アイアンクローのレビュー・感想・評価
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フォン・エリック・ブラザーズ‼️
伝説的なプロレスラー、フリッツ・フォン・エリックと5人の子供たちの物語‼️ヘビー級王者の夢破れた父と、父から夢託された息子たちの悲劇的な物語‼️「呪われた一家」と呼ばれただけあって、長男は幼い頃に死亡、三男はバイクの事故で片足となり自殺、四男は日本でのツアー中に急死、末っ子も薬物依存で自殺‼️残された次男は兄弟たちへの劣等感と、父親からの過度な期待に苦悩する‼️とんでもなく不幸なドラマ‼️そんな呪われた物語を正攻法なドラマで描き切り、ズシリと見応えのある作品になっております‼️「オッペンハイマー」のように時間軸を交錯させることもないので安心して観られますが、それ故、あまりに正攻法すぎて面白みに欠けるかも‼️出演者では、これまでのキラキラしたイメージを封印したザック・エフロンが次男のケビン役を好演‼️増量して筋肉をつけた見事な肉体で、プロレスラーになりきってスゴいの一言‼️そして冒頭に父の若かりし頃がモノクロで語られるのですが、是非ジャイアント馬場とアントニオ猪木にも出て欲しかった‼️
映画と事実、両方に驚き
まず、映画は素晴らしかった。
キャスト、脚本、演出、音楽、全てがベスト。
特にザック・エフロンの肉体改造と、その演技には恐れ入った。
筋肉パッツパツではちきれそう!
映画始まってから数分、彼とは確信がもてなかった。
アカデミー賞ノミネートされてもおかしくない程、役にはまっていた。
父母役、他の兄弟、ケビンの奥さんの演技も素晴らしかった。
あの内容がほぼ事実だとするならば、父はもちろん毒親だが
母も信仰深いだけで息子たちを特に助けない。
二人とも話の通じないしょうもない親。
息子たちは仲が良いのに、同じプロレスラーという職業に就いて
家族内でもライバルになってしまったおかげで
家でも外でもプレッシャーに苦しんだ。
ドラッグやアルコール、ステロイドの影響もあっただろう。
悲劇はもはや必然だった。
映画の中で一番ほっとしたシーンが、ケビンを除いた兄弟達が天国で再会するシーンなのだから皮肉なものだ。
救いのないストーリーだが、最後のケビンと妻と子供達が幸せそうな姿で締めてくれたので
観客は最悪な気持ちで取り残されなくてすんだ。
監督ありがとう。
映画の内容に驚きの連続だったが
事実の方が映画より酷いことをこの後知り、また衝撃。
長男の不慮の死、
映画では存在がカットされた末っ子クリスのプロレス入りと自○(!)、
ケビンとケリーの子供のプロレス入り。
映画を越える事実があるのだ、と考えさせられた。
上級生によくやられたアイアンクローの思ひで
悲しい映画だった。
小学校低学年の時に上級生によくアイアンクローやられてホントに痛かった。
こめかみが窪んでいるのはアイアンクローを何回もやられたせいだとずっと思っていた。だから、フリッツフォンエリックは嫌いだった。なのにリリー·ジェームスが出ているので観てしまった😰
やっぱり、ベイビードライバーのリリー·ジェームスが私は一番。
カーセ◯クスのシーンは露出はないけど長かった。ケビンが奥手なのが証されるのは実に意外だったけど、繰り上げ長男は真面目過ぎて、そこは一応泣けた。その分、リリー·ジェームスは残念だった。他の女優さんでよかったよ。
アイアンクローなんてプロレス技じゃないよ❗タイガージェットシンのチョーク攻撃と一緒だよ💢
後年、ジャイアント馬場がやられて、コーナーに座り込んで、夥しく流血しているのにヘラヘラしているのをテレビで見たときはすごくガッカリしてしまった。
ブルーザーブロディは似てなかったな。あんなんだったっけ?
