪に青い目の麻生久美子まで見られる!)。俳優と背景は融けあって見事な一枚絵となる。演技などないし、そもそも俳優は動きもしない。ひたすらキラキラ輝く画面の中で朗々とセリフを読みあげるだけなのである。何よりも驚くべきは、この絢爛豪華なCG装飾が何ひとつ説話上の機能を果たしていないということだ。つまり画面は豪奢に輝いているが、その目の御馳走(あるいは映像の暴力)にはなんの意味もないのである。

このアクションなきSFアクションで語られるのは壮大なエディプス神話である。登場人物はみな父を倒して母と結婚したがっている。東博士が生み出した新造人間ブライ(唐沢寿明)は博士の妻である博愛の人ミドリを誘拐して世界の果てに逃げ、東鉄也ことキャシャーンは母を取り戻すためにブライと戦う。世界のためでもキャシャーンがやらなければならないからでもなく。それを見守るのはいつものように聖母キャラを演じる麻生久美子。少々幼稚とも思える女性観こそ、この映画の最大の驚きかもしれない。

柳下毅一郎

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