コラム：21世紀的亜細亜電影事情 - 第3回

2013年11月15日更新

第3回：中国で大ブレイク中！蒼井そらに次ぐ人気を誇る日本の若手俳優とは？

13億人の巨大市場・中国。現地で日本人の監督、俳優はどの程度知られているのか。逆に日本人は中国でどう情報発信しているのだろう？

中国では政府によるインターネットの閲覧制限が厳しく、交流サイトのフェイスブックも、短文投稿サイトのツイッターも原則利用できない。代わりになるのが中国独自の「つぶやき」サイト「微博（ウェイボー）」だ。微博の利用者は昨年後半に3億人を突破。スマートフォン（高機能携帯電話、スマホ）の急速な普及で、年末には5億人を超えたともいわれている。

中国で仕事をする機会が多い香港、台湾などの監督や俳優には、微博のアカウントを持つ人が多い。日本人で特に注目を集めるのが、AV女優・蒼井そらだろう。蒼井の微博フォロワーは1460万人以上。中国のファンは蒼井を「空老師（そら先生）」と呼び、訪中イベントに登場するとなれば殺到する。あまりの人気に「李香蘭、山口百恵、酒井法子と並び、中国に影響を与えた4大日本人女優の1人」と伝えるメディアさえあった。蒼井もこまめに中国語でつぶやき、ファンにアピール。中国での人気は定着した感がある。

そんな中国で今年、突如話題をさらった日本人がいる。若手俳優の古川雄輝だ。春に日本でCS放送された主演ドラマ「イタズラなKiss～Love in TOKYO」が、ネット経由などで中国でも注目。主演の古川の人気は沸騰し、微博のフォロワーも開設から数カ月で90万人に迫る勢い。古川がつぶやくごとに、1万を超すコメントが付いている。

7月には日本人俳優として初のファンミーティングを上海で開催。空港に1000人を超す女性たちが出迎え、宿泊先のホテルには数百人が待ち構える騒ぎになった。中国で古川は「男神」と呼ばれ、ネット上には中国語で「私をお嫁にもらって」など熱い言葉が飛び交っている。

では古川の何が中国人の心をとらえたのだろう？　1987年、東京生まれの25歳。7歳でカナダに移住し、16歳で単身ニューヨークへ。海外生活は通算11年。帰国後、慶応義塾大学（理工学部システムデザイン工学科）に進学し、“ミスター慶応”コンテストでグランプリ。特技はバスケットボールとブレイクダンス。日本では出演映画「潔く柔くきよくやわく」が公開中、12月に「永遠の0」が控えている。

中国のポータルサイト・鳳凰網は今月初め、「古川雄輝　新世代“男神”の成長記」と題する記事を掲載し、経歴やロングインタビューを交えて魅力を探った。「イタズラなKiss～Love in TOKYO」が中国で受けた理由について「日本のテレビドラマ黄金期、1980年代のヒット作を彷彿とさせたため」と分析。古川人気の秘密を「日本の伝統的な男性スターと異なり、温和で国際的なイメージがある。どこにも属さない無国籍感が魅力だ」とした。

同じくポータルサイトの新浪娯楽は「古川雄輝の“萌えポイント”」を紹介。文武両道の帰国子女、慶応ボーイであることなどを列挙し「“才色兼備”の一言を思い起こさずにはいられない」と絶賛した。さらに古川が「家では自炊している」と話したことまで評価し、「全身すべてが萌えポイント。穏やかな話し方、180センチの身長、繊細な手、時おり見せるぼんやりした表情など、すべてが魅力になっている」と結論付けている。

日中関係は冷え切っているが、熱狂的なファンは国境を越える。海の向こうの古川人気も、ネット時代を象徴するのかもしれない。