ザ・シークいた。
真っ白なブロンドヘアのリック·フレアーはかっこよくて当時大好きだった。
実際は末っ子がもうひとりいて、男ばっかしの6人兄弟だったらしい。
息子たちをプロレス界にどんどんつぎ込むプロレス団体のオーナーの父親フリッツ。
呪われた一族というより、ワンマン親父に追いつけ追い越せに耐えられなくなったり、兄を追い抜いて有頂天になってハメを外したりして起きた悲劇の連鎖なんだと思う。
これだけ次々に息子達を失いながら、父親のフリッツが後悔や懺悔の念を表すシーンはほとんどなかったような気がする。母親の影も薄かった。
音楽が好きで、全然身体を鍛えてなかったマイクまでレスラーにするのは強引過ぎる。実際は6男のクリスもプロレスラーになっている。ケビンの息子2人もプロレスラー。ケリーの娘もレスラーの道を選んだ。そういう意味ではフリッツの呪いは続いているのかも。
デビッドは200センチ越えだったようだ。しかし、フリッツの息子達をテレビで見た記憶はない。
アンドレザジャイアントのせいか?
デビッド役のハリス・ディキンソンは一番背が高く、華があった。しかし、リングでの格闘シーンはほとんどなかった。逆転のトライアングル、ザリガニの鳴くところ、キングスマンと彼が出ている映画を続けてみている。散々ケチつけたけど、次のスクラッパー観る気まんまん😅
50代以上のプロレスファンには、たまらないです。
僕は、51歳 子供の頃 好きだったプロレスラーのエッリック兄弟 エリック一家のプロレスの栄光と不幸な話は、知ってます この映画で改めて感じ 困難を克服するのを学びました。
実話ならでは
子供の頃の大スターだったエリック兄弟がこんな末路を遂げていたとは。実話ならではの重さを感じ、見入ってしまいました。音楽も当時の雰囲気がでています。プロレススーパースター烈伝を思い出します。改めて当時のプロレスラーのその後を検索したくなりました。
昭和からのプロレスファンとしては、この悲劇をリアルタイムで知ってい...
昭和からのプロレスファンとしては、この悲劇をリアルタイムで知っているので辛さ増し増しでした。
肉体美とリックフレアーの完成度に感涙!
なぜ5人の兄弟のうち4人が亡くなったのか
タイトルのアイアンクローは巨大な手で相手の頭を鷲掴みにしてギブアップを狙うプロレスの必殺技の名前だ。
この技を生み出したのが日本でも活躍したレスラー、フリッツ・フォン・エリック。
レスラーの名前は覚えていないが、子供の頃のプロレスごっこで相手の頭を掴みアイアンクロー、と言っていたのは覚えているので当時流行ったのだろう。
この映画はそのフリッツ・フォン・エリック一家の実話を映画化したものだ。
一家の話は全く知らなかったが、5人の息子たちがいて、4人がプロレスラー。
しかも4人が病気や自殺で亡くなっているというのだから驚きだ。
唯一の存命した次男のケビン(ザック・エフロン)を主役に一家の壮絶な運命を描いているのがこの映画だ。
A24製作で実話の伝記というのは珍しいが、ストレートな家族愛の物語でも、プロレスのスポコン物でもないジャンルの枠を超えているところがA24らしい。
ただ、プロレスシーンのほぼスタントマンなしでザック・エフロンがむきむきに鍛え上げた肉体でぶつかり合う迫力の映像はエンタメとしてそれだけで見る価値があるし、
ケビンが次々家族を失うことの苦しみとそれでも新しい自分の家族を育んでいこうとする慈愛の心は見るものの心を打つ。
題材がマニアックなプロレスではなくボクシングや野球などだったらもっと大ヒットしたのではないだろうか。それくらい完成度は高い。
まあ、この題材がA24の真骨頂でもあるのだが・・
主題が家族愛であることは紛れもないことだが、視点を変えて興味深いのは、なぜ、5人の兄弟で4人が亡くなってしまったのかだ。
この一家のことは「呪われた一家」などというフレーズで言われることがあるというが、どちらかというとそのほうがA24らしい「悪霊」の呪いではもちろん無い。
この映画を見て思った一つの原因は父親の変質的なほどのプロレスへの執着だ。
時代背景もあるだろうがある意味子供たちを支配している。
父親への返事は字幕では「はい」だがセリフではYES SIRと言っている。
今の時代父親の夢を子供へ託すのはありえないが、プロレスの道へ進むのは一家の掟のように見える。
子供達がプロレスの道に進まなければ死ぬことはなかったのではないか。
たらればの話だから意味はないのだが。
終盤のケビンと家族の描き方が救い。
生き残ったケビンの一家は呪われることもなく、大家族だそうだ。
兄弟愛に涙したけど。
まずザックエフロンの肉体改造がすごすぎました。
同世代で、ハイスクールミュージカル好きだったわたしからしたらビックリしました。
前半の仲良し兄弟が素敵だなぁって見ていたから、後半からの悲劇にショックでした。
息子をもつ母としては、こんな親にだけはなりたくない。むかしの家長制度みたいな感じなんでしょうけど、きついです。
奥さんよく耐えたよな。わたしは無理だ。
ケビン夫婦だけが救い。
プロレス一家の稀有な悲劇の連鎖
自分たちの世代では最も馴染みが深いアメリカのプロレスラーの一人、鉄の爪=フリッツ・フォン・エリック。馬場さんとか猪木さんと闘ってましたね。
今作はフリッツ夫婦と5人の息子たちの物語。
いわゆるプロレス一家なのだけど息子たちに不運が続いた。プロレスを見なくなった80年代の話なので、こんな悲惨な出来事があったことを知らなかった。
極めてレアな環境だけど秀逸な家族の物語、兄弟の物語だった。
俺は兄弟たちのところへ行く
こないだ鑑賞してきました🎬
プロレス一家の兄弟たちが、ホルト・マッキャラニー演じる強権的な父親フリッツのもとで世界一を目指すのが大枠のストーリーですね🙂
次男ケビンにはザック・エフロン、三男デビッドにはハリス・ディキンソン、四男ケリーにはジェレミー・アレン・ホワイト、その弟のマイクにはスタンリー・シモンズ。
中盤、日本のホテルでデビッドが亡くなってから、次々と兄弟たちに悲劇が。
ケリーはバイク事故で片足が義足になり、マイクは試合中に肩を脱ぱくし昏睡状態に。
マイクは後に回復しますが、皆が自分にデビッドのようになることを期待されているのをプレッシャーに感じ、母親のドリスに「無理だよ。僕はデビッドじゃない」と言ったあと、命を絶ちます。
更に終盤では、ケリーは復帰したものの義足のレスラーはいずれお払い箱になると思いつめて、フリッツにプレゼントした拳銃で自殺。
ケビンの兄弟たちは皆亡くなってしまいました。
フリッツは終始一貫した態度で息子たちに接し、息子の人生よりも自身が果たせなかった世界王者のベルトを取ることにより価値をおくかのように見えます。
ケリーは自殺前にケビンに電話をかけるんですが、自分の居場所を言う前に電話を切るんですよ。
ケビンは彼の様子がおかしいのを理解し、フリッツに電話をかけるんですがフリッツは「兄弟たちで解決しろ」と一言。
ケビンが急いで実家に行った時は、ケリーはもう…。
救いは向こうの世界でジャックJr含めた兄弟たちに再会できたことでしょうか。
なによりザック・エフロンの肉体美が凄いですね💪
プロレスラー役として、説得力があります。
このままだとちと暗いので、やはり外せないのはバムを演じたリリー・ジェームズでしょう🙂
今作では見た目は少し派手ですが、気持ちの優しい女性を演じてます。
もともと綺麗な女優さんですが、美しさは健在でしたね。
特にウェディングドレス姿は必見です👰
私が初めて彼女を見たのは、「ベイビー・ドライバー」でした🚗
どっからこんな綺麗な人を見つけてくるんだと思いましたね😁
何気に私と歳がほぼ同じなので、親しみがあります👍
プロレスを題材にした、ドラマ性の強い作品だといえますね。
ザック・エフロンやリリー・ジェームズのファンの方はもちろん、ドラマ好きな方にもおすすめです🖐️
知らなかった悲劇
80年前後のプロレスブームに熱狂した覚えがあります。
当時既に鉄の爪アイアンクローはレジェンドレスラーで、現役の試合を観た覚えは無いです。
ブロディ、レイス、フレアーなど懐かしく思い出しましたが、エリック一家がこんな悲劇に見舞われていたとは。。
彼の世での再会が悲しくも印象的でした。
スキャンダラスさやホラーテイストに描く案を乗り越えて、家族愛と最後に呪いから解放される結末に好感が持てました。
●はじめに
アイアンクロー(鉄の爪)を得意技とし、1960~70年代に活躍したアメリカの伝説的なプロレスラー、フリッツ・フォン・エリックを父に持ち、その教えに従ってプロレスの道を選び、世界ヘビー級王者になることを宿命づけられた兄弟の実話を、次男ケビンの視点から描いた作品です。
思い返すと昭和の時代、プロレスはいかにも米国的なショーでした。強い個性を持ったマッチョな男たちが、力と技を競いあったのです。
この映画の主人公は、前途したようにプロレス一家、フォン・エリック家の男たち。闘う男たちの栄光と挫折の軌跡に、アメリカンドリームの呪縛と末路が浮かび上がります。 それと同時に、悲劇の連続の中で絆を深める一家の家族愛も描かれます。
●ストーリー
1980年初頭。「鉄の爪(アイアンクロー)」を必殺技に活躍した元AWA世界ヘビー級王者の父フリッツ(ホルト・マッキャラニー)は、引退後に自分でプロレス団体を作ります。息子たちをレスラーにして、「世界制覇」を目指していました。
早くに長男を亡くした彼は、次男のケビン(ザック・エプロン)、続いて三男デビッド(ハリス・ディキンソン)が人気を博し、米国のボイコットで五輪出場を逃した四男ケリー (ジェレミー・アレン・ホワイト)も加わって、3兄弟として売り出し、最強のプロレス一家を作り上げようとしていたのです。
父の教えはファミリーにとって絶対でした。チャンピオンになれ!そのために筋肉を鍛え、痛みを鎮痛剤で抑え、筋肉を維持するためにステロイド剤を打ち、高揚させるためにコカインを吸ったのです。
その中で、華のある弟らに人気が集中し、父の期待が自分から弟たちに移っていることにケビンは気きます。嫉妬を抑えながら健気に弟たちを支えるケビンの心の拠り所は恋人のパム(リリー・ジェームズ)だけでした。パムの妊娠を期に、二人は家族に祝福されながら結婚。そんな中、一家の念願であったNWA世界ヘビー級タイトルマッチを控えたデビッドが急死してしまいます。さらにケリーが不慮の事故に見舞われ、片足を切断。リングデビューした五男マイク(スタンリー・シモンズ)も試合中の負傷から後遺症を患ってしまうのです。
相次ぐ悲劇の連続で、世間はエリック一家を“呪われた一族”と暗に噂するようになります。兄弟のなかで唯一生き残ったケビンは、ある決断をし、父と決別。呪いから逃れた先にどんな景色が開けるのでしょうか。暗い闇の向こう側には、美しい陽光が確かに映っていたのです。
●解説
一家はアメリカの理想を体現していました。父親を中心に固く結束、息子たちは指示通りに体を鍛え、レスラーとなりチャンピオンを目指す。良妻賢母の母親、あつい信仰心。成功をつかむために努力と献身を惜しみません。
物語はケビンの目から描かれます。長男を早くに亡くし、兄弟の最年長として率先して父親の期待に応えようとするのに、弟たちに後れをとってしまうのです。不満をのみ込み黙々と努力しても、父から認められなかったのです。
ところが四男のデビッドがこれからという時に日本で客死、三男のケリーは念願のチャンピオンになった直後に事故で片足を失います。代わりに音楽家を目指していた五男マイクがリングに上がるものの、試合中のけがに苦しみ、非業な最期を遂げます。後に「フォン・エリックの呪い」と言われた不幸のつるべ打ちとなっていったのでした。
米国が求める美徳を満たし、栄光を夢見た一家がなぜ不幸になるのか。父権の幻想にすがりアメリカンドリームを追う一家は痛々しく、もの悲しさすら漂いました。そこから解放された終幕には、ようやく肩の力が抜けることでしょう。
別人と見まごうほど肉体を鍛えたエプロンに驚かされることでしょう。俳優陣がほぼスタントなしで、リング上で激しくぶつかりあいます。そんな試合場面の迫力もすさまじいのです。リング上の熱演とフィルム撮影で再現した80年代の映像を見るだけでも価値があります。
しかしカメラは、リングの裏で起きつつある恐ろしい何かを捉えようとするのです。背景にあるのは、父の夢。誰よりも強くなり、大きな成功を遂げたい。父の夢は呪いとなり、息子たちを薬漬けに追い込み、内面から破壊してしまいます。
当初はスキャンダラスさやホラーテイストに描く案もあったそうですが、フォン・エリックー家に起きた出来事を悲しみに満ちた叙事詩として描くことで、有害な男らしさを批判し、家父長制によるパワハラの醜悪さを暴く展開となりました。昨今のトレンドともいえるテーマを扱いつつ、一方で、ダーキン監督は否応なく共同体に属さざるを得なかった者たちの生を丁寧に掬い上げています。兄弟が互いにかける親密な愛情に光をあてて彼らが見つめた一瞬の煌めきを捉えたのでした。
●感想
子供の頃、よくテレビの中継を見ました。スタン・ハンセン、トリー・ファンク・ジュニアとデリー・ファンクの兄弟、ディック・マードック。そして、この映画のエリックー家。テキサス州出身で、日本でも活躍したのです。テキサスといえば腕っぷしの強い荒くれ者、男らしさの象徴でした。それは力を誇示するアメリカのイメージそのものといえます。神経質な小心者がしゃべりまくるウディ・アレンが印象的なニューヨークと対局的です。
そして、昭和のプロレスファンなら誰もがやんちゃな少年時代にまねしたアイアンクロー。本作を見ると、懐かしの必殺技が若き兄弟たちの心をむしばむ“呪縛”の象徴に思えてきました。
そんな展開に、興奮、感動し、怒りや恐怖も覚え、悲しくなりました。プロレスに明るくない人でも、感情を揺さぶられること間違いなしの、“呪われた一族”のドラマなんですね。
心理スリラー「マーサ、あるいはマージー・メイ」で知られるダーキン監督も子供の頃はプロレス狂たったそうで、前途したようにハーリー・レイスやリッタ・フレアーらが登場する1980年代プロレスの再現度の高さがすごいのです。
35ミリフィルムの陰影豊かな映像、家父長制の問題などを現代的視点で捉えたドラマも含め、まさにヘビー級の見応えです。
古い価値観の打破、苦しみへの寄り添い方。一昔前のスポーツ一家の話が、これほど現代に通ずるメッセージをはらむとは!脚本も手がけたショーン・ダーキン監督の手腕にうならされました。
呪われてると言うよりも
パストライブスを観た翌日は2日連続のA24作品で、まさかファイティング・ファミリー的な家族愛や兄弟の絆の話?かと思いきや、アイアンクローで頭押さえつけられてんのは誰かって話で…。
前半はスポ根オヤジに忠実な四兄弟のわちゃわちゃなかよし加減が楽しい分、哀しい未来が待っているのがツラい。バイクと銃とか伏線がわかりやすすぎだが、Inspired by the true storyで脚色多めにしても事実ならしょうがない。プロレスの格闘シーンはリアリティがあって楽しめたけど、パムがプロレスの微妙なところを突いてくる発言には笑った。
実質長兄ケビンのムキムキボディと顔かたちが、ザック・エフロンなんかヤバいものやってんのか?レベルの変貌ぶりですごいのだが、マッチョな肉体とは裏腹に心やさしくオクテな性格が微笑ましく、パム役リリー・ジェームズに誘ってもらってカーSEXで童貞喪失とは、担任高校教師に女を教わる俺の空・安田一平級のうらやましさだった(各論)。
凄いマッスル
事実の一部を描くのだが、どこまでをリアルに、どこに映画的な演出を付けるのか? のバランスが素晴しくてラストシーンが良い。
父親フリッツ・フォン・エリックは「プロレスラーになれ」とは言わなかったらしい。だがそれ以外の選択肢が無い位にレスリング技術を仕込んで育てて来た。母親のドリスは信仰心で子供たちを教育。
その実在した6人の息子たち。
①長男 ジャックJr:6歳で、切れた電線に触り感電して水溜りで溺死
②次男 ケビン:呪いから脱したのか御存命で子沢山
③三男デビッド:活躍したが25歳で日本のホテルで死亡、急性肝炎と報じられた
④四男 ケリー:バイクで事故後も足の完治前に試合出場して悪化した為に切断、義足を隠して対戦していた、コカインに溺れて拳銃自殺
⑤五男 マイク:高校生で肩を痛めてレスラーを断念、しかしデビッドの後釜試合事故の手術後にバクテリア増殖で後遺症が残り、その後睡眠薬過剰摂取で死亡
⑥六男 クリス:末っ子もプロレスラーに憧れてデビューしたが喘息がち、試合で
両腕骨折、骨粗鬆症に悩みその後自殺
ショーン・ダーキン監督は「これ以上の悲劇に観客は耐えれないだろう」と六男クリスは描かなかったと言う。
ラストのケビンの涙シーンが良かったが、その後リアル写真での赤ちゃんの「高い高い」が尋常じゃない高さなので引いてしまった。
プロレス一家の確執
この名の必殺技をもつ選手のことは、漫画『タイガーマスク』で得られた程度の知識しかなかった。引退後の息子たちとの確執がみごとに描かれている。母親は、夫の音楽の才能を認めながら、音楽好きの五男のマイクの夜のライブ活動を認めない専横さをもっていた。
次男のケビンが恋人に出会い、幸せを掴み、結婚披露宴でタップダンスを踊る場面は圧巻だった。
しかし、父親からはだんだん構われなくなり、興業会社の処分にも恩着せがましく指示を受ける。「次男症候群」と自嘲するほどの世話焼きが高じて、ようやく掴んだ世界タイトル戦も意味を失い、反抗心を剥き出しにして訣別でき、亡くなった兄弟たちの彼岸での邂逅を思い浮かべながら、自分の息子たちから慰めを受け、安堵の幸せを噛み締めていた。
四男のケリーがモスクワオリンピックボイコットで出場の道を断たれたためにプロレスに転身し、世界チャンピオンになった後、事故で片足切断となり、映像処理なのか、切れた状態で映り、彼岸の世界では両足を踏み締めていたので、実際に切断されていたのではないのだろう。
呪いからの脱出
プロレスは嫌いじゃないにせよ、フォン・エリック一家のことはほとんど知らなかった。『フォックスキャッチャー』のような秘話が観れるのかと思ったが充実した映画だったのは間違いない。
タイトルは栄光の代名詞ではなく呪いの意味だったんですね。どっぷり感情を引っ張ることはなく、みんなが少しつづ不吉や影を持ちながら崩壊していく小さな帝国。実話です、と言われなければ意味も意図もわからない不幸が突然やってくる。なので作劇的な緊密度というか面白さはあんまりない。ましてや何かしましたか〜という呪われる意味すらない。意味がないから名前を変えてみることしか対抗策がないし、この不幸からの解放はプロレス=父と母から離れることでしかない。最後にでてくるケリーの子だくさん一族の写真に救われる。
呪われた家族は誰の呪いだったのか。
アイアンクローという得意技でトップレスラーへ上り詰めたフリッツ・フォン・エリック。「最強のレスラーになって成功する。誰にも頼らず、自分の力で頂点に立つ」と家族を説き伏せ成功をおさめます。ここからフリッツは家族の中での絶対的な存在となります。プロレスラーの話ではありますが、この絶対的な父親ということによる洗脳されていく家族というドラマでもあります。父親は自分がなれなかったNWA世界チャンピオンを息子がなることだけが望みです。息子達の苦悩や試練の時には「お前たちの問題」として一切取り合うことはありません。母親も同じようにかかわろうとはしません。このことが息子達を苦しめ戸惑っていきます。洗脳されている息子達は父親に逆らうことなく、ただプロレスラーとして最強を目指していきます。一つの目標に向けて一心不乱に突き進むという生き方は諸刃の剣であり、挫折や閉ざされた時の気持ちの切換えや立ち直るすべを持っていないということもあります。気持ちの持ち直せなかった四男ケリー、五男マイケルは打ちのめされ自殺してしまいます。呪われた家族の原因は父親がかけた呪いではないかと思います。苦悩しつづけた次男ケビンはその父親の教えから逆らう事で晩年は家族に恵まれて幸せな老後を過ごすことになります。どこの家族でも我が家のマイルールというのがあります。それが逸脱した時にこの家族のような不幸が訪れる事を教えてくれているように思いました。
この作品の凄さは、実在の人物を演じるわけですから、役者は徹底的な肉体改造をして完璧に再現しているところです。主人公以外にも実在のレスラー、ブルーザーブロディ、リックフレアー、ハリーレイス等を完全再現しています。試合シーンもレスラーに監修を受けて迫力あるシーンとなっているところです。プロレスファンとしても納得いく出来栄えと思いました。
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